8月6〜7日、福岡国際会議場にて第17回日本検査血液学会学術集会が開催されました。今回は「先端技術が変える血液検査の未来」をメインテーマとし、最先端の話題、トピックスが挙げられていました。
大会長講演は、九州大学医学研究院の赤司浩一先生より「幹細胞コンセプト導入による造血器腫瘍根治への挑戦」というテーマでした。がん幹細胞(長期にわたり分裂して腫瘍組織を形成できる細胞)を純化し、細胞特性を明らかにし、効率よく根絶するための研究が近年注目されており、造血器系においても急性骨髄性白血病の白血病幹細胞を免疫不全マウスに移植すればマウスは発症するが、白血病幹細胞以外の細胞を移植しても発症しないことを例に挙げ、この事実から患者体内の白血病幹細胞を標的として根絶やしにすれば鮮やかな治療効果が得られるはずということでした。白血病幹細胞の成立機序、根絶のための研究開発の現状、臨床検査血液学の将来展望について、問題点として骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍、骨髄腫などに関しては未だがん幹細胞自体が同定されておらず、さらなる研究手法の改良が必要であること等、わかりやすい講演でした。
特別公演は唐津東松浦医師会医療センターの原田実根先生より「今は昔、造血幹細胞移植の温故知新」というテーマで同種骨髄移植の歴史と展望を、また、九州大学先端医療イノベーションセンターの水野晋一先生より、「遺伝子診断の最先端 ゲノミクスの進歩と個別化医療」というテーマでゲノミクス分野の進歩に伴う個別化医療とこれからの展望について、さらには急速に発展しているがん免疫療法における個別化免疫療法の可能性についての講演でした。
他にも、造血器腫瘍WHO分類新版の概要と変更点について、近年注目されている血球計数装置による体腔液測定の解析について、血液形態と病理の接点について、九州に関連深い成人T細胞性白血病について等、沢山の興味深いプログラムがあり、多忙な2日間でした。おかげで観光はほとんどできず心残りではありましたが、帰路の途中、博多駅で博多ラーメンと明太子はクリアできたので良かったです。今回、参加されたみなさん、お疲れ様でした。また来年の札幌に向け頑張っていきましょう。行かれてない方、ケースカンファレンスに使われた症例のスライドがホームページに掲載されているので見れば勉強になりますよ〜。