平成21年5月度(第5回)

解答編


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(PDF版は解答のみです。問題編と併せてお使いください)

出題: 藤本一満 会員

生化学通信講座問題(NARA塾)第5回 解答・解説編です。
第5回の設問のみ編は、こちらです




問題1. ハロゲンランプについて正しいのはどれか。2つ選べ
1. フィラメントはハロゲン
2. 白熱電球に比べ明るい
3. 白熱電球に比べ短寿命
4. 白熱電球に比べてフィラメントの温度は低温
5. 石英ガラス内に不活性ガスを封入
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【問題1】2と5:石英ガラス管内に窒素やアルゴンなどの不活性ガスとともに微量のハロゲン化物(ヨウ素・臭素・塩素・フッ素)を封入した電球。値段は白熱電球よりやや高め。フィラメントの温度が白熱電球2500℃ - 2650℃程度であるが、ハロゲンランプは2700℃以上と高いため明るい。ハロゲンサイクルという化学反応により、タングステンの蒸発によるフィラメントの折損が抑制されるため約10倍長寿命。

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問題2. 試料10μL、第一試薬320μL、第2試薬80μLを全て混合したとき、試料は何倍希釈されていますか。
1.
10倍
2.
32倍
3.
33倍
4.
40倍
5.
41倍
【問題2】5:試料10μLは、試料+試薬の総量410μLで希釈されるので、10μL/410μLとなり41倍希釈。
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問題3. グルコース90mg/dLは何mmol/Lですか。グルコースの分子量は180とする。
1.
0.2
2.
0.5
3.
2.0
4.
5.0
5.
20.0
.

【問題3】4:GLU 90mg/dL=900mg/L=0.9g/L。 0.9g/L / 180=0.005mol/L=5mmol/L。

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問題4. 尿酸にウリカーゼを作用させたとき、生成されないのはどれか。2つ選べ
1.
アンモニア
2.
二酸化炭素
3.
アラントイン
4.
過酸化水素
5.
尿素
.

【問題4】1と5:尿酸 + 2H20 + 02 →(ウリカーゼ)→ アラントイン + CO2 + H202

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問題5.

急性相反応蛋白で増加するのはどれか。2つ選べ

1.
アルブミン
2.
α1-アンチトリプシン 
3.
ハプトグロビン
4.
トランスフェリン
5.
トランスサイレチン
.

【問題5】2と3:炎症に関与する細胞から放出されたサイトカインにより肝臓での蛋白合成が促進または抑制される。増加する成分には、1分画のα1アンチトリプシン、α1アシドグリコプロテイン、α2分画のハプトグロビン、α2マクログロブリン、セルロプラスミン、β−γ分画の補体C3およびC4、フィブリノーゲン、CRP。減少する成分には、トランスサイレチン、アルブミン、トランスフェリンである。

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問題6. 真空採血した全血を25℃、6時間保存後、遠心分離し血清中物質を測定したとき濃度あるいは活性の経時変化として低下率の大きい項目はどれか。2つ選べ
1.
LD
2.
無機リン
3.
マグネシウム
4.
カリウム
5.
.

【問題6】2と4:全血を20℃以上で放置すると、血球内の解糖系が動きATPが産生される。細胞膜に存在するNa/K-ATPase は、ATP1 分子の加水分解のエネルギーを使用し電気化学的勾配に逆らって細胞内にKイオンを2つ、細胞外にNaイオンを3つ運搬することにより、血清中Kイオンは低下する。
無機リンの低下はKイオンより著明であるが、おそらく赤血球・白血球内解糖系でのATP合成および白血球電子伝達系でのATP合成時に血清中無機リンが細胞内に取り込まれたものと思われる。

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問題7.

真空採血した全血を6℃、6時間保存後、遠心分離し血清中物質を測定したとき濃度あるいは活性の経時変化として増加率の最も大きい項目はどれか。

1.
LD
2.
無機リン
3.
マグネシウム
4.
カリウム
5.

【問題7】4:全血を6℃で放置すると、血球内の解糖系が止まってATPは産生されなくなる。したがって、細胞膜に存在するNa/K-ATPase活性がなくなり、Kイオンの能動輸送が止まり、拡散が起ることによって血球内カリウムは細胞外に出て行く。その結果、血清中カリウムは6℃、6時間で約16%高値となる。その他の物質に大きな変化は見られない。 LDは溶血があると正誤差が見られる。

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問題8. リアシルグリセライドにリポプロテインリパーゼを作用させたとき生成される物質はどれか。2つ選べ。
1. グリセロール-3-リン酸
2. 過酸化水素
3. ジグリセライド
4. 脂肪酸
5. グリセロール

【問題8】4と5:トリグリセライド + 3H2O →(リポプロテインリパーゼ)→ 3脂肪酸 + グリセロール中性脂肪においては、生成したグリセロールを次反応に用いる。

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問題9. 日本常用酵素標準物質の原料として用いている酵素の由来遺伝子が誤っているのはどれか。
1. AST:肝型遺伝子 
2. CK:骨格筋型遺伝子
3. ALP:胎盤遺伝子
4. GT:肝型遺伝子
5. AMY:膵型遺伝子 
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【問題9】3:日本常用酵素標準物質(JC・ERM)は、日本臨床化学会学術連絡委員会による常用酵素標準物質の規格(1996-02-15)に従って調製されたものである。AST :ヒト組換え体(肝型遺伝子)、ALT:ヒト組換え体(肝型遺伝子)、ALP:ヒト組換え体(肝型遺伝子)、LD :ヒト赤血球、CK :ヒト組換え体(骨格筋型遺伝子)、 γ-GT :ヒト組換え体(肝型遺伝子)、AMY :ヒト組換え体(膵型遺伝子)およびヒト唾液。また、基材にはウシ血清アルブミン(BSA)を使用。

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問題10. 試料0.10mL、総反応液量3.15mLでNADHを生成する反応において、ある酵素活性を光路長1cm、波長340nm下で測定したところ、吸光度変化量は0.05/分であった。活性(U/L)はいくらか。NADHのモル吸光計数は6300とする。
1. 0.25
2. 25
3. 100
4. 250
5. 400
.

【問題10】4:(0.05/分×3.15mL×1000000)/(0.1mL×6300)=250 U/L従来、酵素活性単位はIU/Lが用いられてきたが、最近はU/Lになりつつある。

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問題11. 心筋細胞の虚血性障害を反映しない検査項目はどれか。 2つ選べ
1. AMY
2. H-FABP
3. ミオグロビン
4. トロポニンT
5. FT3
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【問題11】1と5:心臓由来脂肪酸結合蛋白(Heart type fatty acid-binding protein:H-FABP)は、心筋細胞の細胞質に存在する分子量約15kDaの低分子可溶性蛋白である。生理的には、心臓において遊離脂肪酸の細胞内輸送をつかさどり、心筋細胞へのエネルギー供給に重要な働きを担っている。ミオグロビンは、健常人の血中にも存在するが、筋細胞の崩壊時には細胞外へ逸脱して血中に流入し、さらに尿中へ排泄される。トロポニンTは、平滑筋には存在せず、構造が心筋と骨格筋とで異なるため、両者を明確に識別することが可能となり現在最も特異的な心筋障害のマーカーと考えられている。

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問題12. 血清クレアチニンが1.50mg/dL、年齢40才、男性という条件の場合、推定GFRはいくらになるか。(日本腎臓学会から提示された最新の日本人用eGFR推算式を用いること)単位:ml/min./1.73m
1. 43.2 
2. 53.2
3. 63.2 
4. 73.2 
5. 83.2
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【問題12】1:eGFR(男) = 194 × Scr−1.094 × age−0.287    eGFR(女) = eGFR(男) × 0.739 であり、年齢に比べ、血清CRE値によってGFR値は変化しやすい。したがって、血清CREを正確さが要求される。年齢は18歳以上で適応。

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問題13.

通常、代謝性アルカローシスを引き起こす可能性のある疾患はどれか。

1. 腎不全
2. 原発性アルドステロン症
3. 睡眠時無呼吸症候群
4. 肺気腫
5. 過換気症候群
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【問題13】2:腎不全は代謝性アシドーシス、睡眠時無呼吸症候群および肺気腫は呼吸性アシドーシス。原発性アルドステロン症は代謝性アルカローシス(尿中にK放出と同時にHも放出される)、過換気症候群は呼吸性アルカローシス。

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問題14. 真性コリンエステラーゼを有している臓器はどれか。2つ選べ
1. 肝臓
2. 皮膚
3. 赤血球
4. 神経組織
5. 心臓

【問題 14】3と4:真性ChE→神経組織、赤血球、筋肉、胸腺。偽性ChE→肝臓、皮膚、心臓、膵臓、脳灰白質など血清中に存在するChEのほとんどは肝臓で生成されたものである。

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問題15. ASTにおいて包含計数を2としたとき拡張不確かさは2.2 U/Lであった。標準不確かさはいくらか。単位はU/Lとする。
1. 1.1 
2. 2.2
3. 3.3 
4. 4.4  
5. 5.5

【問題15】1:標準不確かさは測定値のばらつきの推定値で、そのばらつきの分布の標準偏差を意味します。より高い信頼の水準でばらつきを表すために、合成標準不確かさに包含係数 k を掛けた拡張不確かさで測定の不確かさを求めます。包含係数k=2の値は多くの場合、95%信頼水準に相当します。

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問題16.

化学分析における測定体系において( )に入る方法は何か。

SI単位 → 基準分析法 → 一次標準物質 → ( )→ 二次標準物質 → 日常検査法 → 日常検査法測定値

1. 重量法
2. 標準化対応法
3. 実用基準法
4. HPLC法
5. 用手法

【問題16】3:化学分析において、基準となるモルというSI単位があって、基準分析法(絶対分析法である重量法、滴定法、クーロメトリー、同位体希釈質量分析法の4種)で一次標準物質の濃度と不確かさを決定、この一次標準物質を標準物質として実用基準法にて次の標準物質である二次標準物質の値付けを行う。この二次標準物質を日常検査法の標準物質とする。トレーサビリティとは「元を辿ることができること」「追跡可能であること」。トランスファーラビリティ とは「精確性の伝達性」

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問題17. 日本における酵素活性測定の測定体系において日常検査法は何か。 
1. JSCC常用基準法
2. JSCC自動化法
3. JSCC標準化対応法
4. 用手法
5. クーロメトリー法
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【問題17】3:日本における酵素活性測定のトレーサビリティ連鎖は、非SI単位→JSCC常用基準法、JSCC自動化法→常用酵素標準物質(JC-ERM)→製造業者社内標準測定操作法→検量用酵素標準物質→JSCC標準化対応法→日常試料→測定結果

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問題18. 管理サイクル・マネージメントサイクルの一つにPDCAサイクルがありますが、PDCAのAは何を表すか。
1. 改善
2. 評価
3. 実行
4. 計画
5. 信頼
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【問題18】1:PDCAサイクルは、第二次大戦後に、品質管理を構築したウォルター・シューハート、エドワーズ・デミングによって提唱された。このため、シューハート・サイクルまたはデミング・サイクルとも呼ばれる。Plan (計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する。 Do(実施・実行):計画に沿って業務を行う。Check(点検・評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを確認する。 Act(処置・改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて処置をする。

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問題19.

ビタミンB6誘導体を補酵素とする酵素はどれか。2つ選べ

1. クレアチンキナーゼ
2. ラクテイトデヒドロゲナーゼ
3. オルニチンデカルボキシラーゼ
4. グルコースオキシダーゼ
5. アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ

【問題19】3と5:各酵素の補酵素は、クレアチンキナーゼ→ATP/ADP、LD→NADH/NAD、オルニチンデカルボキシラーゼ→PALP、GOD→FAD(ビタミンB2誘導体)、AST→PALP。PALPとは、ピリドキサールリン酸のことでビタミンB6誘導体である。アミノ基転移反応および脱炭酸反応に関係する酵素の補酵素になる。

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問題20. 遊離グリセロール消去タイプ(TG換算約4000mg/dLまで消去可能)のTG測定試薬を用いて、AさんのTGを測定したところ、現倍で2190mg/dL、×3、×5では84mg/dLとなり、現倍測定値に大きな正誤差が見られた。そこで、遊離グリセロールが4000mg/dL以上存在すると考え、遊離グリセロールを測定することにしました。試薬は上述のTG試薬しかありません。どのようにして遊離グリセロールを測定しますか?

【問題20】検体を×3あるいは×5に希釈して通常測定法にてTG値を求める。・・・1 
同検体を、R1とR2の反応順番を逆にして、R2を試料とまず反応、その後R1と反応させ遊離グリセロール+TG値を求める。・・・2

2−1にて遊離グリセロール値を求める。検体を希釈測定しないと直線性範囲を超える可能性があるので1、2とも原血清および希釈検体を測定すること。

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以上です。いかがでしたでしょうか。おつかれさまでした。

(by 奈良県臨床衛生検査技師会 藤本一満)

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