近臨技研修会報告

第6回臨床化学検査研修会に参加して

奈良医大附属病院中央臨床検査部 倉田主税

  あまりにも順調な晩秋の晴れた日、私はきのくに志学館にいた。テーマは、今必要とする知識・技術と実践すべき外部への展開・検査データの保証と題され、2日間の研修内容として次の5点があげられていた。

1)先端医療として近い将来応用されると思われるDNAチップに関して。
2)症例及び検査データをグローバルな観点での解析。
3)検査室から出て何ができるか、何を求められているか。
4)キャリブレーションのチェック法−実践を意識した具体的方法の提示。
5)異常症例から学ぶ分析誤差要因の解析手順。

と、まさに現況に即した研修内容であると思われた。
 私は、へこたれそうな心に喝を入れようと、近畿臨床衛生検査技師会第6回臨床化学検査研修会に参加していた。何となく潮の香りをうっすらと感じながら、会場の真ん中あたりでDNAチップの話を聞いている。正直脳内パンクの状態である。
 話は次の研修内容に入っていたみたいだったが、夢か現実かわからないまま、昔ながらの歴史的な技術と、最新技術を駆使したモダンな検査がうまく調和しながら歩んできた臨床化学分野を私なりに思い考えていた。
 ナイトセミナーは、検査室から出て何ができるか、何を求められているかについて幾つかの病院、施設からの報告である。パラメディカルをきっちりと確立し、臨床検査技師としての役割、責任を果たしている病院、施設の報告がされている。期待、不安、ブルー、ハート、職務責任感、快楽、生活など、考えはまとまらないが報告が進むにつれて感じた単語だけが脳裏をかけている。
 医療制度改革などが問われる中、検査技師を取り巻く状況は厳しく転機を向かえている。リアルタイムな対応が必要とされるこれから、これからも続く臨床化学分野の終わりなき歴史のため、ほんの一瞬だけでも真剣になれたらと、思っていた。
 今回、研修会に参加したもう一つの楽しみは釣りである。仲間との飲み会は楽しいまま終了し、釣友との待ち合わせ場所である波止場に出かけた。
 365日LOVE FISHINGである私にとって渓流の女王あまご、全身の神経をオトリに集中させるアユの友釣り、夜空の下静かにウキに集中して釣る海のギャング太刀魚、マニアックなアオリイカのヤエン釣り、短竿で勝負するかかりのチヌ釣りと、私を魅了してやまない好適手は、時には厳しく時には優しく癒してくれる。人とは違った最高のパートナーである。
 2日目の研修会は、寝ずの釣りもたたり後ろから3列目に座った席がシングルベットになるのに時間はかからず、すぐに夢の世界にいた。
 「奈良医大の倉田さん」と、座長の声。幻想的な夢の世界からの出口だった。ルーティンな時代疲れも極限の中参加した研修会、一度自分自身をリセットさせてみようと思っていたが、夢中になっていただけだった。