県立奈良病院 胡 内 久美子
2000年10月25日から26日の2日間、 大阪国際交流会館にて第40回近畿医学検査学会が開催されました。
大阪国際交流会館は、 同年の6月に友人 (といっても検査技師仲間の先輩と後輩なのですが…)
が、 フラメンコの発表会を行った所なので方向音痴の私も苦労することなく行くことができました。
同じ会場にもかかわらずフラメンコと検査技師学会では、
雰囲気が随分違います。 検査の仕事というのは、
コツコツと地味な仕事だと常日頃思っていますがあらためてその通りだと感じるものがありました。
毎回近畿学会には、 時間の許す限り参加しています。
いつも若い人達が積極的に演題発表されているのには、
感心させられます。 今回、 私にとっては、
一念発起で演題発表をすることにしました。
一念発起の理由をしいてあげるとすれば、 「何時になったら自分の時間があるのだろう?」
と思っていた必死の思いの子育ても一段落したことと、
「日常の検査だけに流されていてはいけない。
」 と少し自分にプレッシャーをかけてみようと感じていた事の2点でしょうか。
それで、 随分高年齢の演題発表デビューということになったわけです。
デビューのわりには、 緊張の度合いが少なかったと思います。
「なるようになるサ!えぇ〜いやってしまえっ!」
というひらきなおりが早いのと、 小さい頃から人前で話すことは、
苦にならなかったのできっと性分だとおもいます。
また、 備えあれば憂いなしの状態になるように協力してくれた方々のおかげだと心から感謝しています。
スライドひとつ自分ひとりではできなかったのですから……。
奈良病院中検血液は、 もちろんのこと、 泌尿器科の三馬先生、
柏井クリニックの大音先生にまでお世話になりました。
さて、 今回の演題で発表させていただいたCHr
(網状赤血球ヘモグロビン含量) というパラメーターですが、
全自動総合血液検査装置ADVIA120 (Bayer三共)
にて測定しています。 鉄欠乏の指標としては、
なかなかの優れものだと思います。 今学会では、
維持透析患者の鉄剤とrHuEPOの至適投与量を管理するうえでCHrは、
有用な指標となるという結論でしたが、 未熟児貧血におけるrHuEPOの投与量として、
鉄欠乏性貧血患者に対する鉄剤投与後の赤血球造血改善の指標として、
血液疾患患者の赤血球造血状態の指標として有意義な測定項目だと考えられます。
貧血管理の新しい測定項目として興味深いCHrの今後にご期待ください。
と、 いったところでしょうか? 学会終了後大阪の透析専門病院の医師から問い合わせがあり、
「発表もしてみるものだ。 」 とうれしく思いました。
わざわざ会場まで来られていたそうです。
私達検査技師をとりまく社会的情勢がかなり厳しい状態にあり、
今回の近畿学会だけでなくさまざまなところで開催される勉強会でも検査技師のもがきを感じます。
今学会でもPOCT関連のランチョンセミナーが開かれていました。
そこでは 『経済的に割が合わないとすぐに考えず、
医療行為全体の効率としてとらえるべきだ。
』 と講演されていました。 経済効果を考えることは、
忘れてはならないと思いますが、 患者のための医療を担う検査だということを常に意識しておかなければ迷路にはまってしまうと思います。
私ごときが、 立派なことをいえるはずもありませんが、
やはり基本は、 学生時代に先生が口をすっぱくして言っていた
『正確にかつ迅速に』 だとおもいます。 ただ、
そのデーターを垂れ流しにすることなく、 臨床に活用してもらうための工夫と努力が大切で、
これこそは学校では教えてくれません。 実践のなかで学ぶより他はありません。
先輩に教えられ仲間に学ぶ姿勢の必要性を強く感じています。
体力、 記憶力の衰えを感じれば感じるほどに。
社会問題フォーラムには、 残念ながら参加しなかったのですが、
検査技師の業務拡大やクリティカル・パスに関して等抄録を興味深く読ませていただきました。
臨床検査技師は、 いろんなことをしなければならない時代になっていますが、
臨床検査技師としての職業的使命感を大切にしたいものだと思います。
最後に今回の近畿学会は、 私にプレゼントをくれました。
音信不通になっていた技師学校時代の先輩からメールがとどきました。
演題発表者の中に私の名前をみつけたから、
ということでした。 “少しがんばると少しいいことがある。
”ということかな?