私の映画事情

ファルコバイオシステムズ・奈良 松田 奈奈

 社会人となって仕事をするようになり、つくづく感じることですが、個々にかかる責任の重さは計りしれないもので、特に医療の現場に携わる者は人の生命に関わる仕事であるため日々の緊張はひとしおです。私自身も検査をしている時は心身共にとても集中するため、1日の仕事を終えてみると軽い疲労感を覚えます。
 そんな時の息抜きやストレスの解消には自分の好きなことをするのが一番です。映画を観たり、本を読んだりする事が大好きな私はそれらに没頭することしばしばです。
 映画は友人や知人と観にいくことが大半ですが、1人のときもあります。でも以前は1人で行くことなどとんでもない、観にいくものにもよりますが、館内は友人同志であったりとか、カップルがほとんどなのです。そんな中に1人だと、「この人友達いないの?」とか「さみしい人ね」などと思われてるのではないだろうかと、軽い被害妄想に陥り、とても1人で足を踏み入れられなかったのです。でもどうしても観たい、しかし知人とは時間が全く合わない、でもあきらめ切れないと思ったある日、意を決して入場してみたのです。そしたら、別にどうということはないものですね、周りは人のことなど気にもとめてないし、私は私で、なかなか楽しい独りの時間を過ごすことができました。ちょっとした楽しみの発見、みたいなものです。
 でも、やはり観終えた後には、感想というものを語り合いたくなるもので、特にそれがとてもいい映画だった場合はたまらなくなります。「これはいいよ!」と他の人にも知ってほしくなるものです。
 映画の内容としては人間ドラマが好みな私ですが、選ぶ理由で一番多いのは出演者です。ミーハーな気持ちとかではなくて、本当に自分が惚れ込んでいる俳優さんなら、その選択法でハズレを引いたことってあまりないように思います。
 そんな私をいつも楽しませてくれる俳優さんの1人に、ジョニー・デップが挙げられます。個性的な、演技派俳優です。大ヒット作にはあまり出演していないと思いますが、知る人ぞ知るという感じでしょうか、有名な方です。ほとんどの作品を観てきましたが、彼は“せつない物語”がとても合う男性です。せつないといっても、普通の恋愛映画に出ることはほとんどありません。例えば、女装趣味の超B級映画監督を演じた「エド・ウッド」、FBIの潜入捜査官を演じた「フェイク」、70年代アメリカの伝説的麻薬ディーラー、ジョージ・ユングを演じた「プロウ」といい、全てジャンルは違いつつも、何か心にくる、せつない実話が得意のようです。実在した人を演じるということは、モデルのイメージという制約があって、自由に演じることは難しいと聞きますが、彼の場合は、そのような枷を感じさせません。普通であれば、その実在のキャラクターと事実に引っぱられがちになってしまったり、面白味に欠けがちになりかねないところを彼の場合だと、自分のカラーを殺さずに実在の人物を創り上げていってるように思うので、いつもその演技には感動させられます。また出演する作品のジャンルは本当に多種多様なので、普段なら観ようと思わない内容のものでも意外と良かったりして、食わず嫌いにならなくてすんだものも多いのです。彼によって映画の作品に対する見解が変わることもあるのです。
 そういった理由から、私は彼の映画に足を運ぶのでしょう。みんなに知ってもらいたいと思う、おすすめな俳優さんです。
 あと少し以前に、友人が割引きチケットを手に入れたため、めったに観ない邦画を観に行きました。「陰陽師」なのですが、ブームということもあって、軽い気持ちで観てみたら、これがまた大変ハマってしまったのです。平安時代の陰陽師、安部晴明が主人公であり、狂言師の野村萬斎さんが演じていたのですが、それがまた日本の古典芸能特有の雅なたたずまいがとても役にぴったりで、内容もとても面白いものでした。その後すぐに原作である夢枕獏さんの本を一気に読んでしまったほどです。
 そしてこのあいだ、野村萬斎さんの狂言をその友人と見に行きました。「三本柱」と、馬年にちなんだ「止動方角」という狂言だったのですが・・・。また一つ、渋い趣味が増えそうです。