会長挨拶

臨床検査技師の将来を考える

(社)奈良県臨床衛生検査技師会

会 長  山 中  亨    

 昨年来、医学界は正に小泉内閣の掲げる構造改革の名の下に、厚生労働省が提示した医療改革案を巡って大きな動揺と激論が闘わされたところでありますが、診療報酬の引き下げが医療施設に押し寄せる波は一層厳しいものとなって参ります。経済的収拾に手綱を奪われて最も大切な質的向上の部分で目をつぶらないようにしなければ成らないと考えます。規制緩和が進むにつれて都合の良いことばかりではなくなって、臨床検査の運用そのものに改革のメスが入り込んでくることは間違いのない予想でありましょう。機械化が進みIT革命が本番を迎える中で、臨床検査の位置づけと臨床検査技師の立場等の論議がなされると考えられ、臨床検査技師がこの領域の業務をしっかりと足固めする絶好のチャンスでもあると考えることができます。
 今臨床検査や臨床検査技師に何が出来るかを考えるときに、それぞれの現状を充分に認識することから始めなければならないと思います。臨床検査技師の生き方に若干の施設差があってそれが少し表面化している現実を踏まえ、臨床検査を十分に活用できるように先を見ることが必要になってくると言えます。我々が出した検査の結果がどのように解釈され応用されているのか、その結果患者さんの上に何が展開されたのか。検査の結果はどうであれ医師を動かすことの根拠にどれだけの意味づけがされているのか。これからの臨床検査は臨床的な意味のあるものが大きい順に展開されてゆくと思われます。その順番を決めるのは臨床検査技師であるとないとで大違いと言うことになると思います。
 これからはどんどん臨床医の中に飛び込んでゆかなければならないと考えます。今臨床検査医がおられる病院は数百施設しかありませんが、ここから発信してどこの施設の検査部門でも同じ評価のできる臨床検査が展開されるということになれば、情報の共有化にもなり大きな意味を持ってくると考えることが出来ます。今こそ臨床検査技師は臨床検査医の力を頂いて、早くそのレベルまで到達しなければならないと思います。臨床検査医は検査部門の位置づけについて懸命になっておられますが、その分技師にも期待が寄せられていると思われます。臨床検査技師誕生の元は臨床医の手足となって臨床検査を代行するところからであります。ここまで来た医療レベルの向上に対してこれからは臨床検査技師が医師の中枢に飛び込んで、考えるときの一助になることが役割であると言えます。それが臨床検査技師の存続に意味を持たせることになると考えることが出来ます。技師会活動もこのようなことを踏まえて展開されることを希求致します。