全自動血液凝固測定装置CA-7000における尿中FDP測定の検討
奈良県立医科大学付属病院 中央臨床検査部
森分和也、山崎英子、松田多恵子、丹羽欣正、増谷喬之、岡本康幸
最近全自動血液凝固測定装置の多項目・高機能化は、極めて著しい進展が見られる。特に、凝固時間系の測定項目にFDP測定等、免疫凝集反応系測定項目の同時測定器の開発は、ほぼ完成されつつあるといってよい。
現在、全自動血液凝固測定装置を用いた血中FDPの測定は広く用いられているが、尿中FDPの測定に関する報告は少ない。
今回我々は、全自動血液凝固測定装置CA7000における尿中FDP測定の検討を行い、日常検査への導入が可能であるかを試みたので報告する。
1. 方 法
使用装置はCA7000、対照機器としてLPIA200を用いた。
使用試薬はエルピアFDP-U(ダイアヤトロン)、スマイテストオートFDP尿(住友金属工業)を用いた。
2. 性能評価
評価の内容としては、1)検量線 2)同時・日差再現性 3)試薬の経時安定性 4)最小検出感度 5)キャリーオーバー 6)相関性の6項目について行った。
1) 検量線
図1に示すように、両試薬とも3200ng/mlまで引く事が出来た。
2)同時・日差再現性
同時・日差再現性の成績は、図2に示した。スマイテストオートFDPでは、同時・日差再現性がコントロール1でCV8.5%・6.7%、コントロール2でCV2.5%・2.8%であった。
エルピアFDP-Uも同様に、コントロール1でCV4.7%・4.4%、コントロール2でCV1.6%・2.5%と両試薬とも良好な結果が得られた。
3) 経時安定性
機器の電源を入れたままにし、試薬のふたも開けたままで24時間測定を行った。
両試薬とも、図3に示すように24時間試薬が安定である事が確認できた。
4) 最小検出感度
図4に示すように両試薬とも、60ng/mlまで最小検出感度を有する事を確認した。
5)キャリーオーバー
キャリーオーバーの試験は、図5に示すように3項目について実施した。
高FDP尿から低FDP尿への試験を実施したが、キャリーオーバーは認められなかった。
次に高Fbg血漿から、正常尿への試験を実施した。これもキャリーオーバーは認められなかった。
最後にアプロチニンの影響の有無を検討した。前2項と同じでキャリーオーバーは認められなかった。
これはCA-7000に検体間のキャリーオーバーを防止するための、検体ピペット洗浄機能が備わっている結果だと思われる。
6)相関性
両試薬の相関性は図6に示すように、スマイテストFDP尿で、回帰直線y=0.83x+1.33、相関係数r=0.996。エルピアFDP-Uで回帰直線y=0.83x+16.73、相関係数r=0.998と、エルピアFDP-Uの方が若干高値傾向を示した。
これはLPIA200とCA7000の攪拌などの機械的なものによるものであるのではないかと思われる。
3. 考 察
尿中FDPの測定は腎生検等の検査に比べて、繰り返し・容易に検体採取ができる検査である。
また腎臓の病変、特に糸球体腎炎の発症、進展には免疫補体系等の他に、血液凝固線溶系の関与が注目されている。
しかし、腎局所の病変には血清FDPの変動は少なく、尿中FDP測定のほうが有用である。
尿中FDPが陽性を示すものとして、ネフローゼ・糖尿病性腎症・妊娠中毒症・尿路腫瘍・移植腎拒絶反応時などがあげられる。
以上の事から、尿中FDPの測定は被検者の負担が少なく、疾病の診断と治療に役立つものである。
しかし、尿中FDPのもたらす情報についての有用性は、解明されていない問題が数多く残されており、まだ確定的な価値を与えていない。
4. まとめ
1) CA-7000における、尿中FDP測定の性能評価結果は良好であった。
2) エルピアFDP-UとスマイテストFDP尿は、CA-7000で測定可能な試薬である。
3) CA-7000は血漿・血清・尿検体のランダム測定が可能であり、凝固・線溶検査の運用上有用性の高い装置であると思われる。
【参考文献】
橋本良子 他:三重医学(28) 527~538 1985