今回は「認定超音波検査士」の紹介をさせていただきます。第一回の試験は1985年に行われており、近年では2000名近くが一度に受験する大きな試験です。比較的広く知られている認定資格かと思いますが、これから取得を考えている方々に少しでも有益な情報が提供できれば幸いかと思います。
まず、一言に認定超音波検査士と言っても多くの臨床領域に分かれており、現在では「循環器」、「消化器」、「体表臓器」、「血管」、「泌尿器」、「婦人科」、「健診」の7つの領域があります。奈良県内でも循環器:67名、消化器:105名、体表臓器:37名、血管:26名、泌尿器:25名、婦人科:6名、健診:14名と多くの認定超音波検査士の方がおられます。年に一度行われる試験で一つの領域のみ受験可能で、私は現在まで消化器→血管→泌尿器の順で3年連続受験し、いずれもなんとか合格をいただいておりますが、当院には7つ全ての認定を持つ技師もおり、ただただ尊敬するばかりです。
次に実際の試験についてですが、受験資格は1)日本国の看護師,准看護師,臨床検査技師,診療放射線技師のいずれかの免許を有すること。2)20xx年12月31日以前に入会し,3年以上継続して,本会の正会員もしくは準会員,または日本超音波検査学会の会員であること。3)本会認定超音波専門医の推薦が得られること。の3つを全て満たす者となります。以上を満たし申請書類を取り寄せ、必要な書類を送るのですが、この時に「20症例の画像付き抄録」の提出が求められます。本試験の前にこの抄録で実績を評価されることになりますが、今まで受験した経験では、この20症例がもっとも高いハードルの様に思います。症例の内容は領域ごとに指定されており、その条件を満たす症例を過去に検査した中から選び、超音波所見および超音波診断を記載します。次に他の画像検査、血液検査、その他カルテの情報を元に臨床との対比や診断に至る経緯などを調べ、最終診断を記載します。最後に超音波検査のキー画像を貼り付けその画像のシェーマを手書きして完成となりますが、この20症例すべての抄録に推薦していただく先生(超音波専門医)の確認、サインが必要となります。
当施設ではパソコン端末上で報告書を作成しており、超音波画像もサーバーに保存されています。そのため、比較的過去の症例を検索しやすい環境にあると思いますが、それでも20症例を集め、一つ一つ調べていく作業は根気が必要で、毎年締め切りギリギリになってしまいます。また、抄録に記載する用語も超音波医学会が発刊する超音波用語集に則り記載することが必要であり、施設独自の用語や略語には注意しなければいけません。しかし、それぞれの症例を調べていくことで、超音波の検査所見に対する知識を深めるだけでなく、病態や治療に関しても勉強する良い機会となります。
20症例の画像付き抄録および必要書類の提出、受験料(20,000円)の振り込みが完了し、不備がなければ受験票が届きます。本試験は毎年2月に行われ、「基礎」と選択した「臨床領域」それぞれ35問が、マークシートにて五者択一もしくは五者“択二”の形式で出題されます。近年は2つの解を選ぶ問題の割合が増えている傾向にあるので、回答にかける時間などにも注意が必要と感じました。
「基礎」は学生時代に習ったような、音の性質や、超音波装置の構成、アーチファクト出現の原理など、普段の検査ではあまり意識しないような内容も出題されます。私も学生時代の知識などほとんど頭の中に残っておらず、勉強も手探り状態でしたが、U-S-Academyが主催する勉強会を受講することで知識の整理ができました。この基礎領域の勉強会は上記のもの以外にも複数開催されていますので、一度は受講をお勧めします。また、超音波検査学会からは2012年に特別号として、「超音波基礎技術テキスト」という冊子が刊行されています。こちらは問題集も付属しており、非常に参考になりました。臨床領域では解剖などの基本的な部分から、病気の病態や分類、診断に必要な知識など幅広い問題が出題されます。私は20症例の抄録で得た知識をもとに、はじめは過去問から知識を広げていきましたが、本番では聞いたことのない病名が出てくる問題もあり、諸々の参考書などで幅広く勉強する必要があると思いました。
試験の流れは以上です。この試験の平均合格率は70%程度だそうで、クリアすれば晴れて超音波検査士として認定され、認定証が交付(認定料5,000円が必要)されます。資格の有効期限は5年とされており、5年ごとの更新手続きが必要となります。更新には関連学会や研修会へ参加することでそれぞれ設定された単位を取得することができ、25単位以上で更新することができます。私はまだ更新期限に達しておりませんが、複数の領域で認定を取得したものは初回の資格取得から5年での更新となります。学会への参加や発表を行い、常に新しい知識や技術に関心を持ち、向上心を持つ必要があるという事だと思います。
以上、私のつたない経験や感想を交えた認定超音波検査士取得までの流れでした。当院では超音波検査士を取得したからと言って給料に反映される事はありませんが、自分が超音波検査に関してこれだけの知識、技術があるという証明にはなると思います。認定資格の取得を目標とすることで、必ず自らのステップアップに繋がると思いますので、皆様も取得を目指してみてはいかがでしょうか。