話題

健診について(メタボリックシンドローム)

天理よろづ相談所病院 萬砂 美都子

メタボリックシンドローム対策は全国民を対象にした健診と保健指導に動き出した。

特定健診は生活習慣病予防と医療費への抑制を目指し、2006年の医療制度改革に盛り込まれ、義務化は2008年4月1日から実施され、対象は40歳から74歳である。

どうしてメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)なのだろうか?

メタボリックシンドロームは男女とも40歳を境に増加し、40〜74歳でみると男性の2人に

1人、女性の5人に1人がメタボリックシンドロームかその予備群と考えられ、該当者数約940万人、予備群者数約1020万人、併せて約1960万人と推定される。

メタボリックシンドロームを標的とした根拠は、第一に肥満者の多くが軽度の異常を複数持っている。第二に危険因子が重なるほど動脈硬化を引き起こし命にかかわる循環器病になる危険が増大する。第三に生活習慣を変え、内臓脂肪を減らすことで危険因子の改善が見込まれる。そのためメタボリックシンドロームのリスクが高いグループとその予備群を抽出し、レベル分けするための健康診断を実施し、保健指導の実施を強化するための具体的な方策が発表された。これまで会社の従業員だけに義務付けられていた健康診断を40〜74歳の被保険者やその被扶養者を対象とするところがもっとも注目すべきポイントである。

医療費の削減に向けた対費用効果としてメタボリックシンドロームに焦点をしぼり保健指導に重点をおいている。健康保険組合がレセプトすなわち受診履歴とともに健診結果をとりまとめ保健指導に役立てるという流れである。現在保険者は実施計画を策定中で、健診の実施費用と保健指導費用は原則として保険者(国や自治体、健康保険組合)が負担するが、保険者が本人に請求することも可能としている。これらの強制力の有無や実行性、有効性については未知数であるが、関係官庁がそれだけメタボリックシンドロームに対して真剣になっているというあかしとも受け止めることができる。

2008年から実施される特定健診および保健指導は5年を一期とし、5年毎に見直される。それぞれに参酌標準が設けられ、実施率と減少率については平成24年までの5年の目標がそれぞれ70%、45%および10%(平成20年比)さらに保険者別にも参酌標準があり、達成しているかどうかは平成26年度以降の支援金の評価に反映することになる。すなわちちゃんと実施していなければ評価が下がり多くの費用負担が保険者にかかることになり、私たちの支払う保険料に跳ね返る可能性もある。さらに、保健師や自治体にとっては自らの評価にも繋がり大きな負担である。

メタボリックシンドロームに特化したこの新健診の検査項目は問診にはじまり、身長・体重・肥満度・腹囲測定・血圧があり、血液検査では脂質項目はLDLコレステロールの実測が新たに加わり、糖尿病検査では空腹時血糖とHbA1cのいずれかの実施で可となり、腎機能検査はクレアチニンや尿酸がなしとなり代わりに尿一般での尿糖と尿蛋白を半定量での実施とし、必須項目としている。

健診結果の判定基準は保健指導のための予備群抽出のためか厳しいものである。私自身どきどきして結果を待つことになるのかと今から受ける健診の結果が怖い・・。とりわけ空腹時血糖が100mg/dl以下というのが難関かと思われる。

新健診が始まると臨床検査の分野が大きく変わるのではないかと私見ではあるが大いに期待している。閉鎖された検査室内での検査にこだわらず、患者(病気)ではなく健康人に検査と健康についての関わりなど、もう少し大きな枠で活躍できる検査技師の明るい希望が見出せればと考えている。例えば、厚生労働省が保健指導の参考資料としてあげている高血圧や糖尿病、高脂血症などの病気の成り立ちや生活習慣との関わりなどの説明は検査技師が率先してできることで、市町村などと協力し多忙な保健師の助けになるのではないか。検査値で健康度をわかるように健診受験者に啓蒙していくのが私たちの義務であり、社会貢献となる。

 

目       ○必 須         □選

 

◎新

計   測

身長

代  謝  系

空腹時血糖

体重

尿糖

肥満度

HbA1c

腹囲

尿

尿蛋白

血圧

 

脂  質

中性脂肪

肝  機  能

AST(GOT)

HDLcho

ALT(GPT)

LDLcho

rGT