通勤途中の景色

町立大淀病院   泉  昭彦

私は現在五條市に住んでいます。
職場のある大淀町まで車で約20分かかるのですが、 そのほとんどを吉野川 (紀ノ川) を縫うように走ります。
吉野川は、 そのわずかな距離の間でもさまざま表情をみせてくれます。
 下流のほうから紹介していけば、 国宝 「八角堂」 がある榮山寺の付近は、 流れが非常にゆるやかで上のほうから見ていると流れのない湖の様に見えるときもあります。
そのためにこのあたりは、 昔から 「音無川」 と呼ばれ水色は深みのある瑠璃色、 青磁色をしています。
しかしそこからさかのぼって5分ほど走ると、 滝のような激しい流れが大きな奇岩の間に行く筋もできて見違えるような風景に変わります。
このあたりは夏になると、 キャンプをしたり、 カヌーをしたりする人たちで日ごろの静けさが嘘のようににぎやかになります。
それよりさらに上流では、 初夏の鮎の解禁シーズンともなると朝早くからたくさんの釣り人たちがところせましと竿を出す光景がみられます。
私は生まれたころからずっと近くに住んできたのに1度も吉野川で釣りをしたことがありません。 鮎釣りの姿を見るたびにいつかはチャレンジしてみたいと思っているのですが、 腰や胸くらいの深さのところまで川にはいって行って足を滑らせて流される自分の姿を想像すると、 二の足を踏んでしまうのです。
このように豊かな水をたたえ多くの人々に親しまれている吉野川ですが、 ここ数年のアウトドアブームや住宅地の増加によって水質の悪化や川岸のごみの散乱は年々ひどくなっています。
川原での遊びは、 手軽でお金もあまりかからないので人気があるのでしょうが、 テーマパークなどと違って掃除や後片付けをしてくれる人はいないのです。
これから先もこの景色を見る事ができるように、 皆さんも吉野川に遊びにこられたときにはごみを残したり水を汚したりしない様にしてください。