職場紹介

医療法人厚生会 奈良厚生会病院

文章 複浦 毅一郎

資料 隅  佐恵美

はじめに
 この会誌がお手もとに届くころには、桜の花がそろそろ準備を始めている頃でしょうか?昨年11月中ごろ、執筆依頼のお電話をいただきました。施設数を考えるとそろそろかな・・・?と思っていましたのでお引き受けすることにしました。さあ、えらい事になりました。

病院の槻要
 大和郡山市の昭和工業団地の−角、西名阪高速道路沿いに、昭和60年1月1日(元旦)奈良厚生会病院は開設されました。新病棟を2年後に増築し、平成10年9月に介護療養型新病棟を完成。現在、一般病棟49床、療養病棟99床、介護療養型医療病棟150床の計298床が稼働しています。平成3年2月には西隣に関連施設として、介護老人保健施設 若草園(旧:老人保健施設または中間施設とも云われていた)が開設されました。現病院の本館は奈良厚生会病院となる前の建物を使用しているため、各部署の配置にはことのほか苦労したのを思い出します。
 検査科が当初から存在していたかどうかは分かりませんが、昭和60年より採用が始まり一時期は3人体制にて業務をこなしてきたものの、さまざまな社会情勢・医療改革の波にもまれながら現在、2人にて運用されています。既に皆様もご存知のように、当病院の入院は「高齢者」の方が主な対象の病院です。ちなみに外来は年齢制限はありませんのでどなたでも受診できます。お気軽にどうぞ。また、大和郡山市の救急輪番病院の役割も担っています。

検査科紹介
 正直な話、依頼のお電話をいただいた時少し因ってしまいました。特にお話できるような材料が見当たらないのです。それからというもの、いままでの「まほろば」に穴があくかな?と思われるような視線が注がれたのはいうまでもありません。ただ少しだけお伝えできる事があるような気がしました。「原稿のねらい、はおまかせします」とも書いてありましたので、そうさせていただくことにしました。さて、そろそろ本題にはいりましょう。
 院内にて実施している検査項目及び検査使用機器は下記のごとくになります。それ以外は全て外注検査センターとの契約にて運営されています。
1.尿検査(尿一般定性、尿沈渣、妊娠反応)
2.末梢血液−般、血沈、止血・凝固時間
 *シスメックス社:K−4500
3.血液ガス
 *ラジオメータートレーデイング社:
  ABL330
4.生化学至急検査(Na、Cl、K、TP、ALB、BUN、CRE、GOT、GPT、LDH、CPK、AMY、血糖、CRP定量、
        心筋トロポニンT定性、HBsAg定性、HBsAb定性、インフルエンザ検出キット、血中アンモニア)
 *富士メディカルシステム社:FDC5500
 *シノテスト社:グルコローダーE
5.輸血に関わる検査(血液の発注、血液交差適合試験、不規則性抗体スクリーニング)
6.生理検査(心電図、ホルター心電図、負荷心電図、肺機能、腹部エコーの一部など)
 *日本光電:Cardiofaxシリーズ
 *東芝:PowerVision6000など

あとがき
 検査項目がいとも簡単に列挙できるという意味合いにはさまざまな思惑が渦巻きます。入院患者さんが高齢者であるためなるべく痛みを伴う(検査のための採血も含む)治療・処置は多くはなく、医師による患者さん家族方への「ムンテラ:病状説明」においても「CPR:心肺蘇生」を望まないご家族が増えてきているのもまた当院ならではでしょうか。
 いままで「まほろば」に紹介された病院とは少し性質が異なる「病院」ではないかと思います。(今後、病院というより「福祉施設」、「介護施設」という意味合いの強い分野に包括されるかもしれません)いざという時の最低限度の項目を装備しているといえば聞こえはいいのですが、一、臨床検査技師という立場からするとさまざまな葛藤に苛れているのもまた事実です。先日のなにかの検査雑誌に、臨床検査技師は福祉関係に関与できる資格に乏しい云々と書いてありました。まったくその通りです。(だからどうすればいいのか?と言うところまでは踏み込んではいませんでしたが)臨床検査は病気の予防・早期発見・治療などに多大な貢献を果たしてはいるものの、その結果が新たな病名を発生し?、それに伴う治療費等の諸問題がいろいろな形で政治的・社会的にマイナス論議に発展しているのはなんともやり切れない思いでいる方は少なくはないでしょう。臨床検査というのはレントゲンと同様に「病気治療・予防」に重点を置いた分野であり、「福祉・介護」という分野とは相容れない領域であるのはある意味で理解はできます。私はこの「職業」を結構気に入っています。出来ることなら救急施設それも小児科分野に・・・という熱い思いが今もあります。(奈良県は小児科・婦人科領域の救急が立ち遅れていますが)ただ当院の様な施設での役割は?といわれるとやや寂しい思いは禁じえないのも事実ながら、私もそしていまこれを読んでおられる皆様もいつかはこの世界とは別の世界へと旅立つ時が訪れると思います。その世界へと一足お先にいかれるであろう方々のお世話をさせていただいている当病院の立場にはそれ相当の「重み」があります。「小児と高齢者」・・・。そこに関わる諸条件には多くの違いが発生することはここで述べるまでもないことでしょう。「これからの命と今までの人生」・・・両方とも意志の疎通の困難さを持ち合わせている分野にてのさまざまな日々のドラマが展開されているなかで、今のこの病院においての自分たちの職務は?役割は?そしてその貢献度は?・・・など今一度、強く確認する時代に迫られていることをひしひしと感じている今日この頃です。「今何をしているのか」ということより「今何を考えているのか」という「本質」により近い「ほんまもん」がより求められても良い時代では?などと思ったりしていますが、皆様の職場ではいかがでしょうか?
 最後になりましたが、会員の皆様、多くのご関係者の皆様、そしてそのご家族の皆様のご健康とご繁栄をお祈りしつつ、今後ともよろしくご指導、ご鞭撻の程お願い申し上げます。
早春の季節にて・・・