奈臨技コントロールサーベイ

奈臨技コントロールサーベイ報告

精度管理事業推進委員会   
委員長 猪木 正允

平成12年11月3日 (金) 祝日、 奈良県立医科大学基礎校舎第1講義室、 第2講義室の2会場で、 奈臨技統一コントロールサーベイ検討会を開催した。 当日は午前8:30から実務委員が集合し、 2班に分かれて会場準備に入り、 9:30から受付、 9:45から開会式、 10:00から各7研究班 (血液、 血清、 輸血、 微生物、 臨床化学、 一般、 細胞) の検討会を開始した。 各7研究班とも解析結果報告後、 活発なディスカッションが行われ、 15:00に終了し大変有意義な1日であった。 出席者総数は91名で、 その内賛助会員は17名であった。 各7研究班の入場者数は、 血液22名、 血清35名、 輸血30名、 微生物15名、 臨床化学47名、 一般17名、 細胞10名であった。 これからも、 精度管理事業推進委員会としては、 参加施設、 サーベイ研究班、 サーベイ項目の増加を図り、 より一層の充実した活動をしていきたいと考えている。 会員、 関係施設の方々の絶大なるご協力をお願いしたい。

微生物  小泉  章

1. 参加施設:15施設 (前年度:11施設)
2. 目的:前年度同様、 『薬剤耐性菌を正確に検出でき、 克つ臨床に耐性菌について正しくコメントできること』 である。 前年度のサーベイで、 薬剤耐性菌、 特にVREの同定とその解釈に解答のバラツキが目立ったため、 今年も同じテーマとした。
3. 設問:1) 喀痰スライド塗抹標本からの抗酸菌の検出。 2) 下記の3菌種の同定と薬剤感受性。 喀痰由来:H.influenzae (BLNAR)。 腹水由来:K.pneumoniae (ESBLs)。 尿由来:E.casseliflavus。 3) 3菌種に対する臨床へのコメント。
4. 結果:全ての施設で抗酸菌、 若しくは結核菌という回答が得られた。 耐性菌の同定、 薬剤感受性成績と臨床へのコメントについては、 前年度の成績と比較して、 正解率が向上しているように思われた。 (解析結果の詳細は後日、 精度管理報告書を参照して下さい。 )
 サーベイ報告当日は、 昨年度よりディスカッションの時間をもつことができたが、 報告会参加者が非常に少なく、 サーベイ参加15施設中の大半が当日不参加であったことが少し残念に思った。 また、 報告会を含めたサーベイの内容と今後の方向性について微生物研究班員全体で、 再検討しなければならないと感じた。

血清  山口 英世

1. 項目と参加施設数
HBs抗原    28
HCV抗体    26
TSH      17
AFP      19
CEA      19
PSA      14
1項目以上に参加した施設数 29
2. 検討会の参加人数と施設数
参加人数 35名
参加施設数 15施設  欠席施設数 11施設
3. 概要
 項目の変更:免疫グロブリンは7回連続で行なってきた。 標準品がIFCC標準品 (CRM470) に全て代わりある程度収束されたことから隔年実施とし、 今年は外す年とした。 これに代わり甲状腺ホルモン1項目、 腫瘍マーカー3項目行い多数の参加を得た。
 結果:感染症2項目はほぼ問題ない結果となった。 TSH、 腫瘍マーカーはおおきなバラツキがあることを把握したが、 この問題が何に起因しているかは今後究明してゆく必要がある。 また、 はずれ値が生じた場合でもこの原因を追求することは困難な場合が多く、 できれば次回は日臨技サーベイと同じ項目で、 ほぼ同じ時期に行いたい。 このことのメリットはいずれかのサーベイが2次サーベイの役割をし、 系統誤差かランダム誤差かを究明できるからである。 次年度は日臨技のサーベイも合わせた解析を是非行いたい。

血液  森分 和也

参加施設は昨年とほぼ同じ32施設でしたが、 来年度は参加施設をもう少し増やしたいと思います。 さて、 今回もフォトサーベイという形で実施しました。 解答を見てみると設問1〜7は正解率が高かったのに対し、 設問8は少し難しかったのか解答が分かれているようでした。 しかし、 各施設ともよく勉強されている様に思われます。
 サーベイの検討会が休日という事もあり、 参加人数が少なかったのが残念です。 サーベイに参加することはもちろん大事ですが、 各施設の結果と自施設の結果を照らし合わせるという事も大切ではないかと思います。
 また、 設問に対する解説も合わせて行いますので、 解答に自信が無いとか、 間違っているのではないか?という方にはぜひ参加していただいて、 サーベイを大いに盛り上げていただきたいと思います。
 皆さんが参加したいと思うサーベイにするために、 来年度もがんばってより良い設問を作りたいと思います。 今年参加された施設はもちろん、 参加されなかった施設はぜひ参加していただく様お願いします。
 最後にサーベイに協力して下さった方々にお礼を申し上げます。
 

臨床化学  桑山 和哉

平成12年度のコントロールサーベイの解析は例年通り、 各項目 (23項目+調査項目 T-Bil) についておこないました。 今年度は保険での検体検査管理加算が認められたこともあり、 例年より多くの施設に参加していただき感謝しております。 解析の内容ですが、 今回のサーベイ検体を配布の前日に天理よろづの山本氏に作製していただいたお陰もあり、 全体的に良好な結果でした。 ただ、 項目によっては大きく目標値を外れる施設がみられ、 特に気になる施設に対しては現在、 データのフォローをしています。 今後の課題としてより信頼性のある目標値設定と各施設の経年的な変化をより考慮して評価して行きたいと考えております。 今回もデータ集計および解析結果の編集を天医校の藤本氏にお願いしました。 今回のコントロールサーベイの解析に協力頂きました会員およびメーカーの方々には深く感謝しております。

細胞  横山  浩

今年度はフォトサーベイ10題について、 参加者の中でディスカッションしました。
 しかし、 例年のごとく参加者が少なく、 会場には私を含め4〜5名での検討会実施となりました。 細胞診の分野で言うと、 会員にとって、 実施しているフォトサーベイ自体が、 休日にわざわざ出てこようと思わせる様な興味のあるものになっていないのではないかと思われます。
 次年度はサーベイの内容、 検討会の実施方法等について検討する必要があると思います。

一般  片岡 美香

 今年度のサーベイは、 昨年度と同様に尿蛋白定量、 フォトサーベイそして新たに尿定性検査を行いました。 参加施設は33施設と平成10年度25施設、 11年度22施設に比べて増加しました。 定性項目を追加したことによるものかと思われます。 しかし、 検討会への参加は昨年同様、 数施設でした。
 今回の試料は、 陰性プール尿に牛アルブミン、 ブドウ糖を添加し、 作製しました。 尿定性検査においては従来より言われているメーカー独自の標準値の問題があるものの、 ほぼ満足できる結果だと思われます。 尿蛋白定量においては、 Kingsbury-Clark (KC法) の施設が他の施設の2倍もの値を示し、 測定方法による蛋白種の反応較差が改めて浮き彫りとなりました。 フォトサーベイにおいては、 例年どうり意見の一致するものと分かれるものとに分かれますが、 どうしてその解答と考えるかを説明できることが大切だと思います。
 冒頭にも触れましたが、 サーベイ参加施設は若干増加しました。 検体検査管理加算の新設が影響していることも考えられますが、 ただ参加しているだけでは意味がなく、 その結果をいかに、 反映させるかが重要であることを認識していただきたいと思います。 サーベイの内容などいろいろな意見を取り入れることにより、 この地域サーベイはより充実したものになると思われます。 ご協力お願いします。
 

輸血  吉村  豊

今回のコントロールサーベイ参加施設数は、 36施設 (前年度21施設) で年々増加している。
 サーベイの結果から、 ABO式血液型裏試験の判定において各施設で差があり、 反応の弱いときの精査の進み方に問題がみられた。 また、 Rh式血液型でのDu確認試験の意義や不規則抗体検査におけるDiegoの捉え方も問題があり勉強会で対応していく必要がある。
 検討会で出された意見で各施設で実施されている検査方法のアンケートや判断の困難な症例に遭遇した時の対処方法などについて、 もっと勉強会のテーマにして欲しいというものであった。
 サーベイ検討会に参加して感じることは、 参加施設がいつも少なく、 また施設も限られている事である。 検討会をより有効に活用し、 どの施設のひとでも意見交換しやすいような雰囲気で行うために、 研究班単位で実施することが望まれる。