PAS染色の検討
○田邊雅世 音羽裕子 福井義雅 三谷弘美 西川武 池寛子
(奈良県立医科大学付属病院病院病理部)
はじめに
特殊染色を行うにあたって,目的,反応原理を熟知し,手技を一定にし染色を行う事が安定した染色結果を得ることにつながると考えられるが,実際には,個人差,環境条件など様々な要因がそれをさまたげる事を経験する.そこで今回我々は,PAS染色においてその要因を様々な条件で検討を行った結果,若干の知見を得たので報告する.
方法
ほぼ正常と考えられた腎生検を用い,PAS染色手技のうち,染色性に影響をおよぼすと考えられるステップにつき
1,過ヨウ素酸・シッフ試薬での反応温度
2,シッフ試薬での反応を密閉状態と解放状態で染色したもの
3,流水水洗での色出しをホルマリン原液で代用し,10秒間発色させ,後に軽く流水水洗したもの
以上を比較した.なお,シッフ試薬は切片に直接滴下し,反応を行った.
結果
1:過ヨウ素酸における温度を上昇することにより良好な結果が得られ,冷蔵においては,いずれも発色がにぶかった.
2:シッフにおける反応は密閉状態で行ったほうが染色性が良好であった.
3:シッフ試薬においては,冷蔵,37℃共に発色がにぶく,室温において良好な結果が得られた.
4:流水水洗を割愛し,ホルマリンで色だしを行った結果,良好な染色結果が得られた.
結語
過ヨウ素酸における反応温度の上昇と,シッフ試薬の温度を室温に戻すことにより,良好なPAS染色の結果が得られた.シッフ試薬での反応は密閉状態で行ったほうが染色性が良好であった.亜硫酸以後の色出しをホルマリンによって代用することは発色不良を回避する一つの方法であると考えられた.
連絡先
奈良県立医科大学付属病院病院病理部
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