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学術論文
検査予約からデータ管理まで一括した超音波システムの構築

岡山幸成  天理よろづ相談所病院 臨床病理部

はじめに
 近年、コンピューターの記憶媒体の増加に伴い、画像情報の電子保存などが可能となり、検体検査のみならず生理検査においてもシステムが導入されつつある。当院の腹部超音波検査の件数は年間約24000件で年々増加傾向にあり、その上撮像した超音波画像の管理も手作業で行ってきた。また、検査予約も事務員がノートに記載して行っており、煩雑でかつかなりの労力と保存スペースが必要となってきている。
そこで今回、超音波検査予約システムと画像ファイリングシステムを構築したので報告する。

【目的】
システム導入にあたり、
1) 検査予約業務のコンピューター化を行い、予約業務に関するトラブルを少なくする。
2) 予約業務や所見用紙の準備などの事務作業を軽減する。
3) 画像の電子化とデータ管理をすることで、画像の長期保存と保存スペースの縮小をはかる。
4) ポラロイド写真による保存をやめコストの削減をはかる。
5) 検査の質を向上させるために電子画像を利用する。
ことなどを目的とした。

【システム構成】
ハードウエアおよび構成を図1に示した。Windows NT Server 1台、Windows NT Workstation 3台、画像入力端末5台、プリンター2台、RAIDディスク装置(100GB)1台、バックアップ用DVD-RAMディスクドライブ装置1台をLANで接続し、同時に医事および内視鏡システムとも接続した。
ソフトウエアはMicrosoft 社のWindows NT Ver.4.0、Access 97、Visual Basic Ver.6.0を用いて開発した。




図1.システム構成図


【検査予約システム】
 検査予約システムは、できるだけ少ないステップで従来のノート形式に近いような方法で行えるようにした。検査予約システムには、
1) 医事システムより患者属性の取得
2) 予約登録,追加変更
3) 予約用紙の自動出力
4) カルテ借用、予約確認リストの出力
などの機能を持たせた。
図2に示した検査予約登録画面に患者ID、依頼元、依頼医師、依頼項目などを入力し、予約日時をクリックすると医事システムより患者属性を取得し、自動的に検査の前処置と検査日時が記載された予約用紙が出力される。なお、予約状況は色表示し、赤色は予約オーバー、白、青色はまだ予約可能であることをあらわし、一目で予約状況がわかるようにした。



図2.検査予約登録画面


【ファイリングシステム】
画像入力端末に患者IDを入力後に検査を施行し、終了キーを押すと、検査所見用紙が自動出力するようにした。同時に、医事システムにコスト請求情報を転送できるようにした。
画像ファイリングシステムには、
1) 超音波画像の電子保存
2) 検査番号の自動割付
3) 所見用紙自動出力
4) 医事システムへのコスト送信
5) 超音波診断の入力
6) 種々の条件による画像検索・モニター
 などの機能を持たせた。
画像の記憶容量は1画像あたり50KBで、約8年間の画像をハードディスクに保存でき、超音波診断も併せてDVDにバックアップするようにした。

【効果】
この予約システムにより、
1) 予約時間が今までの半分近く削減できた。
2) 検査予約の重複や検査日時の間違いがなくなった。
3) 検査予約状況が容易に把握できるようになった。
4) 所見用紙の準備にかかる時間が削減できた。
5) 超音波画像保存をポラロイド写真から、ペーパーにすることで、コストは約1/10に削減できた。
6) 超音波画像を教育用、研究用に活用できる。
などの効果があった。

【課題】
 検査システムを構築するにあたり、検査の流れをシステムに合わせるのではなく、随時変更、追加してよりよいものにできる環境を整えておくことが重要と思われる。当システムはソースプログラムが提供されており、今後、
1)検査レポートシステムの構築
2)検体検査データのモニター
3)教育用画像データベースの構築
などやシステムの変更を自主開発して、利用価値の高いシステムにしていく予定である。

【結語】
検査予約からデータ管理までをシステム化することで、事務作業、コストを削減することができた。画像を有効に活用でき、検査の質の向上につながることが期待される。今後、追加変更などが可能であり、拡張性のあるシステムが構築できた。

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