心筋虚血、心筋梗塞を知ろう〔 専門-20 〕

講 師 ：中上　千尋　会員（近畿大学医学部奈良病院）

日 時 ： 平成24年1月13日（火） 18時30分〜20時00分　
会 場 ：橿原友紘会　大和橿原病院（旧　平井病院）　第２会議室

担 当 ：機能検査分野（生涯教育研修：専門−20）
会 費 ：無料（非会員：500円）　 　 　

【要旨】
心臓の筋肉への血液供給が減ったり途絶える事を心筋虚血といいます。
狭心症や心筋梗塞は、栄養や酸素を送る冠動脈が動脈硬化などで狭くなったり、完全に詰まる事によって心筋に虚血を引き起こし壊死に陥いることなどで、胸痛などの症状が出現したりします。
心電図を見ると心筋虚血時には特徴的な変化が現れます。
今回は、この心電図波形について説明していただく予定です。
多数の参加お待ちしております。普段から疑問に思っていることがあれば質問してください。

【問い合わせ先】　
井田　淳（天理市立病院） Tel 0743-63-1821  (120)

≪　症例紹介　≫

[主訴]

39℃台の発熱、呼吸苦

[検査所見]

. ＜末梢血液および生化学検査＞ WBC：7.7×103/μdL、Hb：10.8g/dL、PLT：19.7×104/μL、PT：13.9sec、CRP：41.7 mg/dL、UN：53.1 mg/dL、 Cr：2.7 mg/dL、UA：11.3 mg/dL、Glu：109 mg/dL、TP：6.9 g/dL、Alb：3.4 g/dL、Glob：3.5 g/dL、LD：239 U/L、 AST：40 U/L、ALT：20 U/L、T-Bil：1.2 mg/dL、ALP：311 U/L、Amy：40 U/L、CK：673 U/L、 Na：129mmol/L、K：4.2 mmol/L、Cl：94 mmol/L ＜血液ガス＞ pH：7.483、PaO2：56.1mmHg、PaCO2：24.6mmHg、HCO3-：18.0mmol/L、BE：-4.2mmol/L ＜胸部X線所見＞ 左上肺野に浸潤影を認める。 ＜腹部エコー＞ 腎臓および肝臓特記すべき所見なし。 ＜微生物検査＞ 喀痰：M&J分類 P3 、Geckler分類：5 グラム染色所見：有意な細菌は認めず。（下図） 抗酸菌：培養および鏡見陰性、血培：陰性、尿中肺炎球菌抗原：陰性、尿中レジオネラ抗原：陰性、レジオネラPCR：陽性、血清型：4 .

[考察]

本症例はCRP高値、胸部X線所見および低酸素血症より、細菌性肺炎の治療目的で入院となった症例である。 喀痰グラム染色塗抹鏡見上は有意な菌は認められなかった。本症例は高度の発熱および胸部X線所見にて浸潤影も認めることより、 レジオネラ菌も疑い尿中抗原およびレジオネラPCR検査を行ったところ、PCRのみ陽性であった。Legionella pneumophilaは血清 型別に区別すると15の型に分けられ、本症例は血清型4であった。尿中抗原キットでは血清型1のみ検出可能なため、本症例での 検出は困難であった。 レジオネラ肺炎の血清型別頻度は血清型1が約60％で、約40％がその他の血清型およびLegionella spであると言われている。 本症例は初期治療にレジオネラ菌も考慮しLVFXが処方され、3日後には解熱し、6日後にはCRPおよびCrも基準範囲内にまで低下し、 良好な経過をとった。レジオネラ肺炎における急性腎不全の原因は横紋筋融解による腎不全が知られているが、本症例ではCK 673U/L であり横紋筋融解を疑う所見も少なく精査は行われなかったため原因は不明である。 レジオネラ肺炎の生化学所見は一般的にCRP高値、CK高値およびNa低値をとることが多く本症例にも認められた。 現在、尿中抗原キットの開発によりレジオネラ菌の検出は比較的容易となったが、本キットの検出限界も踏まえ判断が必要な症例で あった。　　　　　　　　　　　 （文責　天理よろづ相談所病院　潮崎 裕也）