介護保険制度を復習してみませんか?

(株)スズケン   長 澤 昌 和

                                               
介護保険が動きはじめて1年が経過しようとしています。 制度スタートの直前・直後は、 一般の新聞紙上等でも混乱している状況が多く掲載されていたものの、 現在ではかなり落ちついているように感じられます。 しかしながら、 介護サービスを実際に受けられるまでには、 いろいろな手順が設けられているなど、 複雑な制度であることは間違いありません。
 検査技師の先生方は、 医療や介護に直接的に関わられているため、 患者だけでなく、 身内や近所の方からも介護保険の質問を受けることがあるかと思います。 ここでは、 そのようなときの備えとして、 介護保険の基本的な部分を解説してみたいと思います。

介護保険の仕組み

 介護保険は、 40歳以上の全国民を対象とした制度で、 毎月介護保険料を支払い、 介護が必要になったとき (必要と判断されたとき)、 介護サービスが受けられるというものです。 介護サービスは介護保険の事業者として指定されている事業者から受けることになります。 介護サービスにかかった費用は、 介護保険から9割給付されるため、 利用者の負担は1割のみでよいことになります。

介護保険のサービスを受けるまで (下図参照)

           

<要介護認定の申請>

 介護保険のサービスの利用は、 まず市町村の介護保険担当窓口に要介護認定の申請をすることから始まります。 申請できるのは、 原則65歳以上で介護を必要とされる方が対象です (介護が必要になった原因は問われない)。 40歳から64歳の方については、 アルツハイマー等の特定の疾病が原因となって介護が必要になった場合に限られています。 例えば、 交通事故が原因で介護が必要になっても介護保険を利用して介護サービスを受けることは出来ないことになります。 申請は本人や家族が行う方法のほか、 居宅介護支援事業者に申請代行を依頼することもできます。

<要介護認定>

 申請を終えると、 介護が必要かどうか、 どの程度必要かの調査を受けることになります。 この調査は 「訪問調査」 と呼ばれ、 市町村職員やケアマネジャーが自宅を訪問し、 身体の機能、 日常生活の動作等、 85項目が調査されます。 この調査結果は、 コンピュータにかけられ、 介護を必要とする時間が算出されます。 この時間が多いほど介護度が高いと判定されます (1次判定)。
 訪問調査と並行して、 「かかりつけ医の意見書」 も作成され、 医学的な観点から介護の必要性が示されます。
 1次判定の結果、 訪問調査時の特記事項、 かかりつけ医の意見書の3つを踏まえ、 要介護認定審査会で 「要支援」、 「要介護1〜5」、 「自立」 のいずれかに決定 (2次判定) し、 認定されます。

<介護保険サービスの利用>

 要介護認定の結果が要支援、 要介護1〜5となると、 介護保険のサービスを受けることができます。
 介護保険で提供されるサービスは、 「施設サービス」 と 「居宅サービス」 の2つに分けられます。 要介護認定の結果が、 「要介護」 であれば、 介護を必要とする程度 (軽度の1〜最重度の5) に関わりなく、 施設もしくは居宅のどちらかのサービスを利用できます。 一方、 「要支援」 と認定された場合は、 居宅サービスのみの利用が可能となります。

施設サービス

  「施設サービス」 とは、 介護保険の指定を受けている施設に 「入所」 し、 食事・排せつ・入浴時等における介護、 日常生活の身の回りの世話、 リハビリテーションなどといった一連の介護サービスが施設から提供されます。 施設サービスを選択する場合は、 3種類の施設 (表1) から、 いずれかに入所することになります。
 施設サービスを実際に利用する際は、 施設が提供するサービスと利用者の身体の状況 (特に医療的なサービスの必要性) 等を照らし合わせ、 選択することが重要になります。

居宅サービス

  「居宅サービス」 は、 ホームヘルパー等が利用者宅に 「訪問」 し、 在宅で介護を受けることを連想しますが、 「通所」 してサービスを受けるものなど、 15種類ものサービスメニューがあります (表2)。 居宅サービスを選択すると、 このサービスのなかから、 利用者の身体の状況や家庭の環境等を考慮し、 適したサービスを選択することになります。 このとき注意しなければいけないのは、 「区分支給限度額」 (介護保険で賄ってもらえる利用者負担分を含んだ料金の上限) が、 介護の必要度に応じて設けられていることです。 つまり、 その区分支給限度額の対象となる居宅サービスを利用するときは、 各サービスの料金単価(単位数) と利用回数の兼ね合いを考えなければなりません。 区分支給限度額を超えてサービスを受けると、 超過分は全額利用者負担となってしまいます。
 例えば、 要介護3と認定されると、 区分支給限度額は26,750単位となります。 このような方が各種サービスの単位数合計 (単位数×利用回数) が30,000単位利用された場合、 区分支給限度額までは原則1割負担 (2,675円) で利用できます。 しかし、 超過した3,250単位分 (32,500円分) は全額利用者負担となってしまいます。
  
        
  
ケアプラン

 居宅サービスを受ける場合、 サービスの選択や利用回数の計画 (ケアプラン) の作成は、 非常に難しいものです。 このような場合は、 介護保険のエキスパートであるケアマネジャーへ依頼することができます (居宅介護支援…このサービスは利用者負担なし)。 もちろん、 施設への入所を希望する場合でも、 どの施設がよいかどうか迷ったとき、 提供されるサービスの詳細を知りたいときなどでもケアマネジャーに相談することができます。

<ケアマネジャー>

 ケアマネジャー (介護支援専門員) は、 ケアプランの作成や介護保険の相談応需だけでなく、 1次判定での訪問調査の受託、 介護サービスを提供する側の業者 (施設) との連絡や調整、 利用者がケアプラン通り介護サービスを受けているかの確認・管理等、 利用者が介護サービスを円滑に受けられるよう、 さまざまな役割を担っています。
 ケアマネジャーになるためには、 資格試験に合格し、 実務研修を終了する必要があります。 受験資格について、 医療関連職種では医師や薬剤師、 看護婦等 (検査技師は残念ながら受験資格の対象となっておりません) のうち、 医療現場等での実務経験が5年以上ある者が対象です。
   
  

介護保険制度の意義

 介護保険制度が創設されるまで、 いわゆる福祉系のサービスは 「措置制度」 というもので運用されていました。 この措置制度は、 行政側が費用をもつ (利用者負担がない) ものの、 サービス提供内容の選択・要望などは届きづらいものでした。 また、 措置制度自体なじみがなく、 「よく分からない」 というのが現実だったと思われます。 この介護保険制度は、 「社会保険方式」 を採用しています。 これは国民が介護保険料を納付することで、 介護サービスを受ける権利を持っていると意識でき、 サービス提供業者に対する要望等も対等な立場でできるものとなりました。
 また、 介護サービスの利用に関しても、 いろいろなサービスが介護保険のもとに一本化となりました。 これにより、 利用者は状態や希望に応じた各種介護サービスを比較的容易に受けることが可能になったといえます。

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(広報部)
理解できたでしょうか、 知ってるようで知らない介護保険制度について、 株式会社スズケンのご厚意により、 解りやすく解説していただきました。
次号でもこのような企画を予定しています。 希望する企画等がありましたら広報部までご連絡をお願いします。