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奈臨技ニュース
平成23年 6月号
第205号 2011年 6月 1日

* 東日本大震災 奈良県医療救護班に参加して *


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 奈良県医療救護班第6班として奈良県より派遣依頼があり、4月8日〜12日の五日間、宮城県気仙沼市地区の医療救護に参加しました。

 私は臨床検査技師ですが医療班では事務員兼臨床検査技師という立場でありました。

 出発前日深夜、4月7日に大きな余震がありました。これは現地避難所の方に聞いた話しでは3月11日の大津波を発生させた地震よりも揺れが大きく本当に怖い思いをされたそうです。3月11日は浅い地層が震源で海を持ち上げ津波になりました。4月7日は震源が深く底からくる大きな揺れになったそうです。私も被災地に滞在する間、ゴーという地鳴りを数度経験しました。その後大きな揺れがやってきました。4月7日の余震では診療所となっている体育館の大型電球3個が落下(188名が非難している現場に。幸い負傷者はありませんでした)、周囲地面も亀裂や隆起が起こり、私たちが4月8日現地に入った際は岩手、宮城のほぼ全域が停電していました。 

 地区全域の停電とは、夜になると街灯、信号はもちろん住宅からもれる明かりも無い状態で明かりになれた現代人には大きなストレスとなり、心をより不安にさせるに至るものです。翌日には復旧しましたが僅か一日の停電でも、前もって被災地へ行くという準備があった私にですら大きな負担でした。突然の大地震、津波、ましてや着の身着のまま何もかもを失った方々の心中は察するにあまりあるものでした。

 断水については現在(5月中旬)もなお続く地区が多数存在すると聞いています。水が自由に使えないことは、今までの生活環境を一変させるものです。トイレに行っても流すことができない。当然、汚れます、匂いも強くなります。でもそこしかありません。でもなるべく行きたくありません。ましてや介助を必要とする方であればなおさらです。水の摂取を少なくしよう。それが脱水に繋がり、様々におよぶ悪循環へと繋がります。

 私たちの宿舎は被災地より65km離れていましたが着任当日は断水、停電でした。しかし奈良より運ばれたペットボトルの水が用意されており、顔を洗う、歯を磨く事は許されました。でもこれですら蛇口を開くことで出る水とは異なり、さて、顔を洗うにも、口をゆすぐにも片手にペットボトル、ではどうやって洗おうかと・・・。猫が顔を洗う仕草でしかありません。これが毎日、ましてや水がなければ。

感染症も水が使えるところと、使えないところでは明らかに発生率に差があると聞きました。当然の結果でしょう。

 診療所は3月19日に奈良医大より派遣された医療班により設営されたものでした。前日に被災地された先生方は19日午前8時に気仙沼地域の医療班(25チーム)ミーティングにて現診療所の唐桑地区の医療救護を指示され、唐沢地域ミーティングに参加されたのち午後1時には診療を開始されております。

発生当初の医療班のすごさ、ご苦労を感じずにはいられません。

 当医療班の現地での活動は、朝8時頃より診療を開始しています。いわゆるdo処方を希望される方が多く、他には花粉症の処方を希望される方が大半でした。往診にも積極的に応じられ朝早くから遅くまで走りまわる医師と看護師の姿もありました。唐沢地区には老人ホームや養護関連の施設も数所あり、現場の状況は想像を絶するものと聞きました。これらの施設は高台にあることが多く、幸い津波による被災はありません。でもそれを支えてきた人々が被災を受けたとのこと。今後誰が支えていくのか。このように支援のあり方についてはマスメディアでは伺い知れないことが多数ありました。

 4月11日、被災後ちょうど一ヶ月。避難所では大地震発生時間、14時46分にあわせ黙祷が行なわれました。私たちも時間の許す3名が参加しました。黙祷後、代表の女性の方が「心が苦しくなることもあるでしょう。そんなときは大きく深呼吸をしてあの日を忘れることなくみんなで頑張って行きましょう」とお話されました。すすり泣く声がありました。でも私が驚いたのは、居合わせた医師、看護師お二人とも声をこらえながら、震えながら号泣されていました。私には涙はありませんでした。これは個人的な感受性もあるでしょう。しかし、私が個人的に感じたものは、私たち臨床検査技師は普段、患者さんを正面から医療関係者として受け止める事はできているように思います。しかし、今回、医師や看護師と帯同して感じた事は、医師や看護師は患者さんの側面や背面にある家族関係等も含め全人的に見ている、診ている、観ている、看ていると痛感しました。これは今回の被災地医療のなかで日々に感じました。医師はスーッとお話を聞いています。看護師もスーッとお話を聞いています。すると被災された皆さんはスーッとお話を始められます。そして、切る、貼る、治す、薬を処方するという目に見える医療とは違う安らぎを感じ安堵される姿を何度も目にしました。被災地の皆さんはコミュニティーが良くみんな一緒だ、頑張ろうと。でも見方を変えると、迷惑をかけてはいけないと我慢している。みんな一緒だからと頑張りすぎて、吐き出すことが出来なくて、そんな場所すらなくて。それがここなんだと、そんな場所にするべきだと医師は話しておられました。

 私たちが日々、患者さんと病院でトラブルになるとき、患者さんの訴えをどれほど汲み取れているのか気になります。本当の訴えがどこにあるのかを理解できず、目の前の問題を解決しようとして、逆なでしてしまい大きなトラブルに発展してしまったこともあるように思います。

 次に、情報共有は重要です。我々が被災地に行くまでは、ほぼ情報は努力しないことには入手できない、できても僅かなものでした。そんな中、当院の医師が院内医療班のメーリングリスト(ML)を開設しました。それぞれの思いや情報を共有できました。その後、奈良県の医療救護班のMLも開設されました。これにより現地の生の情報、今後の医療班からの問いかけ、過去の医療班からのアドバイス等が行きかいました。これは大きなツールです。そしてこれは大きく支援内容を変えていくものとなりました。今後も必須となりえるものでしょう。

 では技師会としては何ができるのでしょうか。私は本当にまれなケースとして参加機会が与えられました。やはり現地には一部医療団体の活動以外、臨床検査技師の支援はほとんど無かったと思います。個人で出来ることは本当に僅かです。確かに阪神淡路大震災とは異なり、急性期はほんの一瞬で残るか残らないという津波による被害の現場です。慢性疾患に対する薬処方や心のケアが長期に渡り必要になっています。

しかし、臨床検査が不必要であるはずはありません。検査に対する必須必要教育をうけたものが検査に携わることは目に見える効果はなくとも長期になればなるほど必ず結果に違いが生じると感じています。正しい検査結果には感度、特異性、操作に左右される偽陽性、陰性等様々な要因があります。
これを、研修も受けないまま実施することが如何に危険を孕むことになるかは言うまでもありません。もし、間違いが起こっても日常とは違い、誤りに気づくチャンスはありません。感染症で陽性を陰性とした場合初期対応がその後に及ぼす影響を考えると、衛生状態も最悪の中どうなってしまうのでしょうか。

 我々に出来ることは、誰に指示されることなく、職能団体である以上自分達で考え行動をおこすことだと考えます。医師や看護師、薬剤師はDMATとなって災害当日、もしくは翌日に動き出します。被災地での活動は自分たちの仕事を短期間のうちに被災地の劣悪な環境で安定させ活動せねばなりません。他の職種のことまでかまっている余裕はありません。未曾有な震災をまえにしていつまでも待っていても何も始まりません。組織の大きさや現実問題として経費のことなどもあると思いますが、技師会が組織として動き被災地の医療ミーティングに参加して、ニーズを拾い上げることで自分たちの活動を構築していけば良いと思います。定点活動だけが必要ではありません。コンビニエンス検査、必要現場からの呼び出し検査でも良いと思います。

また、ひとりの臨床検査技師が「つぶやいた」ことで大きな支援に繋がった例もあります。それは、あるメーリングリストの中で、「何か出来ないだろうか」と一人の技師が声を上げました。すると各施設、企業等を巻き込む大きな渦となって臨床検査試薬、装置などのデバイスが無料支援という形で必要とされる被災地に届けられました。

私の今回準備した試薬等もこの支援によるものです。まずは誰かが声を出してみると、ひとりでは出来ない大きなことが成し遂げられることにも繋がります。

 急性期から慢性期へそしてリハビリテーション期へと被災地は変化してきている様子です。しかし、いずれの時期においてもそこに医療があるだけで被災地には大きな安心感を届けることが出来るように思います。量から質へと必要とされる支援が変化しても変わらぬ医療支援が今も被災地にはあります。今後、我々の近隣において大災害が起きる可能性はないとは言えません。今出来ることがなくても、もしものときに我々が稼動範囲にいたならば何が出来るか?考えてみること、ディスカッションしてみること、そんなことも、今の被災地支援に繋がる大切なことだと思います。

(文責 天理よろづ相談所病院 臨床病理部 嶋田昌司)


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** 平成23 年度日臨技全国研修会のご案内 **



【テーマ】

法的脳死判定に関する研修会
- 臓器移植法改正から1 年,その経過と今後の展望 -
【会 期】 平成23 年7 月9 日(土) 1 日間
【会 場】 学術総合センター 
〒101-0003 東京都千代田区一ツ橋2-1-2  TEL 03-4212-6000
【募集人員】 150 名(定員になり次第締め切らせて頂きます)
【受講料】 会員:無料(但し資料代2,000 円),非会員:12,000 円(資料代2,000 円含)
【申込締切】 平成23 年6 月15 日(水)
【申込先】 社団法人日本臨床衛生検査技師会  TEL 03-3768-4722  FAX 03-3768-6722
詳細および
申込書
こちらをクリックしてください
http://naraamt.or.jp/Academic/kensyuukai/2011/h23kensyuukai01.pdf
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** 近臨技 病理細胞検査部門研修会のご案内 **



【テーマ】

* 甲状腺を基礎から学ぶ *
【会 期】 平成23年8月27日(土) 13:00〜17:30
【会 場】 関西医科大学附属滝井病院(予定)
【内容】

・甲状腺ホルモンから腫瘍マーカーの基礎を学ぶ    ・症例検討会
・甲状腺超音波画像の見方について    ・甲状腺疾患の病理

【評価点】 専門教科 20点(日臨技会員証または各府県技師会会員証をお持ち下さい。)   
【受講料】 3,000円
【定 員】 100名(事前申し込み制) 先着順に受け付け、定員になり次第締め切ります。
【受付期間】 平成23年6月1日(月)〜6月30日(木)
【申し込み方法】 メールでの申し込み、または電話連絡後FAX可
【問い合わせ先】 兵庫県臨床検査研究所 検査部 川嶋雅也 
TEL:079-267-1251 FAX:079-267-1445
詳細および
申込書
こちらをクリックしてください
http://naraamt.or.jp/Academic/kensyuukai/annai/2011kinki_byouri.html
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生涯教育研修会のお知らせ


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尿試験紙法と全自動分析装置について  〔 専門-20 〕

講 師 :
櫻井 大路 氏 (シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス 株) 
池内 和代 会員(天理よろづ相談所病院)

日 時 :平成23年6月10日(金)18時30分〜20時30分
会 場 :天理よろづ相談所  入院棟南別館4階会議室

担 当 :検体検査分野(生涯教育研修:専門−20)
会 費 :無料(非会員:500円)   

【要旨】
尿試験紙法と全自動分析装置について取り上げました。尿一般検査の基礎的な研修会となりますので、初心者の方は特にご 参加ください。内容は、尿検査の基本と有用性(櫻井大路氏)、全自動尿中有形成分分析装置について(池内和代技師)です。

【問い合わせ先】
中村 彰宏(天理よろづ相談所病院)
Tel 0743-63-5611 (8665)  e-mail: nakamurium_a802@yahoo.co.jp
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超音波定期勉強会3〔 専門-20 〕
「頚動脈病変の画像について〜MRIと超音波〜」
 

講 師 :永井 直治 会員(天理よろづ相談所病院)

日 時 :平成23年6月27日(月)18時30分〜19時30分
会 場 :天理よろづ相談所病院 入院棟 地下会議室

担 当 :画像検査分野(生涯教育研修:専門−20)
会 費 :無料(非会員:500円)   

【要旨】
今回は、頚動脈病変をとりあげて、おもにMRIと超音波の画像を対比しながら解説していただきます。また、定例の症例検討会も予定しています。

【問い合わせ先】
松下 陽子(天理よろづ相談所病院) Tel 0743-63-5611 (8989)



組織切片薄切の基礎から〔 専門-20 〕

講 師 :安田 正利 会員 (天理よろづ相談所病院)

日 時 :平成23年6月23日(木)18時30分〜20時30分
会 場 :奈良県立医科大学 B棟3F 病理検査室

担 当 :病理検査分野(生涯教育研修:専門−20)
会 費 :無料(非会員:500円)   

【要旨】
病理組織標本を作製する工程上で重要な薄切を原理を含め基礎からもう一度勉強してみませんか。講義の後ミクロトームを使用し実技を予定しています。各自職場で薄切困難だったブロック(脂肪、骨等)を持参していただいても結構です。

【問い合わせ先】
辻野 秀夫 (奈良県立三室病院中央検査部)
Tel 0745-32-0505 (2256)   e-mail: yotsuji2@m5.kcn.ne.jp



脳神経勉強会 1 〔 専門-20 〕

講 師 :小林 昌弘 会員(天理よろづ相談所病院)

日 時 :平成23年6月24日(金)18時30分〜19時30分
会 場 :天理よろづ相談所病院 南別館2階 神経機能検査室

担 当 :神経検査分野(生涯教育研修:専門−20)
会 費 :無料(非会員:500円)

【要旨】
今回の定期勉強会は脳波検査におけるアーチファクトというテーマで、検査中に混入する種々のアーチファクトの種類やその見分け方、対処法について考えていきたいと思います。初心者向けの勉強会ですのでお気軽にご参加ください。

【問い合わせ先】
小林 昌弘(天理よろづ相談所病院) Tel 0743-63-5661 (8923)



きれいにとれる呼吸機能検査(VC・FVC中心に)  〔 専門-20 〕

講 師 :北川 実美 会員(天理よろづ相談所病院)

日 時 :平成23年7月8日(金)18時30分〜20時00分
会 場 :天理よろづ相談所病院 本館(入院棟)3階 第3討議室

担 当 :機能検査分野(生涯教育研修:専門−20)
会 費 :無料(非会員:500円)   

【要旨】
呼吸機能検査は、検者と患者様とのコミュニケ-ション・意思の疎通が重要ですが、検査するにあたっての患者様への説明方法、誘導の仕方、良いデータをとるためのコツなどについて講義していただく予定です。質疑応答の時間もありますので、日常でスパイロ検査をしていて疑問に思うことや知りたいことがあれば質問をして頂ければと思います。初心者の方これから担当される方にもお勧めの講義です。

【問い合わせ先】
井田 淳(天理市立病院)
Tel 0743-63-1821 (120)   e-mail: tenriharupapa@yahoo.co.jp






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平成23年度奈良県臨床衛生検査技師会精度管理調査のご案内

今年度も臨床検査の精度管理の向上を目指し、精度管理調査を実施致します。 積極的にご参加頂きますようお願い致します。
今年度より新たに生理部門も設けました。また、臨床化学、血液の一部項目において評価判定対象となります。

こちらの平成23年度精度管理調査をご覧ください
(クリックしてください)
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奈臨技行事予定(4月)


6月

行事(略)

担当

6月

行事(略)

担当

1

 

 

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17

 

 

3

 

 

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4

 

 

19

 

 

5

 

 

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6

 

 

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7

 

 

22

 

 

8

 

 

23

組織切片薄切の基礎から

病理検査

9

第2回理事会

 

24

脳神経勉強会1

神経検査

10

期外収縮を知ろう
/尿試験紙法と全自動分析・・・

機能
/一般

25

 

 

11

 

 

26

 

 

12

 

 

27

超音波定期勉強会3

画像検査

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14

 

 

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15

 

 

30

 

 

行事参加前には当ホームページで変更の有無をご確認下さい。


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 6月です。先月号からの“ことば”つながりということで…。陰暦の6月のことを水無月(みなづき)と云いますが、この『みなづき』の“な”は本来“の”の意味で、水の月(田に水を引く月)の意なのです。

 このように私達の身の周りには、本来の語源の意味と勘違いして使用してしまっている言葉やその意味自体が全く違うものに変化してしまっている言葉がたくさんあります。言葉は人々の生活と共に“生きて”いるからなのでしょう。一度調べてみると結構楽しめそうです。

 さてさて、カレンダーを見ると連休がありません…6月は『祝日が無い月』なんですね。皆さんお仕事・研究・いろいろと頑張りましょう。                                     

広報一同 



携帯ホームページ始めました!


奈臨技IT委員会

日頃は、奈臨技ホームページにアクセスいただき、ありがとうございます。奈臨技IT委員会です。

昨今は、携帯電話が普及し、携帯電話で情報を得るというかたが増えてまいりました。また、会員のみなさまから、「携帯のホームページはないの?」や「今日の研修会の会場や時間は携帯から見ることはできないの?」などのお声をいただいており、IT委員会でも、携帯電話から気軽にアクセス出来るページを以前から作製したいと考えておりましたが、延び延びになっておりました。

このたび、まずは生涯教育研修会の情報を中心に、携帯電話用ホームページを作製いたしましたので、一度アクセスしていただけますようお願いいたします。              

HPアドレスは、
http://naraamt.or.jp/mobile/index.html です。

また、右のQRコードからもアクセスできますので、ぜひ、ご利用下さい。よろしくお願い申し上げます。



* 奈臨技IT委員会からのお願い *

 奈臨技ホームページを、ご覧頂き有り難うございます。当委員会ではコンテンツ充実に、日ごろ心掛けておりますが、学術資料の更なる充実を図るため、論文、勉強会資料、推薦論文とその要旨などの投稿をお待ちしております。さらに、学術リンク集の掲載に向け、おすすめホームページの調査も行っております。ご協力をお願い致します。

また、奈臨技ホームページの更新状況などをお知らせする、奈臨技メーリングリストサービスも行っております。ご希望の方は、「配信希望」とお書きになり、下記メールアドレスか、TEL/FAXにてお申し込みください(メールアドレスなど個人情報は厳重に管理いたします)。

奈臨技IT委員会

連絡先 大林 準 (天理医学研究所)
(申し訳ありませんが、FAXか電子メールにてお願い申し上げます) 
FAX 0743-63-5611    E-mail: info@naraamt.or.jp




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