○藤原美子、木下裕子、福田実恵子(榛原総合病院)
【はじめに】
近年、血液型判定用試薬として、ヒト由来ポリクローナル抗体からモノクローナル抗体へが日常検査に使用されるにあたり、使用する試薬の特性に十分注意して判定しなければならないことを経験したので報告する。
最近は、Duを更にweakDとpartialDに分類しているが、今回の発表はDrサイドへの浸透という観点から全てをDuとして扱った。
【症例および既往歴】
患 者:19歳 男性
現病歴:右肘内側々副靱帯損傷のため当院整形外科受診
既往歴:8年前他院により扁桃腺手術
【結果及び考察】
O型Du型と判定
8年前他院で血液型判定の際O型RhD(+)と判定され、患者側からRhD血液型の違いを指摘され当科で2度再検する。
以前は、ヒト由来ポリクロ抗体を使用した際、37℃60分加温で凝集することからRhD(+)と判定されたと推測されるが、当科はポリクロ・モノクロブレンドを使用しDu確認試験を行い最終のクームス相でのみ凝集を認めたのでDu型と判定した。
解離した原因について考察すると使用試薬の反応するエピトープの違いがあげられる。
近年抗血清がポリクローナルからモノクローナルへと使用されるようになった背景には道徳的な問題、感染の問題輸血のための安定した抗血清を得るためなどが上げられる。
免疫グロブリンで比較すると、ヒトポリクローナル抗Dは、IgG抗体であるために20%アルブミン、反応増強剤としてPVPが含まれている。このアルブミン、PVP(ポリビニール
ポリブレン)が作用することにより偽陽性を起こす可能性があった。
一方モノクローナル抗DはIgMであるのでこのような問題点は解決されているが、抗原を認識する部位が限定されるため、Rh(D)陽性、Du(WeakD)とは反応するが、DMo
saics(RhD抗原の部分欠損)とは反応しないことがある。
試薬以外にD抗原が弱まる原因として、
1つ目は、数の問題があげられる。遺伝的にD抗原の質的違いはなく量的な違いで凝集が弱まる。
2つ目は、遺伝子干渉型として、transの位置にある、largeCの発現している場合たいがいにおいてD抗原の発現を、量的に抑制する。この場合も、抗原の質に問題はない。
3つ目は、独立した遺伝子が作用しRhの発現を量的に抑制する。調節型と無形成型がある。
4つ目は、Dmosaicsで、Rh(D)抗原の一部が欠損して質的に異常があり正常なD抗原と接すると欠損しているエピトープに対する抗体を作る可能性があり、輸血又は妊娠によって抗D抗体の産生が報告されているため臨床的にも重要な血液型である。
D抗原の複雑性
1)個人の血球上のD抗原の数(genetic control)
2)Rh遺伝子複合体内のgene interaction(遺伝子干渉型)
3)Effect of inhertance of genes indepent of Rh genes(Rh gene complex locus以外のsuppression gene X゜r)
4)Mutant form of the Dgene(Epitope deficient cells)
モノクローナル抗体の反応によって〜Zまで分類されているが、ポリクローナルを使うと全て反応するのでこれを分類する事はできない。
今回の場合この4番目が一番考えられる。
患者の年齢を考慮し今後のことも考え、家族の同意を得て家系調査を行った。兄弟共Du型と判定したことから両親共の弱いD遺伝子、あるいはD抗原の一部を欠損したDmosaicsを遺伝したためだと考えられる。
【まとめ】
今回の判定結果の解離は、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の反応するエピトープの違いと考えられる。
判定結果の解離は、今回の要因以外に例えば遺伝的なD抗原の抑制現象などが考えられるが、これらを全て否定することは出来ないので抗D血清との反応が弱い場合は、Duの可能性を考え、患者さんのために“より安全な輸血”と言う事に努力していきたいと思う。
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