脳波検査で周期性同期生放電(PSD)を認めた一症例の経過について
○吉田秀子,幸道,増谷喬之,岡本康幸 (奈良医大 中検)
西脇知永,降矢芳子,上野聡 (奈良医大 神経内科)
【はじめに】
周期性同期性放電(PSD)は,一般にクロイッツフェルト・ヤコブ病(CJD)や亜急性硬化性脳炎(SSPE)に特徴的な脳波所見として知られている.今回我々は,脳波でPSDを認めたが臨床経過ではCJDやSSPEを示唆する所見が得られにくかった一症例を経験したので報告する.
【症例】
76歳女性
平成13年10月29日に感冒症状が出現し,11月1日頃より不随意連動,歩行障害,痴呆,痙攣発作が出現した.当院受診時は,痙攣重積状態であり痙攣発作はミオクローヌス発作と硬直発作であつた.
【脳波所見】
平成13年11月22日
周期的に棘波や鋭波が出現し,周期性一側てんかん形発射(PLEDs)又はPSD様波形が認められる.基礎律動は8Hz60μVで,光刺激への反応はなかった.検査時に硬直発作と手足の軽いピクつき程度の動きが認められた.
平成13年11月30目
周期的な全般性高振幅鋭波が1〜1.5秒間隔で出現し,PSDが明瞭となった.
平成13年12月12日
1〜1.5秒間隔のPSDがみられ,PSD消失時には,最大1分20秒持続するslowαやθ波の基礎律動があった.PSDに同期してミオクローヌスが出現した.
平成13年12月27日
1秒以内間隔のPSDが見られた.アレビアチン静注にて,PSDは一時消失し,その間δ波やθ波が出現したが,完全には抑制されず再びPSDが出現した.背景脳波が低振幅化してきた.
平成14年1月15日
1秒間隔のPSDが見られ,PSD消失時には最大20秒間持続するθ-δ波の基礎律動が認められた.
【他の検査所見】
脳MRI:右頭頂葉皮質の著明な萎縮
脳造影CT:両側前頭葉及ぴ右頭頂葉白質にlow density area
脳血流SPECT:両側前頭葉を中心とした血流低下
【考察】
本症例では,脳波検査においてPSDが認められたが,他の検査においてCJDやSSPEを示唆する所見は得られ難かった.しかしこのような例でもPSDの所見が得られた時点でCJDに対する感染予防対策を講じておく必要があると考えられる.
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