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第22回奈良県医学検査学会

平成17年4月17日(日) 於)奈良県社会福祉総合センタ− 5階研修室

I.一般演題
司会 丹羽欣正、倉本哲央
1.ウイルス・免疫検査分野活動報告 
山口 正悟 ウイルス検査 免疫検査分野
2.生化学項目の反応タイムコースと測定値
猪田 猛久  天理よろづ相談所病院 臨床病理部
3.最近注目されているPSGの実際について
千崎 香  天理市立病院 臨床検査室
4.急性赤白血病(M6b)の2症例
大井 智子 高の原中央病院
5.後天性第VIII因子欠乏症の1症例
西本 孝則 国保中央病院 中央検査室
6.当院における輸血副作用報告状況
川越 善子 県立奈良病院 中央臨床検査部
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II.パネルディスカッション
テーマ「臨床検査技師が今抱える問題点を考える」
司会 高部 弘司、今田 周二
1.会員が抱える問題 ー総合管理部門アンケートよりー
三谷 典映  奈良県立医科大学附属病院
2.アウトソージングをどう考える
高嶋 徹 公立山城病院
3.検査室の現状と課題
杉村 宗典  済生会奈良病院
4.仕事への誇り、遣り甲斐 ー私の仕事ー
安田 匡文  阪奈中央病院 臨床検査科
5.院内受託検査室勤務技師の現状と業務意識を探る
近藤 正巳 (株)ビー・エム・エル 近畿大学医学部奈良病院 臨床検査部
6.危機的状況下から脱皮した検査室
中矢 洋一  南松山病院 検査室
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III.ランチョンセミナー  
司会  山本慶和
臨床検査の価値のアピール
松尾 久昭  デイドベーリング株式会社
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第22回奈良県医学検査学会を振り返って

学術部  丹羽 欣正  

昭和59年に奈良県臨床衛生検査学会として出発したこの学会も、今年度をもって22回の年月を積み重ねたこととなります。 第1回から第19回までプログラムの内容は一般演題のみで、午前中の半日で学会と奈良県臨床衛生検査技師会総会が開催されてきました。 

本学会は、初期から地方学会あるいは全国学会への登竜門として、また新人の度胸試しの場として、多数の会員を育て上げてきました。 しかしながら、最近の参加演題数は年々少なくなり、自発的な発表はほとんど無に等しい状況に陥っていたと言っても過言では有りません。 これでは、本来のこの学会が担っている使命が果たせないのではないかということから、折良く平成14年から新設されました検査研究部門運営委員会(従来の部門別研究班を改編し、その運営を担当する)が一番最初の事業として、「奈良県医学検査学会のありかた」について根本から検討することとなりました。 

検討期間に2年を要しましたが、その間の学会はシンポジウム(第20回)、パネルディスカッション(第21回)で経過措置をとりながら、まずは学会の内容を豊富にする(ランチョンセミナーを設けて午後まで学会開催を可能とした。)ことと、一般演題を出しやすくする工夫に着手し、各部門・分野が協力して応援する体制と地区理事による応援体制を完備することにしました。 その結果が今回の第22回奈良県医学検査学会となって現れたわけですが、いくらかの課題は次回に持ち越しとなりましたが、概ね成功裡に終わったものと考えます。

まとめ

一般演題

計画時の予想通り幅広い分野からの研究発表が得られ、学会参加者の増加につながった点では満足できる内容であったと考えます。 発表内容も興味のある問題に触れたものが多く、質議討論にも熱が入っていました。 今後、検査研究部門指定演題および地区指定演題を定着させて、発表分野のバランスと全体のレベルを保たせるとともに、自主的な申し込み発表増加への起爆剤の役目を持たせるためには、部門運営委員会が常に本学会運営の中枢部として機能していくことが必要であることを再確認しました。

一方、分野の幅が広くなればなるほど司会が大変であり、今回はどうにかクリアーできたものの、今後はどの様な局面にでも対応可能な司会者の育成が急務と思われました。

パネルディスカッションは「臨床検査技師が今抱える問題点を考える」と題し、臨床検査技師が抱える問題を考えてみよう、特に中小病院の実情をしっかり論議して欲しいとの意見を元に、演者には、奈良県立医科大学付属病院の三谷典映氏は奈臨技会員のへのアンケート結果より、30,40歳代の会員がやりがいを感じていない回答が多く、その原因は業務の単調性を上げ、機械化された業務に興味、技術を発揮する機会がなくなって来た背景があると思われるとした。将来の不安に対してどういう努力が必要かの問には、専門知識のレベルアップ、臨床側に必要とされる検査室つくり、検査室の必要性のアピール、臨床側とのコミュニケーションをとりチーム医療・診療支援を進める必要があるなどの意見があったと報告した。次に、地域に密着し、住民に頼られる病院,検査室を構築したいと強い意識について述べていただいた公立山城病院の高嶋徹氏、次に若い会員として済生会奈良病院の杉村宗典氏は業務内容に即した各種認定資格の取得、学会発表など知識の向上が課題であると述べた。次に技師長の立場から阪奈中央病院の安田匡文氏は検査室を認知してもらうには、各部署とのコミュニケーション、積極的に会議に参加を上げ、信頼される検査室を作るには、技師の知識・技術を高めることと医師、経営者とのコミュニケーションが重要だと述べた。最後に院内受託検査室としてBML 近畿大学医学部奈良病院の近藤正巳氏は、コスト削減のみを目的とした受託は大きな問題を生じる。いかにして、良質な医療が適正に提供しうるかが課題であるとした。次に中矢洋一氏(南松山病院)には危機的状況であった検査室の再建の経験について発表していただいた。10数年前、中矢氏が赴任された当時は検査センターから2名が派遣された状況で、検査室は危機的な状況であった。そこから院内検査に移行し、院内で検査を実施することは診療(患者)に対してメリットがあり、かつ収支でも採算性があることを病院側に説明し、現在8名のスタッフの検査室を構築された。時には外注検査価格を検査センターに対して安値ばかりでなく適正価格(値上げ)にするよう、検査室、検査センターの棲み分けにも配慮されてきた。検査室の存在を病院内外に提示し「検査室の健全運営」ができていることをアピールしてきたとしています。また、「患者様のための検査」をモットーに日々努力していることを報告していただいた。

「臨床検査技師が今抱える問題点を考える」をテーマに、パネリストの検査技師6名とフロアの検査技師諸氏による活発な討論がおこなわれた。

ランチョンセミナーは、臨床検査の価値のアピールと題してディドベーリング(株)の松尾久昭氏は患者に最適の医療を提供するために行動する検査室を目に見える形でアピールしてはどうか。顔の見える検査室を確立することは、今や検査室の生き残りではなく、病院自体の生き残りの大きな戦力なるものと考えると強調した。

現在、臨床検査医学の分野は、かつての職人的分析技術から、最新の高度な電子、情報、光学および遺伝子などの各種分析技術の応用へと大きく変化を遂げてきています。 また、この変化に対応していくために、国家資格である臨床検査技師の教育も、専門学校、医療短大(3年制)から大学医学部保健学科(4年制)、そして大学院制度へと高度化が図られています。 皆様の健康を守り、的確な診断、治療のためのデータを提供する臨床検査技師の重要性は、ますます増大してきております。

しかし、逆行するように医療費抑制政策による病院経営変革の波は、臨床検査部門へも大きく影響を及ぼしてきました。関連法規上も医療事務、給食、洗濯等の業務同様に臨床検査も外部委託可能となっています。その結果、病院内での臨床検査室は、その施設の規模や機能に合わせて、検査項目の選別、検査技師数の削減等が行なわれてきております。今後の包括医療制度への移行推進とともに、また、多くの新たな臨床検査施策の必要性が生じてくるでしょう。

現在、臨床検査には、数千にもおよぶ多くの項目があります。したがいまして、病院内検査室だけで、すべての検査実施は不可能でありますし、機能的でもありません。 検査センターへの委託検査はなくてはならないものであり、これからも共存共栄でなければなりません。 そこで、その病院の職員である臨床検査技師がどう選択するか、専門家たる力量が問われるところです。 検査の知識、技術の向上とともに、病院経営および医療制度改革への関わりも重要な問題となっています。 そこで忘れてはならないのが、臨床検査技師をめざしたものにとって、医療への貢献が第一義であるということです。 さらなる医療内容の充実を図っていきたいという思いをもつことは当然といえます。 昨今のチーム医療(栄養管理、感染対策、糖尿病療養指導等)への臨床検査技師の積極的な参画もその流れに沿ったものといえます。 さらに、今後の臨床検査発展のための研究開発も重要であり、専門特化した認定資格取得も質の向上へつながるものであります。

社会体制の現実からの制約と職業意識、目的の実現という大きなうねりの狭間で、未来に向けて今の検査技師がどう行動していくべきか。 本パネルディスカッションにおいて、各施設および技師個人単位で、試行錯誤が繰り返されていることを伺い知ることができました。 医療の中では、極めて重要な役割を果たしている臨床検査でありますが、多くの課題を抱えているのも臨床検査です。 臨床検査、臨床検査技師に関して、皆様のご理解を賜り、より多くの場面で活躍している臨床検査技師に、ご支援のほどをお願い申し上げます。


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