県立奈良病院 辻本 紀美子
今回の旅行は、近所のファミリーの転勤にさかのぼるのですが、子供達の幼なじみで、私の井戸端友達が、旦那様の転勤でニュージャージーに5年前から住んでいるのです。前々から、“一度遊びに来たらいいのに…”と誘ってくれていて、というのもその友達の家は5ベッドルームに2リビング、敷地面積1000坪、なにしろ広いのです。庭にリスが住み、夏には蛍も舞う、年に一本か二本たち枯れる庭の木が、一冬の暖炉の薪になるという。その平家に家族3人で住んでいるのですから、日本庶民の生活からは想像も出来ない話でしょう。
この機会に一度アメリカ庶民の生活を見てみたい。それにニューヨークは現代芸術の中心であり、とても魅力的な街、一度是非行きたいと思っていたのです。その上、めっきり親離れし、親といっしょの旅行はお金を積んでも付いて来ない大学2回生から中学2年生までの3人の息子達までが、何故か3人共行きたいと意気投合してしまい後には引けなくなったのです。
子供達の学校やテスト、私達親の仕事の都合、子供といっても皆大人料金、5人の旅費は大変な出費です。ニューヨークの冬は寒くて北海道の冬と同じぐらい寒いらしいのですが、航空券は冬が一番安いので、これは冬に行くしかないですよね。色々やりくり、考えをめぐらし出発日は、3月7日、飛行機は全日空にして、航空券はアメリカの友達にとってもらうことに、これが全日空なのに何故か日本で買うより安いのです。その上、リモ・サービス(送り迎え)が付いている。なんといってもこれが魅力です。というのも空港からニュージャージーの友達の家まで私達だけで行かなければならないのですから。
出発2日前ニュージャージーの友達から“雪のため学校が休みです・・・・”とのメールが入り、学校が休みになるくらいの大雪ってどんなの?と思いながらも、脳天気な我ファミリーはルンルン気分でジョン・F・ケネディ空港に到着。一面の銀世界のニューヨークはサンサンとふりそそぐ太陽と共に私達ファミリーを迎えてくれました。ちなみに前日は雪のため全便欠航でしたから日頃の行いのよさを解っていただけるでしょうか・・・・?私達はリモ・サービスのおかげもあり、無事ニュージャージーの友達の家に辿り着く事ができました。そこは、街並みが日本とちょっと違う、塀がないのです。庭はきれいに刈られた芝と雑木林、日本の庭木はアメリカと比べると、まるで盆栽です。ちりひとつない広い道路がまっすぐ走り、平家が整然と並んでいます。一息入れて昼食はおいしいピザ屋さんがあるからと、近くのマーケットへ行ったのですが、ここでもビックリ!ピザがビッグ、野菜も大きい、5人分のポテトサラダが一個のジャガイモでできそう。それでもりんごやすいかはちょっと小さいめ。あっ!それからキッチンが小さい。流し台、調理場がワンルームマンション並み、家は大きいのにね。友達は“これでも、何件か見てキッチンが大きいからこの家を選んだのよ・・”というのですが、アメリカ人はお料理をあまりしないみたいですね。もう一つ驚いたのは、極寒のニュージャージーなのに、家の中どこでもTシャツ一枚で過ごせる温かさ、日本では、節電、節電とうるさいのにアメリカは資源の使い放題でいいのかしら?などなど・・・・思った以上に庶民の生活の差は大きいようです。
ところで、ニュージャージーはニューヨークの隣で、マンハッタンからハドソン川を挟んで対岸にあたり、ニューヨークのベッドタウンとなっています。どこまでも雑木林がつながる大自然に囲まれた地域です。松下、シャープ
など日本の企業も多くあります。
さて、我家のニューヨーク旅行の計画を簡単に示すと次の通りです。
3月7日(水)
伊丹発 AM8:15
成田乗り継ぎ発 AM11:00
3月7日(水)
ジョン・F・ケネディ空港着
AM10:45 一路ニュージャージーへ
3月8日(木)
自由の女神 マンハッタン散策
3月9日(金)
メトロポリタン グッゲンハイムミュージアム鑑賞
NBA観戦
3月10日(土)
アウトレットショッピング
オペラ観劇
3月11日(日)
エンパイア・ステート・ビル ライオン・キング観劇 MOMA鑑賞
3月12日(月)
ジョン・F・ケネディ発
AM11:00
3月14日(水)
成田乗り継ぎ
伊丹着 PM8:00
ニューヨークといえばアメリカ独立百年を祝い変わらぬ友好の印にとフランスが送った自由の女神、ここはいつも観光客がいっぱいと聞いていたので早朝一番に行く事にしました。ラッキーな事に、御主人の出勤前にニュージャージーのリバティ・ステイトパークまで送ってくださる事に、ここよりフェリーで移民の島として知られるエリ島経由でリバティ島へと渡れるのです。朝のラッシュは日本と同じ、こんなに広い道路なのに不思議ですが、それ以上に車が多いようです。
運転は17歳からOK、ハイスクール三年から通学に車を使えるそうです。リバティ・ステイトパークは、移民達の大陸への第一歩の地で、現在フェリー乗り場として駅の建物が残っているだけで、鉄道はありませんが、かの昔ここから鉄道に乗りアメリカンドリームを胸にアメリカ各地へ移民達は散らばって行ったそうです。それにしても、ここから見る朝のマンハッタンはすばらしい。
朝靄の中から段々と浮かび上がってくる連立する高層ビル。神聖なる桂林の山々のごとく、といっても私は桂林を写真でしか知らないのですが・・・・・・なにしろとても幻想的です。
自由の女神は、足元の展望台までエレベーターで行くコースと、足元までの167段の階段と、さらに166段の螺旋階段(一方通行)で王冠の展望室まで行くコースがあります。もちろん王冠まで昇りたいよねと家族の躊躇をよそに決定しましたが、階段の行列はなかなか進まず、螺旋階段は狭く、それでも王冠の小さい窓から女神の目線でアメリカを見ることができ、ここまで来てよかったとまずは満足できました。
そしてリバティ島を後にフェリーの中から聖書とトーチを手にした女神に手を振り、りすがあちこちで木の実をかじっているバッテリーパークに到着。そこから地下鉄でミッドタウンに向かい、メーシー百貨店内のマクドで遅
れた昼食をとる。
子供達に言わせるとテリヤキバーガーはないけどハンバーガーは日本とまるで同じ大きさで味、ただ、コーラーなど飲み物がびっくりする大きさで飲みきれずに全員リタイヤ。お金さえだせば世界中の美味しいものが食べられるニューヨークで、何故かマクドで昼食を終え、いざ五番街へと向かいました。長男183cm、次男180cm、三男172cm、旦那が176cmのむさくるしいボディガードを持つ私は、地下鉄もマンハッタンも全然怖くなかったのですが、それ以上にお巡りさんがあちこちにいて安心な街でした。地図を見ながら、ビルを見上げながら、チエルシーからミッドタウンヘ、五番街の友達との待ち合わせ場所ヘと向かい、無事友達と会う事ができほっとしました。
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そこから、テレビでお馴染みのタイムズ・スクエアを横切りバスターミナルに行き、友達の家までのバスの乗りかたを教えてもらたのですが、400以上のゲートを持つ巨大なバスターミナルで、明日は間違えずにバスに乗れるかしらと、一抹の不安を感じながらも高速バスで一路友達の家へ向かいました。
ハドソン川を海底トンネルで抜け、対岸から見る夕焼けの摩天楼は写真で見る以上に感動的でした。しかし明日は私達だけでバスに乗りニューヨークへ出かけるのですが、英語に自信がない親と英語がにがてな息子達?さて、どうなる事でしょう。
次の朝バス停で昨日もバスで一緒だった白人のおじさんと中国人のお兄さんと一緒になりました。どちらも“Good
morning!”と声をかけてくれてなんとなくhappyな気持ちになりました。バスの運転手さんにも誰もがお互いに挨拶をしてありがとうと言って下りていく。私達もthank
youと言ってバスを降りました。アメリカ人は本当に礼儀正しく、親切でした。バスを降りて、地下鉄でメトロポリタン美術館へ、ここでもお金持ちのアメリカに脱帽です。なにしろ美術全集でお馴染みの絵があちこちに無造作にかけられているし、それ以上に今回は特別展としてフェルメール展が開催されていて、生涯35点しかない作品のうち15点が展示されており、またまた感激(昨年天王寺美術館にきたのはたったの5枚で1時間待ち)してしまいました。エジプト時代から現代まで、なにしろ作品が多くてゆっくり見る時間がなくとても残念でした。
子供達はお腹がすいたとうるさいのでここのレストランで昼食にしたのですが、てりやきチキン丼があったのにはびっくり(日本の食文化の影響?)、それも若いスマートな金髪美人が結構これを食べていましたが大盛りです、よく食べる私が感心するくらいアメリカ人の食欲は旺盛です。次に、次男がどうしても行きたいと言っていたグッゲンハイム美術館へ、ここは、現代美術、抽象絵画のコレクションがすばらしかったが、なんといっても建物が印象的です。設計は20世紀を代表する建築家の一人、フランク・ロイド・ライト(1867〜1959)、真っ白の太い螺旋状の外観は巨大な現代彫刻を思わせる。一度見たら忘れられない建物です
日本では東京帝国ホテルが代表作だそうです。そこから、西へセントラールパークを横切るとアメリカ自然史博物館。南へ下りて、メトロポリタンオペラハウスとジュリアード音楽院を覗き、ブロードウェイから地下鉄でバ
スターミナルヘ、色々苦労(バス切符売り場のおばさんの英語はわからない)はありましたが、今日のウオーキング・ツアーも無事終了し友達の家に到着することができました。
次の日のメインはアウトレット(コーチやティファニーも安いよ)での買い物ではありません。夜のメトロポリタンオペラハウスでのオペラ観劇。“コジファン・トッテ”。随分前からインターネットでチケットを取り心待ちにしていたのです。
夜の9時開演、ちょっとおしゃれをして出かけたのですが、ほとんどの人がカジュアル。ここは正装で行くのは初日だけなのだそうです。その点では2年前に行ったミラノスカラ座とはおお違いでしたが、歌手、オーケストラ、舞台はさすが超一流でなかなかのものでした。しかし帰り着いたのは夜中の1時でした。そして車窓から見る、ニューヨークの街は、昼とは違う人達の街になっていました。次の日は、朝からエンパイアステートビルへ、だまされたつもりで行っておいでと、強く勧められ気乗りせずに行ったのですが…確かに行ってよかった思います。 自由の女神の向こうに広がる大西洋と何処までも続く大陸、大きな大きなアメリカ、ビルの隙間を走るイエローキャブ、点のような人々、ハドソン川には大小の船と共に、なんとよく見ると空母(博物館らしい)が居座っている。視点を変えると新しい発見がある。また、違うアメリカが見えてくる。
そして、今日の目玉、いざ、ミュージカル!ライオン・キングへ、ミュージカルなんて別に見たくないと言っていた息子達が目を見張って息をしてないかのように舞台に釘付け、出演者全員、ほんの端役の人さえも、すばらしい演奏に踊りでした。
今度来ることができたならミュージカル三昧の一週間にしよう。ブロードウェイ、オフ・ブロードウェイ、オフ・オフ・ブロードウェイなど劇場がいっぱい、ミュージカルがいっぱい。まだまだ楽しめる事がいっぱいあるのに残念にも明日でニューヨークにさよならしなければなりません。又、絶対に来るからね。マンハッタン、ブロードウェイそしてゆっくり見たいメトロポリタン美術館。
心残りと、友達ファミリーへの感謝を胸に、一路現実世界ヘ。