旅行記

初めての海外旅行と再び訪れたくなるカナダの魅力

奈良県立医科大学 増谷 喬之

ボウ湖畔(バンフ)

【初めての海外旅行】
 平成12年5月は私たちにとって結婚25周年、銀婚式を迎えるときであった。25年の記念として、ゆっくりと田舎の温泉それともリッチにリゾートホテル&グルメと考え、少し遠出するくらいの気持ちで家内と計画していた。ところがある日、家内からカナダ・オーロラの旅またはカナデイアン・ロッキーの旅など格安のツアーがあると言い、飛行機嫌いと英会話の出来ない私(本人も)に、今までになく執拗に誘う。当初、冗談と思い軽く返事をしたのが間違いで、締め切りの前日、ロッキーかオーロラのどちらか選択してと言われ、聞いてみると既に申し込みはしており、明日までに旅行会社に連絡することになっていた。「そんなこと聞いてないぞ」と言いたかったが、計画は既に進行中でカナデイアンロッキー・バンクーバー6日間の旅に参加することとなった。
 5月17日(水曜)関空17:00出発、総勢40名程度の中高年団体旅行である。日本人乗客も多く、添乗員付と言うこともあって国内旅行気分で搭乗、約9時間の眠れない旅がはじまった。バンクーバーにはカナダ時間の午前10時過ぎに到着、空路カルガリーヘ乗り継ぎ、専用バスでカナデイアンロッキーの町バンフに到着した。約3時間程度バンフ内を観光の後、午後8時頃バンフ・スプリングスホテルにチェックインとなった。ホテル内のレストランで遅い夕食の後、ペットに吸い付けられるように眠りについた。

     バンフ・スプリング・ホテル

 翌朝、7時半、専用バスによるコロンビア大氷原までのカナデイアン・ロッキー観光に出発した。
この時点で家内は寝不足と時差呆けにより居眠り状態であった。私はカナダの大自然を目の前にして居眠りは出来ず、大自然を目に焼き付ける如く、自分自身で感動し、時々気持ちよく寝ている家内を起こす。コロンビア大氷原のアサバスカ氷河を雪上車で観光、アサバスカ河畔、ボウ河畔の眺め、そして日本の山岳には見られない山々を堪能しながら1日が終わった。その夕刻、添乗員の方にお願いして急遽、以降のオプショナルツアーをキャンセル、二人でバンフ、二日後のバンクーバー観光を単独行動した。バンクーバー市内では宿泊したハイアツトリージェンシーホテルを11時頃出発、市内観光に出かけた。午後2時頃、家内の希望もあって和食または麺類店を探していたところ、同じツアーの人達(大阪の主婦二人組)に出会い、誘ってラーメン店に入った。食事中に「お宅ら全然見かけへんけど同じツアーと違うの」と言われ、ツアーをキャンセルして単独行動してますと言ったら、主婦の一人から「お宅ら夫婦と違いまっしやろ」とニヤニヤしながら言われ、家内と顔を見合わせ戸惑いました。慌てて訂正しようと思ったら、「夫婦に見えないでしょ」と家内が反対に切り返した。結果、家内が可成り若く見られたようで、一人で喜んでいた。
途端に私は気分が悪くなり、トイレで二度ばかり吐いて顔面蒼白でもどり、ホテルで暫し休息の羽目とになった。翌日は、時差呆けも解消し体調はバッチリ、これからと言うところでツアーも残り僅か、カナダの大自然を満喫できず、中途半端な状態に戸惑いながら帰国の途についた。帰国後、来年もう−度カナダをゆっくり旅したいと宣言し、慌しい日常生活に戻ることとなった。

【再び訪れるカナダ】
 昨年の7月、夏休みを利用して個人旅行を計画、4月頃から準備を進め、地球の歩き方(カナダ編2001年度版)などカナダに関する情報を収集した。計画は「自由にのんびり」をテーマに、カナダ鉄道の旅とレンタカーによる移動とした。チケットと宿泊予約は兄の友人が経営する流行会社に依頼、国際運転免許の申請、いよいよ単独カナダ旅行の出発となった。

7月14日(土)関西空港(16:20発)
7月14日(土)バンクーバー(10:15着)
       グランビル・アイランド観光
7月15日(日)バンクーバー駅(17:30発)
      (VIA Rail Canada)
       シルバー&ブルー鉄道の旅
7月16日(月)ジャスパー駅(11:15着)
       レンタカーにてマリーン湖観光
       ジャスパー国立公園、マウント・ロブソン州立公園観光
       ピラミッド湖(フイツシング)、パトリシア湖
7月19日(木)ジャスパー出発、ヨーホー、バンフ国立公園観光
7月20日(金)バンフ観光:バンフ発祥の温泉
       ケイブ&ペイスンなど観光
       レンタカーにてカルガリー空港ヘ
7月21日(土)バンクーバー市内ショッピング、
       バンクーバー空港(15:00発)
7月22日(日)関西空港(16:00着)

 関空出発日の7月14日は前日に梅雨あけ宣言が出された真夏日となった。今回は乗り経ぎ、チェックインなど、全て自分達で交渉しなければならない緊張と不安の中での出発である。機内では比較的リラックスでき、ハーフワインを3本を飲み干し、機内食と映画鑑賞で、そのまま眠りについた。家内は少し寝不足状態であったが、現地時間の10時過ぎに無事バンクーバー国際空港に到着、いよいよカナダ単独旅行のはじまりである。
 到着後、最初のトラブルに見舞われた。観光客の波に押されながら入国審査ゲートに向かう途中、家内が突然気分が悪いと通路の隅に座り込んだ途端、乗り物酔いで嘔吐、機内ではその様なことは言ってなかったので家内の急変に驚いた。聞いてみると着陸時に気持ち悪くなり、ゲートが人の重みで揺れ、我慢する事が出来なかったようである。
場所が通路で吐物処理のできるトイレが近くに無く、何処か場所を探していたところ、後方に女性職員の姿が見えたので、助けを求めた。Excuseme.Mywife vomiting help!(英語を並べたら通じた)早々に飲み水と濡れタオルをもって現れ、座り込んでいる家内の手など拭いてくれた。私は吐物を持っていたハンカチで採ろうとすると、Are you transfer?と聞き取れたので、ついつい「イエス」と言って、その場を立ち去ることとなつた。本当に申し訳ない思いで入国手続き、無事カナダに入国、空港バスで12時過ぎにチェックインすることが出来た。2時間ほどの休息後、夕食を兼ね市内観光に出発、最初の目的はグランビル・アイランドである。
グランビル・アイランドはバンクーバー市の南西部とダウンタウンを結ぶグランビル・ブリッジの下にある半島状の一帯で、かつては製材所などが並ぶ、工場の密集地で1973年にウォーター・フロント再開発により、建物をできるだけ残し、内部を改造、観光と市民が楽しめる場所として開発された。パブリック・マーケットをはじめアートギャラリー、小劇場、レストラン、地ビール醸造所そしてストリートミュージックなどが楽しめるミニ・アイランドである。ホテルからタクシーで15分程度と聞いていたが、ウォーターフロントセンターまで歩きバスターミナルの観光案内に無料マップを見つけ、真つ赤なグレイライン・ダブル・デッカー(二階建てバス)による巡回バス(目的地まで1時間30分)に乗ることとなった。バスターミナル付近で運転手らしい人に勇気を出して開いてみるとOKがでて、乗り込んだ。チケットを持ってないと言うと、笑顔でノーそして愉しんでください言われ、何からない内にバスは出発した。ダウンタウン、スタンレー公園、ローズガーデンそしてイングリッシュ・ペイなどを観光、目的地に近づくと、Have a Nice Day と言って降ろしてくれた。(通常は大人Cj25、二人でCj50)後でレストランで開いてみるとスト中で、バスの運行はするが観光客からは料金を取らない、私たちにとっては嬉しいストであった。地ビールを飲みながらストリートミュージックを愉しみ、小物売り場そしてマーケットでは新鮮な果物を色々と試食しながらカフェ・レストランで夕食、カナダの初日が終わった。

    VIA鉄道(S&B)バンクーバー駅

 翌日、11時過ぎにチェックアウト後、VIA鉄道バンクーバー駅に向かった。この駅はカナダ大陸横断鉄道を代表するカナデイアン号の始発駅で、石造りの威厳のある建物は鉄道輸送が花形であった時代を彷彿させてくれる。取りあえず手荷物を預け、近くのチャイナタウンに昼食と観光に出掛け、午後4時ごろに駅に戻った。
 S&Bカウンターで乗車手続きをしたところ5時過ぎと言われ、1時間ほど待った。だが出発の10分前でも手続きが出来ず、心配していたが、漸く予定の15分過ぎに手続がオープンとなり乗車券を提出、ホームに入ることが出来た。ホームに入るとワインと生演奏のサービスがあり乗客が愉しくダンスに興じている姿をみて、大陸的だなとつくづく感心しながら、私もパンジョーのリズムにつられ、ワインで出発までのひとときを愉しんだ。いよいよ鉄道の旅が始まる。列車はゆっくりとホームを離れ、約20分ほどで車窓から牧草地帯が広がってくる。そしてフレーザー川の渓谷沿いを走り、山頂に雪を抱いた2000m級の山々が連なっているのが眺められた。座席は少し高くついたが個室寝台(昼間は通常座席)を予約(夕食:アルコール付、朝食)、これにラウンジ、ドーム・カー(展望デッキ)およびスモーキング・ルームに自由に出入りできる事とドリンク類無料のサービスが良かった。出発後、暫くして個室寝台担当の乗務員(23才のハンサム・ボーイ)が説明に来てくれたが、話しが半分以上は解らない。しかし食堂車の営業時間、喫煙車およびラウンジの車両番号を聞きだし、ペットメイキング時間を出来るだけ遅くしてもらうことをお願いした。(家内がチップ4jとはずんでしまった??)私たちは景色を眺めながらの食事を楽しみにしていたので午後7時前に食堂車に向かった(日没は午後9時頃である)。合い席ではあったが、ブルーのテーブルクロスに生け花が飾られ寡囲気も良く、フルコースのディナーとワイン、そして美しい景色に美味しさも倍増、贅沢なひとときを過ごした。
 最初、合い席でヤパイなと思いながら、カルフオルニアからトロントまで列車の旅をしている牧場主のビルさん夫妻(73才)に出会った。いろいろと会話をしながら、家族のこと、仕事のことそして旅行の目的など下手な英語が通じ、途中から景色のことを忘れて会話に熱中、2時間ほどの夕食が終わった。その後、私は食後の喫煙モードに入り、家内を部屋に残し−一人ラウンジ&スモーキングデッキに向かった。そこには7人の外人さん(ここはカナダ、私も外人?)が喫煙中で、ドキドキしながらソファーに腰掛けた。しばらくタバコを吸うことに集中し、出来るだけ会話を開いていることとした。一人の女性が首にコルセットを装着しており、なにやら病気の話しになり、途中から勇気を出して輪の中に入りました。中年女性(最初は男性と思った)はアメリカ人でメチヤクツチヤに早い英語で全く解らず、隣にいた男性が(Do You understand?)と開かれ、ノーと答えると、男性は解りやすい綺麗な英語で説明をしてくれた。お陰でこの女性は弁護士、男性はメディカル・ドクター(専門は精神科医:Dr.トム)であることが判った。ここでもワインを飲みながら家内のことも忘れ、午後11時頃まで会話を愉しむと言うよりも、Drトムさんによる英会話教室を堪能した。とにかく愉快な人達でした。座席に戻ると寝台に代わっており、アルコールの酔いも手伝ってか翌朝7時ごろまで熟睡した。車窓からはカナデイアン・ロッキーの最高峰である雪を抱いたマウント・ロブソン(3954m)が朝陽に映える。ムース湖、イエローヘッド湖そしてミエテ川を過ぎたころ目的地であるジャスバーに近づいた。乗務員がVIA鉄道(SILVER&BLUE)記念乗車証明書を持って目的地に近づいたこを知らせてくれた。午前11時過ぎ到着、ジャスパーの天候は晴れ、気温21℃快適なコンディションである。翌日ホテルで車を借りる予定であったが駅構内でハーツ・レンター・カーを見つけ、観光する時間が十分あったので1日早く契約する事となった。レンタル日程と乗り捨て場所そして保険の加入を確認後、キーを手渡された。車種はグリーン・ブルーのカムリ(日本車)、駅構内駐車場にあると言われが、そこまで案内してくれない「カムリは見たこと無いちゅうねん」と私は笑顔でつぶやきながら駐車場へ。らしき車にキーを差し込むとロック解除、まず、ホッとして車の周りをチェック、荷物をトランクにそして繰作方法をチェック、運転感覚、右側走行を駐車場で練習後、国道に出るため右折した。途端に家内が「左側を走ってるで!!!」の叫び声であわてて右に車線変更、前方100mに車、二人ともホッとして暫くの間、無言で高速道路並の国道を東方向へ。20分程度走ったところで漸く運転も慣れ、右折・左折の練習そして∪ターンし、目的のホテルに向かった。

    マリーン・レイク(ジャスパー国立公園)

 午後からカナデイアン・ロッキー最北に位置するジャスバー国立公園の散策となった。カナダで7番目に指定された広大な自然公園は、深い針葉樹林と800を越える湖沼の美しさが自然のままに残されている。豊富な自然に囲まれたジャスバーの町はこじんまりとしたロッキー、高原リゾートの中心である。ツアー客は殆ど見られず個人旅行者が多く、走行する車は極端に少ない。国道から脇道に入ると乗用車とキャンピングカーが時々すれ違う程度で、私たち専用道路を走っている気分でノンビリとドライブを愉しみ、マリーン湖に向かった。道路沿いを流れるマリーン川は、大さな河川ではないが水量が多く、道路を縫うように流れを創っており、道路との高低差が無く、川面をじっくりと覗くと川底の岩肌がみえ、今にも大きな鮭が遡上しそうな光景である(この川には60cm級のトラウトが生息しているらしい)。幾度か休憩をとりながら2時間ほどでロッキー最大の氷河湖のマリーン・レイクに到着した。最大幅が22km、最大水深は1km、ここで1時間30分のボートクルーズに参加することとなった。クルーズの案内は若い女性二人(これがまた二人とも可愛い)が大型ボート(45人乗り)を交代で操縦し案内してくれる。私たちは最前列に陣取り、氷河を抱いた山々、カヌーを愉しんでいる人々を眺め、目的のスピリット・アイランドに到着した。展望台からの美しさは格別で、スカイブルーの空そして湖面の色彩がマッチし、カメラのファインダーを覗いているだけで絵ハガキ状態である。

      スピリット・アイランド(マリーン・レイク)

 午後からの眺めは太陽の光で更に素晴らしい景観を作り出してくれた。(午前中は逆光で写真撮影は午後がおすすめ)その後、河畔で遅い昼食となった。そして、マリーン渓谷に向かった。渓谷はマリーン川に削り取られた石灰岩の渓谷で、垂直に50m落ち込む景観は見ごたえがあり、渓谷入り口から渓谷に添って幾つかの橋が架けられている。橋から落ち込みを眺めていると、どんな渓流魚が生息しているのか想像してしまう。ロッキーではこの様な渓谷が、いたるところで見られ、その中でも最大規模の渓谷と言われている。午後6時頃ジャスパーに戻り、町の観光と夕食に出かけた。夕食は町の人達の生活を少し覗きたいため、住宅街にあるスーパーマーケット、ファミリーレストラントに入った。マーケットでは明日の和食と飲み水を買ったが、意外にお土産になるものも多く、値段も安い、明日まとめて購入することとした。フアミレスは観光客相手の店に比べると値段も安く、メニューも豊富で「お子様ランチ」を見つけ注文、日本人の胃袋に丁度良い量である。

明日は是非チャレンジしたいと思っていた、湖でのフイツシングである。
 翌日、午前8時の天候は晴れ、風は少しあるが絶好の釣り日和である。釣り道具、ボート、ライフジャケットをレンタル、いよいよフイッシング・スタート。手漕ぎボートで湖の中心にある島付近でアタックする事となった。まず家内にリール、ルアーの扱い、ジギング法をレクチヤー、これがなかなか上手く行かず、かなり手間取った。漸く釣りらしくなったところで、私は釣りモードに入った。2時間近くトライするが、なかなか当たりがない。移動しブッシュの周りを探る、その時、急に穂先を押さえ込む、慌てて合わせたが、フィッシュ・オンとは行かず、結局、らしき当たりは一度だけ。風が出てくると共に波浪が強くなり、誠に残念ではあったが安全を優先し、12時頃納竿となった。その後、ウイスラーマウンテンの山頂(標高2464m)からジャスパーの町並みを眺めた。展望台の北側にはアサバスカ渓谷、大小の湖、西側にはイエロー・ヘッド峠の素晴らしい眺めが広がる。アサバスカ川の東側にはボベール湖、アネッテ湖&エデイス湖があり、さしずめボベール湖はジャスパー・パーク・ロツジの庭園の様であった。この日の夕方(7時ごろ)から天候は雨に変わった。夕食は久し振りに和食レストラン(伝次郎)で寿司定食(漬け物が付いていた)を味わった。翌朝、昨日の雨も上がり、溜まっていた洗濯物を持って町のコインランドリーヘ向かった。
住宅街で洗濯物を干しているところが見当たらず、不思議に思っていたが、国立公園内では洗濯物をやたら干すことが出来ないようである。早朝のコインランドリーは住人も旅行者も利用、9時頃には洗濯物を持った主婦が集まり、愉しそうに井戸端会議で盛り上がっている。(利用料は洗濯25セント、ドライは10分で25セントは安い)10時過ぎホテルを出発、16号線をミエテ・ホットスプリングスに向かう。途中、展望のいいところで休憩をとりながら約2時間で目的地に着いた。周囲を散策していると硫黄の臭いと、ロッジが日本的な温泉風情を出しており、ここで2時間ほど休息することとなった。その後、イエローヘッド湖を散策するため16号線に戻り、マウント・ロブソン方向へ向かった。マウント・ロブソンの雄姿
は、水平に幾重にも積み重なった地層で、ピラミツド状の独立峰(3954m)に目を奪われ、暫し州立公園内を観光する。今日の夕食はホテルで予約、早めに切り上げることになった。明日はジャスパーからバンフまでの約300km(通林アイスフィールド・パークウェイ)のドライブである。ルート沿いにはコロンビア大水原、ペイト・レイクなどロッキーを代表する山そして湖や滝が次々と登場してくる。
 朝9時過ぎ、荷物を車に積み込み出発、1時間程でアサバスカ滝に到着、駐車場から直ぐにこの滝の壮大な景色が見られた。初夏のこの時期は雪解けの水を集め、まさに怒涛のド迫力と水のカを実感、近くで見ていると吸い込まれそうな迫力であった。サンワプタ滝、アサバスカ氷河までの景色に誘惑されながら道路脇に駐車し景色を堪能した。サンワプタ峠を過ぎるとBig Bend(大曲がり)と呼ばれる大きく湾曲した道路を走る。峠付近のビユー・ポイントからの、雄大な地形に圧倒された。3000m級の岩山が連なり、大岩壁から雪解けの水を集め、幾筋にも流れ落ちる姿を見て、大自然の造形に驚くばかりである。ここで、アイスフィールド・パークウェイをチヤリンコで走破しようとしている大学生と出会った。カナダ国立公園内でのサイクリングは一応、旅行日程を届ける必要があるとのこと。到着予定時間が大さく過ぎると事故とみられ捜索隊が出動する可能性があるため、予定は可成り余裕をもって計画される。
 その後、ボウ峠からボウ湖に入りレイク・ルイーズで休憩となった。ビクトリア女王の娘ルイーズ王女にちなんで名付けられたこの湖は青緑色の不思議な色の湖水をたたえ、湖面にビクトリア氷河が映しだされ、カナデイアン・ロッキー観光の中心となる。湖畔には静かな散策ルートがあり、カヌーで湖に漕ぎ出すことが出来る。ここから1号線でヨーホー国立公園に入り、1時間30分ほどでエメラルド湖に到着。エメラルド・グリーンに輝く湖面の色は、名前の如く素晴らしくされいで、大自然の営みに溜息を付くだけで、しばし言葉を失った。湖面の色は、氷河が長い年月をかけて岩盤を削り、非常に細かくなったものが水に溶け込んで太陽光に反射してエメラルド・グリーに輝く言われている。さらに1号線を南下し、午後3時ごろバンフに到着、チェックイン後、ケイブ&ペイスン観光と夕食に出掛けた。
 ケイブ&ペイスンはバンフ発祥の温泉で開拓時代の色々な資料・写真などを展示し、地下に湧きだした温泉の見学ができる。センター周囲にも温泉が湧きだし湿地帯に注ぎ込む。この小さな流れに無数の小魚が生息していた。湿地帯にはトレイルがあり、リスなどの小動物が人間を恐れず近寄って来る、思わず立ち止まりシャッターを押した。翌日は8時頃まで朝寝坊し、町のカフェで遅い朝食をとり、レイク・ミネワンカとツー・ジャック・レイク観光に出発、ここで初めて、20頭ほどのエルクらしい動物がノンビリと草を食む姿を見ることが出来た。途中、ボウ川河畔のキャンプ場に車を止め、ゆったりと流れる水面を眺め、フライ・フイッシングを楽しむ釣り人を眺めながら、スーパーで買ったパンと飲み物で昼食をとった。その後カナナスキス・ビレッジに立ち寄り、いよいよカルガリーへ。空港に近づくにつれて車の量、車線が増える、左折するために左側に寄る、途端に空港方面は右への標識が出て、あわてて右に出るも間に合わず、結局迷って地元の人に、空港方面への道のりを聞く羽目になった。なんとか空港に無事到着、レンタカーを乗り捨てた後、空路バンクーバーに向かった。翌日は午前中のショッピングの後、午後3時の飛行機で帰国の途についた。
 今回は二度日のカナダとあって、ゆったりとした旅をすることが出来きた。次回は、旅行に飽きたときに帰る(現状では無理、退職後に考えることにする)、こんな贅沢な旅が出来たらと思いながらの帰国となった。海外旅行は安全性と手軽さで、多くの観光ポイントを巡るツアーもいいが、ポイントを絞った、いわゆる滞在型の旅行も心身共にリフレッシュでき、なかなかのものと今回は感じた。最後にカナダの人達の自然を大切にする心、便利さを追求しないでそれを継続して行く姿勢、そして滞在期間中にゴミらしい物を殆ど見なかった(チャイナタウンは多かった)ことについて、カナダ国民にエールを贈りたい。帰国後「今年も」と考えていたが、アメリカ同時多発テロ発生により、現在のところ未定である。

               バンフにて(カスケード山)