この連携のトレンドもと各医療機関は、ネットワークを高度に活用した新しい仕組み造りに注力している。
臨床検査についても、ネットワークを活用した効率化、低コスト化への取り組みがなされており、特に患者負担の軽減といった観点からニアペイシェントテスト(POCT)が注目されつつある。弊社はこの流れに着目し、POCTにふさわしい新型血球計数装置を開発した。本稿ではその開発のコンセプトを紹介し、それが如何に使用されるべきか、どのように医療に貢献出来るかを述べてみたい。
2.「pocH-100i」の開発コンセプト
このたびシスメックス(株)では、POC市場(ICU、CCU、NICU、周産期センター、手術室、病棟、外来、透析センター、救命救急センター、および開業医・クリニックなど)を対象としたPOC向け検査装置「pocH-100i」を開発した。
この商品の最大のコンセプトは従来の検査室向け検査装置の概念を捨て、「どこでもだれでも、簡単、安心、便利を診断・診療の現場にお届けできる」ということである。
言い換えると検査結果を大量生産する検査室用検査装置とは異なり、次の項目を満たすことが一般的にPOC検査装置の条件であり、本装置で実現させた項目である。
1.軽量・小型な装置であること。(使用場所を問わない)
2.微量全血であること。
3.メンテナンスは(殆ど)不要であること。
4.試薬は室温保存できること。(即時検査が可能)
5.検査の専門家以外のスタッフでも簡単に使用できること。
6.検査室(ラボ)内の検査データ、もしくは外注先のデータやグループ医療施設とのデータに相関が得られること。
7.ネットワーク対応が可能であること。
ではこのコンセプトを具現化させたpocH-100iはどのように医療現場にとけ込んでいくのかを考えてみたい。特に本装置は、病院内の手術室やICU・CCU、または検査技師を持たない開業医やクリニックなどにおいて役割期待があると考えている。
開業医やクリニックでは、pocH-100iにパソコンを接続させ、ネットワークを通じて精度管理データや検査装置の状態などを直接メーカーが監視したり、試薬・消耗品の発注や修理コールがパソコンのキー操作で行えるようになれば、検査行為やメンテナンスに人手を掛けずにスピーディーに患者サービス向上に寄与できる。
また、簡便操作な検査装置であれば治療現場である手術室や救急治療室に設置されても、医師や看護士などの検査技師以外の方でも検査結果を出すことができる。
患者をICUや病棟へ移した後、pocH-100iをワゴンなどに載せて移動させ患者の傍で血液検査を行うこともできる。更には、患者データを関連病院や機関病院へと転送することで、データの共有化や医療情報の入手ができ、それらを活用して学術(医療)文献情報の検索なども簡単に行える。
まさにこのようなPOC検査の本質そのものを実現させる環境を創り出すのがpocH-100iの役割であると考える。
3.終わりに
2000年4月、厚生省(現、厚生労働省)はカルテの電子保存を認める方針を打ち出した。この電子カルテによるメリットは、医師および患者に対して大きな福音となりうる。
電子化されたカルテは、パソコン端末を所有していれば検索はもちろんのこと、同時に複数の医師がそのカルテを閲覧することも可能となり、必要に応じて画像情報など他の情報と一緒に扱うことができるのである。まさにネットワーク医療の到来である。
この「ネットワーク医療」は21世紀の医療のキーワードであるが、弊社では「Networking Diagnostics」という考えをもって検体検査市場を独自のネットワークで組み立てることにより、新しい医療環境を創造させ医療への貢献を目指している。
今回、ご紹介した「pocH-100i」もこの「Networking Diagnostics」のもとに開発されたPOC検査装置であり、これからのネットワーク医療にお役に立てることを願って止まない。