「DRG/PPSについて」−包括医療費制度と検査−

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(4)EBM
最近EBM=Evidence Based Medicine(科学的根拠に基づく医療)という手法が注目されています。エビデンス(科学的根拠)に基づいた治療・医療はこれまでにも実施されていますが、情報量の増大化、情報入手源のグローバル化、そして入手情報の適切な評価の必要性を背景に、EBMを手法として確立する必要性が生まれ、同手法は欧米を中心に90年代後半に急速に広がってきています。EBMは質の高い臨床研究の結果に基づいて診断・治療などを行っていこうという医学上の疑問解決の一手法で、情報収集が系統的に行われ、求めた情報を批判的に吟味する点などが特徴です。
臨床医にとっての一般的なEBMのプロセスは、


1.患者の疑問の定式化
2.能率的で質の高い情報収集
3.情報の批判的吟味
4.情報の患者への適用


となっています。(1)では、1.ペイシエント(どんな患者に)2.エクスポージャー(何をすると)3.アウトカム(どうなるか=症状の軽減、死亡の減少など)を整理します。(2)では、コクラン・ライブラリー、ベスト・エビデンス(雑誌ACPジヤーナル・クラブ及び雑誌エビデンス・べ一スド・メディスンを収録)、MEDLINEといったデータベースなどから情報を系統的に収集します。(3)では、無作為化(ランダム化)比較試験の文献を基本とし、さらにランダム化、ブラインド化、患者のフォローアップの状況、明確なエンドボイント設定などをポイントに批判的吟昧のふるいにかけ、同時に論文結果に正しく統計学を適用し論文結果を検討します。そして(4)で論文の患者と自身の患者の違いを考慮した上で結果を患者に適用します。(2)の情報源では、目本でのコクラン共同計画のネットワークJANCOCの中心的役割を担う津谷喜一郎氏(東京医科歯科大学)は、同計画のアウトカムであるコクラン・ライブラリーがEBMの極めて重要な情報源としており、同ライブラリーを基本として情報収集する手法を提唱しています。EBMに対する関心の高まり、医療現場での活用が広がる中で、薬物治療の評価にも大きな影響を与えることが予想されています。医薬品産業の立場からは、市販後の大規模臨床試験の実施をはじめとして、PMSのあり方の見直しとともに、これらデータを生かしたEBM実践に対応したプロモーション戦略構築ということからも関心が向けられています。

    表4 EBMによる治療GL作成 47疾患のリストアップ
                    (優先順位) 厚生省・医療技評価委
1.本態性高血圧症 25.肝硬変
2.糖尿病 26.躁鬱病
3.喘息 27.変形性関節症および類似症
4.急性心筋梗塞およびその他の虚血性心疾患など 28.慢性副鼻腔炎
5.白内障 29.屈折および調節の障害
6.慢性関節リウマチ(脊椎除く) 30.気管、気管支および肺の悪性新生物
7.脳梗塞 31.四肢の骨折
8.腰痛症 32.B型肝炎ウイルス肝炎
9.胃潰瘍 33.結膜炎
10.くも膜下出血為よびその他の脳出血 34.急性鼻咽頭炎
11.アレルギー性鼻炎 35.老年期および初老期の器質性精神病
12.アルコール依存症 36.胃炎および十二指腸炎
13.肺結核 37.接触皮膚炎およびその他の湿疹
14.アトピー性皮膚炎 38.てんかん
15.胃の悪性新生物 39.椎間板損傷
16.急性上気道感染(急性咽頭炎、急性扁桃炎等除く) 40.角膜炎
17.慢性閉塞性肺疾患 41.脊椎症および類似の障害
18.急性咽頭炎および急性扁桃炎 42.慢性および詳細不明の腎不全
19.中耳炎 43.感染症と推定される下痢および胃腸炎
20.神経炎 44.麦粒腫およびさん粒腫
21.慢性肝炎 45.精神分裂症
22.急性気管支炎為よび細気管支炎 46.四肢以外の骨折
23.膀胱炎 47.軟部組織障
24.胆石症

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