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第4次医療法改正のポイントと今後の動向について

(株)エスアールエル 企画営業部 鈴木 博詞

昭和23年に医療法が制定され、その後37年間大きな改定はありませんでした。しかし、昭和60年の第1次医療法改正以降、第2次(平成4年)、第3次(平成9年)と次第に間隔が短くなり、今年3月からは、今回解説をさせていただく第4次医療法改正が施行されています。
 抜本改革とは程遠い内容として手厳しい意見も多くある様ですが、私は、機能分化と連携強化や情報提供体制の推進など一貫した方向で前進してきていることは間違いないところだと思いますし、今回の内容は、医療機関にとっては、十分にインパクトのある改定であると受けとめております。
 多分、検査技師の先生方には、施設基準の緩和の中で臨床検査施設が「検体検査の業務を委託する場合にあっては、当該検査に係る設備を設けないことができる。」という省令が出されたことが気になる内容かと思います。その解釈を含め、今回の改正のポイントと今後の動向について、簡単ではありますが、解説させていただきます。

【5年後には、急性期(一般病床)は半減へ】

今回の主要な改正内容は、次のとおりです。
1)病床区分を見直し、従来の「その他病床」を「療養病床」と「一般病床」に区分
2)「一般病床」の看護配置基準の3:1、病床面積の6.4uへの引き上げ
3)必置規制の緩和(臨床検査室等)
4)広告規制の緩和
5)医師・歯科医師の臨床研修の必修化

このうち1)〜4)は、3月1日から施行され、5)のみ医師は平成16年4月〜、歯科医師は平成18年4月〜臨床研修が必修化されます(現在は努力義務)。
 今回の改正の目玉であります病床区分の見直しですが、2年半(平成15年8月末)のうちに「一般病床」又は「療養病床」の届け出を行うこととしています。
届け出にかならず必要となる事項は、建物の構造概要及び平面図、病床数、病床の種別ごとの病床数、各病室の病床数で、従業員の数や構造設備等に変更があった場合は合わせて届け出が必要となります。区分定着後(約5年後)は、別個に算定されることになっているので、一般と療養の相互の行き来は出来なくなることになります。
 現在、一般病床は約126万床ありますが、区分定着により急性期となる一般病床は、少なくても半減するというのが、一般的な予測で、50〜60万床程度になると思われます。

【急性期は看護・環境重視へ】

 次に1年以上前から迷走し、やっと決着した一般病床の看護基準と病床面積の改正です。
これは少し日本の歴史から解説させていただきますと、「人口10万人当たりの病床数」は30年前の1965年には、実に日・米・英が約900床で肩を並べておりました。
 しかし、96年には、日本だけが1300床に増加し、米は400床、英は420床に激減させています。また、平均在院日数は65年で日・英ともに30日、米は17日でしたが、96年には日本は34日に延びてしまい、米は7日、英は9日に短縮しています。
看護職員1人当たりの患者数についても同様です。70年に日本では5.1人、米 は2.2人、英は2.3人でした。96年には日本の2.4人対して、米は0.5人、英は0.6人になっております。
 これは、日本の医療が、米・英の30年前から病床数を減らし、逆に患者1人当たりの看護職員、病床面積を増やすことによる質の医療を目指してきたのとは、異なる歴史を歩んできたことは明らかです。
 日本は30年遅れて、まさに今回の改正を期に質の医療の1歩を踏み出すことになります。その点でも今回の改正は、不十分な感はあるものの、まず前進した内容と言えると思います。

【臨床検査室の必置義務は?】

 必置規制の緩和では、外部委託の進展等により一律の義務付けの必要が薄れてきた必置施設について規制緩和していますが、暖房・給水・汚物処理施設は法律から完全削除されています。
 消毒・洗濯施設は法律からは削除し、省令に位置づけし、給食・臨床検査施設は法律のまま残し、省令で施設基準の緩和を行っています。
 気になる臨床検査施設は、どのような省令上の緩和なのかと言いますと内容的には、「検体検査の業務を委託する場合にあっては、当該検査に係る設備を設けないことができる。」となっています。
 この解釈は、全部外注すれば、臨床検査室は必要なしということかと言いますと、現実には、形だけ臨床検査室を設置し、全部外注しているような施設を見かけることがありますので、この施設は明らかに該当するでしょう。
 しかし、先生方がいらっしゃる病院はそうはいかないでしょう。夜間・救急時の検体検査は外注では、良好な対応は出来ません。この部分が、緩和の備考として次のように「夜間救急時の検査体制が確保されていること。なお生理学的検査に係る施設については当該検査の外部委託を認められない。」と記載されています。
 私個人的には、「各病院の機能(診療機能)に合致した検査機能、言い換えれば検査施設・設備が必要であり、機能的に必要でなければ、外部委託可能。」と解釈しています。

【広告規制緩和で医療機能評価受審増加】

 今回の改正の中で明るい内容といえば、広告規制の緩和です。法律には、「診療録その他の診療に関する諸記録に係る情報を提供することができる」が追加され、厚生労働大臣の定める事項として「財団法人 医療機能評価機構の評価結果」ほか約10項目が追加告示されました。
 これは、病院の広告戦略上も重要ですが、あくまで厚生省の目的は、患者への情報公開を順次行っていくための改正であることです。
 医療評価機構による認定は、1997年開始から5年目を迎え、申請受付病院は670施設(今年3月現在)だが、広告規制緩和の項目に追加されることでかなり増加しています。
 ですが、評価項目に重要な診療実績が明確に位置づけられていない点を問題点として指摘されることも多く、現在検討中の第2期評価体制への整備が行われています。
 患者への真の情報公開を推進するであれば、不可欠となる情報です。そして、予後率、死亡率等のアウトカム情報まで開示される時代が、そんなに遠くない時期に来るのかもしれません。
 それを考えれば、各病院で今、本当の「医療の質」を向上させていくような組織体制の確立や内部改善が急務になってきていると思います。

【終わりに】

 今後の医療保険制度改革4本柱の1つである第4次医療法改正の内容を簡単に解説させていただきました。
 第5次医療法改正も1〜2年先には国会提出されると思われますが、今回改正の補完として1)機能分化と連携 2)情報開示の進展 3)第3者評価の充実 が予測されるところです。
 やはり、如何に地域での自院を位置づけ、連携していくかが当面の各病院の課題となることは間違いないところです。
 そのほか、診療報酬体系の見直し・高齢者医療保険制度と介護保険・新薬価制度と医療法以外の改革もめまぐるしく行われようとしております。中長期の経営戦略をつねに先読みしながら進めていくことが肝要です。
 先生方、検査部門についても同様で、来年度は、検体検査部門では10%以上のマイナス改定になるのではないかと言われております。検査部門として経済面で貢献する時代は終わろうとしています。病院内部での先生方の役割(如何に貢献しているか?)を戦略的に向上されていくことがまさに重要であり、職場で、また技師会等で情報交換しながら、とことん議論すべき課題だと思います。

連絡先

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