日本医学検査学会参加記

天理よろづ相談所病院  岩谷 一雄

 今回第51回日本医学検査学会に参加しました。参加記というよりは感想記になりました。印象に残った事を中心に記しました。

【いざ出発】
 2002年5月14日、快晴のもと奈良交通高速リムジンバスで技師長をはじめとする男性5名、女性1名の天理組第一陣の一行は天理駅を12時15分に出発した。高速道路での交通停滞もなく伊丹空港には13時40分ころ到着した。我々一行が乗る仙台行き全目空737便は288人乗りのジャンボジェット機、席はやや後部よりでした。15時05分離陸、約2時間足らずの飛行でしたが大きな揺れもなくフライトの旅を楽しむことができました。
 仙台空港の改札ゲートは16時45分頃に出た。宮城県の南部に位置する仙台市、その東端の仙台空港から仙台市内までは西方に特急バスで走ること約40−50分の距離でした。バスは17時35分には終点の仙台JR駅前に到着しました。宿泊するホテルをめざして一行はパンフレットの地図を片手に歩くこと10分程度、大きなホテル仙台プラザや高層ビルの中に清楚な雰囲気の10階建てのビジネスホテル東横インがあらわれました。チェックインは18時頃でした。

【はじめての日本医学検査学会での発表】
 第51回日本医学検査学会の一般演題で! そう思ったのは前年の9月頃でした。かねてから検討してさたテーマが整理できつつあった時期であり11月30日の演題締切日になんとか形にすることができました。理由としては3つあり、1つには臨床検査技師としてMR検査にかかわる人が増えてきつつあったことです。以前のMR関連の演題発表は専門学会である日本磁気共鳴学会での発表がほとんどでした。臨床検査技師で構成されている当学会でのMR関係の発表は自分では初めてでした。天理病院でも2002年の4月から新たに2名の臨床検査技師がMR検査に携わるようになってきており、今後は検査技師学会内での発表も増やしていこう、そう考えた次第です。
 2つ目には前から一度仙台という地に行ってみたいという思いがあったことです。歴史的には伊達正宗、割と最近では青葉城恋唄の世界(森の都、ロマン漂う廣瀬川の岸辺)、それと高校野球仙台育英など有名な仙台。
 3つ目には2002年4月が我が夫婦の銀婚式の月にあたる時だったので、1ケ月遅れだがこの学会を夫婦の記念旅行を兼ねて一石二鳥でしよう! そう考えたところもありました。
 そこで演題申し込み直後の12月には家内の分も宿と飛行機のチケットを申し込みました。そんな3つ理由が今回の発表のいきさつです。

【2日日、発表当日】
 5月16日、今日は自分の口演発表の日なので自然に朝4時頃に目が覚めた。まずはシャワー室で湯を浴び目覚めを良くした。発表原稿に目を通し一部訂正したり、そのうちに朝6時近くになったので1階のロビーヘ降り朝食をとった。バイキングスタイルで事前の通知では数に限りがあり、なくなり次第終了と聞いていた。降りると数人がまだ準備も完全にできていないが並んでいた。後に並びおにぎり2つ、味噌汁一杯、パン2ケ、コーヒー一杯、漬物少々を順に皿と盆にのせて同フロアーの小さな丸テーブルで朝食を美味しく頂
いた。
 今日は午前中の発表なので心地よい緊張感をもって朝7時30分にはホテルを出発しました。仙台国際センター経由で第7会場のある仙台市民会館に8時10分には到着していました。会館のそばを廣瀬川が流れており、近くには公園もありました。缶コーヒーを片手に公園と廣瀬川を少しだけ散策できました。8時45分にはスライド受付完了。9時からは第6会場で神経機能関連の発表を聴いた。9時40分からの2つセクション、3演題がMR検査に関連した発表であった。1つ目は整形外科領域でのMRI、移植骨の再血行状態の評価に関する発表で、概略は造影剤を用いたdynamic MR time intensity curveにより移植骨の骨癒合過程に伴う血管組織の拡大の評価が可能であるという内容であった。そのあと私が演台の上に立ち、”Plain MRIの肝腫瘤性病変のUSと比較したスクリーニング検査としての意義”を発表しました。発表はあっという間に終わり、質疑は何もないだろうと思っていたところ3件もあった。今回の発表は、造影剤を使用しないMRI検査とUS検査との肝臓腫瘍の描出能における統計的な比較ということで、US検査に携わっている技師には多少興味を抱いてもらえた感はあった。その後の発表では肝嚢胞と肝血管腫の鑑別におけるFLAIR−HASTE法の有用性についての発表を聴いた。この撮像法での肝嚢胞と肝血管腫のCNRでの鑑別はかなり有用であり、造影剤が使用できない患者では有用となるが完全には鑑別できない。(この演者もいっていたがUSでは肝血管腫と診断されたmassがFLAIR−HASTE法では嚢胞様であったという症例が呈示されていた。)その後のセクションの発表では肝腫瘍における造影超音波(レボビスト)の有用性についてを聴いた。最近肝臓腫瘍の血行動態をみるために登場した方法で有用視されているが、汎用機種を用いた場合の問題点として、フオーカス依存性が強くなり、肝表面および深部病変において十分な造影効果が得られない事もあり、機種や撮像条件によっては注意が必要であるという問題点が指摘されていて興味深く聴いた。自分の発表を終え感じた事は医学検査学会でのMRI関連演題の少ないことに少し寂しい気も沸いてきたのも事実であった。(ちなみに過去5年間のMRI関連演題数の推移では、ほぼ横ばい状態で5年で35演題、平均3演題であった。昨年は症例発表が3題あり6題の発表であった。)11時からは文化講演を聴くため第1会場のある国際センターに向かった。
 講演は有名な哲学者桑原猛先生の、”感動と創造”というテーマのお話しは1時間あっという間に流れた。大変感動した。
 その後昨日申し込んだ12時30分発車の松島方面のバスセミナーに参加するため学会展示場のある宮城県スポーツセンター駐車場のバス乗降場に向った。1番乗りらしく引率の係の人(地元技師会の女性の技師さん)が来ておられただけであった。弁当を頂いてバスの前の方の席に友人K氏と座った。しばらくすると多くの参加者の方が次々と乗車してきたのですぐ満席になった。バスが動き出してしばらくした後に係の方からバスセミナーのコースの説明が始まり、松島に行けるものと思って乗車したがどうやら勘違いで6つのセミナーのうち1つだけ企画された行き先は宮城蔵王の見える遠刈田温泉方面へのバスセミナーであった。幾分がっかりしたが山の澄んだ空気を吸うのもよし、晴天の元弁当をいただきながらのバス旅行で気分は上々でした。まもなく大塚製薬の係の方よりバスセミナーの説明とヘリコバクター・ピロリの尿素迅速診断検査法紹介のビデオと製品解説が始まった。そうこうしているうちにバスは約1時間くらい北西方向に走り蔵王町の遠刈田温泉に到着した。
 ここは宮城蔵王の麓、宮城県北西部にあり美しい日本の自然と風情が残る町であった。さっそく徒歩で町を散策、蔵王こけし館に入館した。こけしのふるさと、こけし発祥の地遠刈田ということで製造は一工人の手で一貫して行われているそうだ。
 各地にこけしがあるが遠刈田のこけしは大きめの顔と細い胴が特徴だそうで、顔にはやさしい微笑みがただよう。我が子に与えたのが始まりだそうで、山村の子供たちのおもちゃとして愛用されるうち時代の流れとともに土産品として販売されるようになったとのこと。その他には蔵王チーズ工場も有名とのことでチーズ工場に立ち寄ろうと看板広告を見ながら徒歩で向かった。あいにく路は緩い長い登り坂でありけっこう距離があった。途中で疲れてきたのとほんとにあるのかも半信半疑に思えてきたので途中で引き返してしまった。後で聞いたところでは大変立派な工場があるのだそうだ。こけしの代わりに蔵王の地酒を土産げに買い求め学会場への帰路についた。

【最終日】
 学会3日日の17日は、有休をとっての参加となった。生理部門のいくつかの発表を聞いた後、会場を後にして仙台市内に足を運んだ。あいにく小雨がばらついてきていた。せっかく仙台の町を散策するつもりではいたが、この雨ではと諦めた。
 飛行機のフライトの時間は18時だったのであまり時間もなかったので仙台駅の周辺を散策することにした。どこかの県庁所在地の駅前に似た風景にも感じた。ただこの季節の仙台は空気が澄みわたり町並みも整然と美しく思えた。仙台駅西口前に15階建てぐらいのデパート風ビルがあり中に入ると各階にはいろんな種類の店があった。遅めの昼食もその地下街でとった。各種試食用の品はなかなか美味であった。このビルの6階には書店があり、階全体を占める広いスペースにいろんなジャンルの本、専門書が細かく分類され整然と並べられていた。とにかく書籍の種類の多いのには驚いた。書棚のそれぞれの脇には小さめの机と椅子がすべてのコーナーに置かれ、落ちついた雰囲気が漂う空間で読書できるスペースが用意されていたので時間を忘れてしばし読書。1〜2時間駅周辺で散策した後時間がせまってきたので仙台空港行きの特急バスに乗った。
 飛行機は予定の18時35分に伊丹にむけて仙台をあとにした。今回の出張で一部ではあったが仙台の旅情を味わうことができて良かった。また全国学会発表ということも体験でき、有意義な時間を持てたことに感謝したい。