近臨技研修会報告

近畿臨床化学研究班研修会に参加して

天理よろづ相談所病院  中傳 博子

 平成13年3月17日、18日の二日間にかけて、兵庫県元町ひょうご共済会館にて催された第5回近臨技臨床化学検査研修会に参加しました。
 この研修会はいくつかのテーマに分かれていて、毎回シリーズ化されているものもあり、続けて参加していると以前の問題点や今回新たに取り上げられているテーマがよく分かります。
 今回のテーマ“疾患を学ぶ”では、肺癌について学術的な面からと臨床面においての腫瘍マーカーの性質や、実際の症例提示、診断、治療と幅広く肺癌の病態と検査について網羅していたと思いました。
 私自身もシンポジストとして、肺癌例における腫瘍マーカーの使われ方という演題で発表させていただきました。症例発表ということで、20例ほどの症例を追ってみたところ、対象がマーカーを長期間に渡って測定しているものであったためか、重症例が多く、肺癌の予後の悪いことに驚きました。
 また保険点数の取り方についても肺癌のみをターゲットとした場合には、非特異的なマーカーによる転移巣の発見を目的とした検査では保険適応にならないといった点など様々な問題点があるのだと知りました。さらに院内で行われているレジデント講義に参加し、胸部外科の立場からみた肺癌への対応は、症状や画像診断が主で、腫瘍マーカーの“マ”の字すら出てこないことにも驚きました。
 次に“データの読み方”では、信州大学医療技術短期大学部の藤田清隆先生による“血漿蛋白”の貴重な講演は、血漿蛋白検査の基礎的なことから、希な症例報告にわたり、検査に携わっているものはもちろん、本には書いていない基礎的な疑問についてまで解説されていて、血漿蛋白の奥の深さにあらためて感心しました。
 ディスカッションも活発に行われ、会場も盛り上がり、一向に終わりそうにない雰囲気でした。また藤田先生がおっしゃっていた、血漿蛋白異常症の原因を解明することは、誤診から患者を守る有用性があるばかりでなく、未知の病態をとらえる可能性もあり、ルーチン検査だからこそ積極的にアプローチしていかなければならないという言葉が、十分に参加者にも伝わっていたと感じられました。
 ナイトセミナーでは“今求められている検査室像を語ろう”というテーマで、3人の演者によるクリティカルパス試行、TQM活動および青年海外協力隊体験談と様々な話題が盛り込まれていました。このテーマでは臨床化学に限られたものではなく、検査室レベルの視点から他の検査室の現状を知ることができ、また現実の厳しさを知る点でも、演者から発表内容以上の工夫や苦労が伝わってきました。
 ただナイトセミナーということで、場は和やかで、特に2年間トンガ王国で青年海外協力隊を体験された三木市民病院の藤木さんの発表はある意味、“未知の検査室を知る”ということになりますが、何よりも“トンガ王国ってどこにあるの?”からはじまり、トンガ人の生活習慣やお国柄などの話題を楽しく聞かせていただきました。
 ところどころ笑いもあり、いつのまにか“未知の国と人種を知る”ことに私の興味はすっかりかわっていました。
 二日目のテーマは、“データ保証”と“異常データから学ぶ”いわゆるシリーズものでした。
 “データ保証”では、そのニーズに答える“地域サーベイのあり方”、“ERMの問題点”および“検体検査管理加算と地域サーベイの課題について”といったそれぞれ違った角度からのアプローチでした。精度管理のノウハウを理解しそれらを利用することができたらと、毎回どこかしら傍観者な自分に恥ずかしい思いを抱きながらも、前向きな姿勢で取り組んでいこうという気持ちで聞いていました。
 “異常データから学ぶ”では今回新たに異常データの具体的な解析方法が加わり、そのプロセスに、臨床化学の面白さや醍醐味みたいなものを感じました。
 学会や研修会に参加すると得た知識を少しでも役立たせてと思うのですが、今回、充実した研修会だったとこの原稿を書くために資料を読み返す機会を得て感じると共に、他の参加者との接点が持て、このことが自己啓発につながり、日常業務に生かせることができればと思いました。