辻村 明美
県立奈良病院は昭和39年に平城宮跡の一画とも言える奈良市二条町で奈良医科大学付属奈良病院として9診療科の200床で開院しました。昭和50年に奈良県立奈良病院に移管し昭和52年に現在の平松町に新築移転しました。
当初は12診療科・400床でした。その後昭和57年には30床の救命救急センターを併設し、現在は15診療科430床となっています。
救命救急センターは全国で約150ヵ所あるセンターの1つです。3次救急医療施設として心臓病、脳梗塞、多発外傷、熱傷などで集中治療を必要とする患者の生命を守る為に24時間体制で機能しています。又小児科・婦人科には県下唯一の施設として周産期医療センターNICU・PICUを含んでいます。
奈良県最北部の奈良市に位置し大阪市、京都市に近く県北部の基幹病院として位置づけられています。
中央臨床検査部は部長・医員夫々1名、検査技師28名で勤務しています。又検査部技師の内5名は輸血部を兼任しています。8:30より17:15までの勤務ですが、救命検査室において1名の当直体制を採り時間緊急検査を実施しています。
救命救急センターを併設しているので輸血用交差適合試験や払い出し業務が多く当直時に輸血が必要なときは大変忙しい当直体制となっています。輸血部部長は小児科部長が兼任しています。構成は以下のようになっています。
〔1〕検体検査部門
生化・血清・(5名輸血部兼任)・血液・一般・救命センター検査室で構成されています。外来患者の診察前検査報告が浸透しており検尿・末血・止血・血糖・HbA1cなどでは15〜30分以内で、生化項目でも1時間以内を目処としています。
1:生化・血清
生化係には分析器として日立7350E・7150E・血糖測定用グルコローダー・HbA1c測定装置・電気泳動装置・腫瘍マーカー検査としてPAMIA50・血中薬物濃度を5項目測定しています。
近年糖尿病患者の増加によりHbA1cは月900件測定しており、3年前の3〜4倍となっています。又検査業務だけでなく病棟への検査説明と、今年には糖尿病療養指導資格者が出、糖尿病教室と糖尿病患者さんへの血糖測定装置の指導をして患者さん、看護婦さんより喜ばれています。
血清係担当者は輸血部も兼任し又救命救急センター検査室も担当しています。センター検査室は日勤帯のセンターの検査及び当直者の為に検査機器のメンテナンス・精度管理・在庫管理・申し送り等の整理を一手に行い、日当直技師がスムースに業務に当たれるようにしています。血液型、輸血検査は用手法で行っていますが、感染症検査は本年よりルミパルスを導入しました。
輸血部においては年間約750名の輸血検査業務、製剤管理と安全管理を行い適正な輸血療法が行えるよう管理しています。又本年度より血液照射装置が導入され、血液照射の業務も行っています。
症例数は少ないが末梢血幹細胞採取・保存も実施しています。CD34数は血液検査室でフローサイトメトリーを用いて測定しています。
2:血液・一般
血液係には総合血液検査装置としてADVIA-120を使用しています。泌尿器科透析患者の網状赤血球中CHr測定が臨床医より評価を受けています。
検査機器として凝固検査用としてCA-5000、止血にLPIA-200、更にフローサイトメトリー(EPICS-XL-MCL)も保有しており白血病や悪性リンパ腫の診断治療に貢献しています。検査材料は末血、骨髄液以外のリンパ節やBAL等が増加しています。先にも述べましたが末血・止血の迅速報告に努めています。外来には内科等6科の検体検査報告者の為にプリンターを設置し検査が終わり次第報告し迅速報告の一助となっています。
救命センターICUもプリンターを設置しています。検査システムは平成6年に導入され古くなっていますがシステムの管理も血液係が担当しており、レセプト点数改正や新規外注検査導入時はマスター登録におわれています。又今年度より一般検査も担当しており午前は一般で午後より血液にとローテーションとして業務に当たっています。
2〕生理機能調査
7名で業務にあたっています。心電図は6CHが2台、3CHのポータブルが1台です。ホルター心電図は解析も内部で実施しています。脳波計2台、呼吸機能計は1台で稼働しています。脳波件数は近年減少していますが、ABR、SSEPを中検技師が実施するようになり各科の医師が検査を担当していた頃より4〜5倍増加しています。現在は予約検査として対応しています。
心エコーにも技師がDrと交代でとっています。今年初めて循環器部門の認定資格者を出す事が出来ました。トレッドミルはDrの補助に入っています。又本年より耳鼻科の聴力検査一連は技師が出向して測定しています。又腹部エコー検査にも技師が入るようになりました。今後も患者の為に待時間を少なく出来る体制にしたいと考えています。
〔3〕病理・細菌部門
病理係は病理医が2名の為、切りだし作業を病理検査室ですることが増え技師にとっては細胞診検査を行う上にでも役に立っています。術中迅速組織検査も月平均10件実施しています。又免疫染色も増加しております。
2年前に細菌と同時にシステム(松浪 Path・Window)を更新し、現在は軌道に乗り画像のファイリングを行っています。まだまだ手作業の多い部門ですがOP材の取り違えによる医療事故が新聞報道されており、気持ちを引き締めて業務にあたっています。
細菌室はビオ・メリューのVITEKシステムを導入し、作業管理には台帳を無くし作業台にノートPCを設置しています。
又ようやく感受性検査をMIC値で報告する事になりました。血液培養装置も導入しました。PCR検査は数年前より実施しており主にクラミジア、坑酸菌検査に用いています。夏場はO-157等のベロ毒素検出に用いています。繁忙時は病理係が細菌室に手伝いに入っています。
当病院のような地域支援病院はますますその存在意義が収益との比較において行われることになり、検査室は今後院内検査のあり方が問われ、又来年には点数の引き下げが行われるなど検査を取り巻く環境は一段と厳しくなります。検査部一同正念場と考えて知恵を出し合い乗りきりたいと考えています