問題1. | メタボリックシンドロームの診断基準で必須項目はどれか。 |
1. | 血清脂質異常(トリグリセリド値150mg/dL以上、またはHDLコレステロール値40mg/dL未満) |
2. | 血圧高値(最高血圧130mmHg以上、または最低血圧85mmHg以上) |
3. | 内臓脂肪蓄積(ウエスト周囲径が男性で85cm、女性で90cm以上) |
4. | 高血糖(空腹時血糖値110mg/dL) |
5. | 高尿酸血症(7mg/dl以上) |
.. | |
【問題1】3
:日本のメタボリックシンドローム診断基準の必須項目は腹囲であり、内臓脂肪量が多いことがインスリン抵抗性(インスリン作用の低下)を惹起し、高脂血症、糖尿病発症に関与していると考えられている。腹囲が男性85cm、女性90cm以上で高血糖、高脂血症(低HDL)、高血圧のうち2項目以上該当している場合、メタボリックシンドローム(内臓肥満症候群)と診断される。腹囲の診断基準が現状で良いのか、色々と騒がれているがとりあえず平成20年4月から特定健診がスタートしました。 |
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問題2. | 質量パーセント濃度96%、密度1.84g/cmの濃硫酸を精製水で3倍希釈したときのモル濃度はいくらか。硫酸の分子量を98とする。 |
1.
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6mol/L |
2.
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9mol/L |
3.
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12mol/L |
4.
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15mol/L |
5.
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18mol/L |
.. | |
.【問題2】1
:まず、濃硫酸のモル濃度を求める。密度から1mL中に1.84g溶解していることがわかる 1000mL中には1840g溶解していることになるのだが、純度が96%であるので、実質は1840g×0.96で1766.4g溶解していることになる。このときのモル濃度は、1766.4g÷98=18.0mol/L(規定で表せば、18.0×2価=36N)となる。18 mol/Lの硫酸を3倍希釈すると、18÷3=6 mol/Lとなる。(周りの塩酸や硝酸、酢酸などもモル濃度を計算してみましょう) |
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問題3. | 生化学検査用の自動分析装置で分光器として最も用いられているのはどれか。 |
1.
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回折格子 |
2.
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プリズム |
3.
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中空陰極放電管 |
4.
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石英セル |
5.
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光電子増倍管 |
.. | |
.【問題3】1
:分光器とは、白色光から任意の波長の光を得る装置をいう。回折格子やプリズムを用いたものを分光光度計、フィルターを用いたものを光電光度計という。生化学自動分析装置は回折格子でセルを通過した光を後分光している。 |
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問題4. | ランバート・ベーアの法則が成り立つ溶液でモル吸光係数を求める式はどれか。 |
1.
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モル吸光係数=吸光度×濃度(mol/l)×セル長(cm) |
2.
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モル吸光係数=吸光度×(セル長 / 濃度) |
3.
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モル吸光係数=吸光度×(濃度 / セル長) |
4.
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モル吸光係数=吸光度 / (濃度 ×セル長) |
5.
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モル吸光係数=(濃度 ×セル長) / 吸光度 |
.. | |
.【問題4】4
:ランバート・ベーアの法則とは、吸光度は溶液の濃度とセル長の積に比例するとある。式で表すと、ABS=ε×c×L。εはモル吸光係数、cはモル濃度、Lはセル長を表しており、εを求める式はε=(ABS)/(c×L)となる。 |
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問題5. | JSCC常用基準法によるAST測定試薬において試薬中に含まれない物質はどれか。 |
1.
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ピリドキサールリン酸 |
2.
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アスパラギン酸 |
3.
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還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド |
4.
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アルファ- ケトグルタル酸 |
5.
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リンゴ酸脱水素酵素 |
.. | |
.【問題5】1
:第一試薬に含まれる試薬として、NADH、アスパラギン酸、MD、LD。第二試薬には、αケトグルタル酸が含まれる。 |
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問題6. | d-グルコースのみを基質とする酵素はどれか。2つ選べ。 |
1.
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グルコースデヒドロゲナーゼ |
2.
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グルコースオキシダーゼ |
3.
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ピラノースオキシダーゼ |
4.
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ムタロターゼ |
5.
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ヘキソキナーゼ |
.. | |
.【問題6】1 と2
:酵素によっては、α型のみ、β型のみ、両方に反応する酵素がある。グルコースのC1のOH基が上向きであるのがβ-d-グルコースであり、これにのみ働く酵素は1 と2 。3 と5 は両方。4 はα型(C1のOH基が下向き)。 |
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問題7. | 糖尿病診断基準において糖尿病と診断される判定区分の組合せはどれか。(単位はmg/dl) |
空腹時血糖 75g糖負荷試験2時間値 随時血糖値 | |
1.
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126以上 140以上 126以上 |
2.
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126以上 200以上 200以上 |
3.
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140以上 160以上 200以上 |
4.
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200以上 140以上 200以上 |
5.
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200以上 200以上 140以上 |
.. | |
.【問題7】2
:1999年に日本糖尿病学会から定義され、2 のうち1項目が日を変えた2回ともDM型の場合はDMと診断。また、oGTTがDM型でかつ、典型的なDM症状あるいはHbA1cが6.5%以上であればDMと診断される。 |
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問題8. | リポ蛋白の芯(コア)の部分に存在する物質はどれか。2つ選べ。 |
1.
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遊離型コレステロール |
2.
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エステル型コレステロール |
3.
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リン脂質 |
4.
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中性脂肪 |
5.
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アポ蛋白 |
.. | |
.【問題8】2 と4
:リポ蛋白とは芯の部分に無極性のコレステロールエステルと中性脂肪が存在し、一重膜の部分に両極性の遊離コレステロールとリン脂質が存在する。この一重膜を両極性の ア ホ ゚蛋白が覆ってリン蛋白を安定化させている。 |
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問題9. | トリオレインをリポプロテインリパーゼで水解して生成する物質はどれか。2つ選べ。 |
1. | オレイン酸 |
2. | 過酸化水素 |
3. | グリセロール |
4. | グリセロリン酸 |
5. | 水 |
.. | |
.【問題9】1 と3
:トリオレインとは、グリセリンにオレイン酸が3分子エステル結合した中性脂肪である。中性脂肪を水解する方法には、リポプロテインリパーゼ(LPL)による酵素分解とケン化による化学分解法がある。 |
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問題10. | 紫外部における吸光度の増加度から濃度を求める検査法はどれか。 |
1. | 尿酸 ー ウリカーゼ/紫外部吸収法 |
2. | 尿素 ー ウレアーゼ/グルタミン酸脱水素酵素法 |
3. | AST ー 紫外部吸収法 |
4. | グルコース ー ヘキソキナーゼ/グルコース-6-リン酸脱水素酵素法 |
5. | ビリルビン ー ビリルビンオキシダーゼ法 |
.. | |
.【問題10】4
:1 は尿酸をウリカーゼで分解するのでABS減少。2 は還元型NADPを酸化型NADPするのでABS減少。3 は還元型NADを酸化型NADにするのでABS減少。4 は酸化型NADPを還元型NADPにするのでABS増加。5 は可視部でビリルビンをビリルビンオキシダーゼでビリベルジンに酸化するのでABS減少。 |
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問題11. | 直接ビリルビンが高値になる疾患はどれか。2つ選べ。 |
1. | Rotor病 |
2. | Dubin-Johnson症候群 |
3. | Crigler-Najjar症候群 |
4. | Gilbert症候群 |
5. | 新生児黄疸 |
.. | |
.【問題11】1 と2
:1 〜4 は体質性黄疸であり代謝酵素欠損が原因である。1 と2 は直接BILの胆汁への排泄障害である。3 はグルクロン酸抱合酵素の欠損、4 は肝細胞への取り込み酵素欠損で共に間接BILが増加。5 は通常、間接BILが上昇し黄疸となり、17mg/dlを超えると光線療法適応となる。 |
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問題12. | セ・ア膜による電気泳動でガンマ位に泳動される急性相反応蛋白はどれか。 |
1. | セルロプラスミン |
2. | トランスフェリン |
3. | トランスサイレチン |
4. | C反応性蛋白 |
5. | ハプトグロビン |
.. | |
【問題12】4
:1 と5 はα2分画、2 はβ分画(他にヘモベキシン、LDL、C3、C4)、3 はプレアルブミン分画、 4 はγ分画 |
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問題13. | 散乱光を捉えて測定する方法はどれか。 |
1. | 比ろう法 |
2. | 比濁法 |
3. | 炎光光度法 |
4. | 原子吸光法 |
5. | 蛍光光度法 |
.. | |
.【問題13】1
:1 は散乱光(45度に反射した光)分析。2 と4 は透過光分析。3 は発光分析。5 は蛍光分析。1 比ろう法は比濁法より感度高。3 炎光法はNa、Kの一価の陽イオン測定。4 原子吸光 法は二価の陽イオン測定でホロカソードランプを用いる。5 蛍光法は励起光を照射し、励起光より長波長の蛍光をとらえる。 |
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問題14. | 正しいのはどれか。 |
1. | ビューレット反応は酸性下でのペプチド骨格と銅イオンとの結合である。 |
2. | 蛋白中の窒素量は約6.25%である。 |
3. | アルブミンは等電点pHよりアルカリ側でBCGなどの陰イオン性色素と結合する。 |
4. | 蛋白は等電点pHで最も溶解し安定している。 |
5. | 蛋白は立位と臥位では立位のほうが高値傾向である。 |
.. | |
.【問題14】5
:1 はアルカリ性下(試薬中のNaOHによりアルカリ性)。2 の窒素量は16%であり、窒素量に.25倍すると蛋白量が求まる。3 は、試薬pHがアルブミンの等電点より酸性側のときアルブミンはプラスに荷電し、BCGやBCPの陰イオン性色素(マイナス荷電)と結合し、試薬pHが変化せずに試薬色調が変化する(蛋白誤差)。4 の等電点ではプラスとマイナス荷電が等しく不安定である。5 の立位では、細胞中からアルブミンが逸脱してくるので蛋白が高くなる。 |
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問題15. | 血清鉄代謝とその測定法について正しいのはどれか。2つ選べ。 |
1. | 1分子のトランスフェリンは3つの鉄原子と結合する。 |
2. | 総鉄結合能の基準値は300〜400μg/dlである。 |
3. | バソフェナンスロリンは3価の鉄とキレート結合する。 |
4. | 血清鉄は朝低く、夜間高くなり、日内変動が大きい。 |
5. | 血清鉄と不飽和鉄結合能との和は総鉄結合能である。 |
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.【問題15】2 と5
:1 1分子のトランスフェリンに2分子の三価の鉄が結合(備考:セルロプラスミンには6〜8分子の 銅が結合)。2 トランスフェリンの3分の1に鉄が結合しているので血清鉄の約3倍が総鉄結合能となる。3 バソフェナンスロリンはアスコルビン酸で還元された2価の鉄と結合。4 血清鉄は朝高い。睡眠中はHb量が下がっており、その分が血清鉄として存在。5 トランスフェリンの3分の2が不飽和鉄結合能であり、3分の1の血清鉄を足すと総鉄結合能となる。 |
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問題16. | Km値と同じ基質濃度のもとでの反応速度はVmaxの何%か。ただし、本酵素反応はミカエリス・メンテンの式に従うものとする。 |
1. | 10% |
2. | 25% |
3. | 50% |
4. | 75% |
5. | 95% |
.. | |
.【問題16】3
:v=(Vmax × S)/(Km+ S )の ミ カ エ リ ス ・ メ ン テ ンの式のKm値に1 とVmax=100%を代入して考えれば良い。v=(Vmax × 1)/(1+1)=1/2×Vmax=1/2×100%=50%となる。 |
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問題17. | Lineweaver-Burkのグラフ(下図)において、(a)が0.01、(b)が−0.5であった。このグラフから傾きはいくらか。単位は省略する。 |
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1. | 0.02 |
2. | 0.1 |
3. | 1.0 |
4. | 2.0 |
5. | 100.0 |
.. | |
.【問題17】1
:aは1/Vmaxを表し、Vmaxは100となる。bは−1/Kmを表し、Kmは2となる。 傾きはKm/Vmaxとなり、2/100で0.02となる。(ラインウィーバー・バーグの式は覚えた方が良い。 1/v=Km/Vmax*1/Km+1/Vmax) |
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問題18. | 酵素活性を求めよ。2分間の吸光度変化量が0.3500、モル吸光係数が6300、試料量10μl、試薬量350μlとする。 |
1. | 500 IU/l |
2. | 1000 IU/l |
3. | 1500 IU/l |
4. | 2000 IU/l |
5. | 2500 IU/l |
.. | |
.【問題18】2
:IU/L=(デルタABS/min×総液量×106)/(モル吸光係数×試料量)を覚えておくこと。1分間当たりの吸光度は0.3500/2分で0.1750。総液量は360μL。式に当てはめると、(0.1750×360×106)/(6300×10)=1000となる。 |
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問題19. | ヘム酵素はどれか。2つ選べ。 |
1. | カタラーゼ |
2. | アミラーゼ |
3. | アルカリ性ホスファターゼ |
4. | ペルオキシダーゼ |
5. | サルコシンオキシダーゼ |
.. | |
.【問題19】1 と4
:ヘム酵素とは鉄を持っている酵素のことであり、カタラーゼやペルオキシダーゼの酸化還元酵 素は三価の鉄を有する酵素である。ヘモグロビン、ミオグロビン、チトクロームは鉄を有する蛋白なのでヘム蛋白と言われる。アミラーゼはCa保有酵素。アルカリフォスファターゼはZn保有酵素。 |
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問題20. | 検査値が低下(減少)する組合せはどれか。2つ選べ。 |
1. | 褐色細胞腫 ー 尿中バニリルマンデル酸 |
2. | バセドウ病 ー 血清トリヨードサイロニン |
3. | 原発性アルドステロン症 ー 血清カリウム |
4. | 鉄欠乏性貧血 ー 血清フェリチン |
5. | アジソン病 ー 血清ACTH |
.. | |
.【問題20】3 と4
:1 褐色細胞腫や神経芽細胞腫ではカテコールアミンが増加し、その代謝物であるホモバニリン酸 やバニルマンデル酸も高値になる。2 バセドウ病は抗TSHレセプター抗体がTSHレセプターを刺激するために、甲状腺機能亢進状態となり、T3、T4が高値になる。3 アルドステロン症では腎臓でNa、Clの再吸収が亢進し、Kは放出される。そのため血中Kは低下する。4 鉄欠乏性貧血では絶対的に鉄が欠乏しており機能鉄の血清鉄、貯蔵鉄のフェリチンとも低下している。5 アジソン病は自己免疫病による副腎皮質機能低下症であり、コーチゾール分泌低下が起こるため、正のフィードバックが作用し、脳下垂体前葉からACTHの分泌が増加する。 |
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*臨床化学塾の問題および解説に対しご指摘あるいはご要望がありましたら、藤本までご連絡下さい*
(by 奈良県臨床衛生検査技師会 藤本)