奈臨技ニュース
平成20年7月号 第170号 2008年 7月 1日 |
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第57回日本医学検査学会が5月29日から5月30日まで札幌で開催されました。今回、参加された方に新しい話題を提供してもらいました。 *パネルディスカッションから* 1.尿沈渣検査における癌細胞検出について 癌研有明病院の八木靖二氏によると、尿沈渣検査における異型細胞の判定はPap染色による細胞診検査より格段に検出感度が高く病型の判定も可能であるとの発表があった。Pap染色はアルコール固定による細胞の収縮が腫瘍性判定を困難にしている。また、尿沈渣検査では、S染色にて異常を感じたら強拡大で良く観察し、無染色にて細胞起源を推測し判断していく必要があり、両者の併用が重要とあった。尿沈渣検査の質的向上を目的に、マニュアルや教育カリキュラムなど教育体制の構築をさらに推し進めるべきと強調されていた。(文責?天理よろづ相談所 林田) 2.腎移植における感染制御について 市立札幌病院の笹木氏によると、最近の腎移植は、新しい強力な免疫抑制剤であるタクロリムスやミコフェノル酸モフェチルの開発により拒絶反応が減少しているが、過剰な免疫抑制から、従来問題とされなかった感染症の発症がみられるようになり、今後も増加する可能性がある。CMV感染症、EBV感染症、BKポリオーマウィルス感染症(BKV)、ヘルペス感染症、真菌症、原虫感染症などの中で、特にBKVによる移植腎機能障害が近年注目されており、診断にはPCR法によるウィルスの検出が重要であるが、尿沈渣検査によるdecoy cellの検出も有用である。今後、腎移植のさらなる成績向上には、移植後の感染症の早期診断、早期治療が特に重要と述べられていた。 (文責/天理よろづ相談所 奥村)
*セミナーから* 3.可溶性フィブリンモノマー複合体測定について 富山大学大学院の北島勲先生は、可溶性フィブリンモノマー複合体(SFMC)測定が2007年9月に保険収載されたにもかかわらず、検査件数に大きな変動は無く、臨床的意義の啓蒙が不十分である事を指摘している。生命に関わる血栓疾患において急性期の病態把握に有用であり、左心房内血栓や生体肝移植の急性期拒絶反応のモニタリング、さらに人工股関節置換手術による深部静脈血栓による肺血栓塞栓症のモニターなど様々である。特に肺血栓塞栓症の高リスクである整形外科による股関節膝関節の手術では、手術直後のSFMC値が40μg/ml以上の患者でそのリスクが急激に高まる。また、全身麻酔の使用薬剤によってもそのリスクは大きく異なり、一般的に使用されているセボフルランに比べ、プロポフォールの使用がSFMC値の上昇を抑える効果があるとの驚くべき発表があった。(文責?天理よろづ相談所 林田) *血液部門 一般演題から* 4.血管内大細胞型B細胞性リンパ腫について 4施設より、血管内大細胞型B細胞性リンパ腫(intravascular large B-cell lymphoma:IVL、びまん性大細胞型Bリンパ腫の一亜型)の症例報告があった。IVLはこれまで,非常に稀な疾患とされていたが、近年、特に本邦において症例報告が増加している。 IVLは、全身の小・中血管内で腫瘍細胞が増殖し、明らかなリンパ節腫大や腫瘤形成を認めないため診断困難であり、さらに予後不良から剖検にてはじめて診断されることが多い。病型には,血球貪食症候群を主徴とするアジア亜型血管内リンパ腫(Asian variant of IVL;AIVL)と、神経,皮膚症状を主とする古典的な血管内リンパ腫(classical IVL;CIVL)に分類されるが、今回の症例中3例がAIVL症例であった。 主に見られた共通の臨床および検査所見は、不明熱と倦怠感を主訴とし、 LDH、sIL-2R、フェリチン、CRP高値と血小板減少で、この様な場合IVLを強く疑い、末梢血標本を丁寧に観察してやや増加した単球やそのマクロファージ様変化、さらに極僅かに出現する大型の異型細胞の検出(骨髄血でも同様)が診断に結び付く重要な所見であると述べられていた。(文責/天理よろづ相談所 奥村) |
<新企画>
職 場 紹 介 |
奈良県立三室病院中央臨床検査部 吉村 豊 当院は、奈良県北西部の三郷町三室の大和川畔にあり、15診療科、300床の総合病院です。春には、病院敷地内の桜が満開になり、とてもきれいで心が和みます。 検査部紹介の原稿依頼を頂きましたが、私は異動したばかりでまだ病院のことはよく分かっていません。よって検査部内のわたしが日々仕事をしている検体検査部門について、紹介させてもらいます。 検体部門は、ワンフロア−で6名のスタッフが生化学・感染症検査、血液・止血検査、輸血検査、採血業務を担当しています。生化学・感染症検査は、日立7250、7070及びルミパルスで測定し、血糖・HbA1cは専用機を使用し多くの至急検査に対応しています。血液・止血検査は、コールターLH750、シスメックスCA-1500で測定し、ほかにマルクを行い、輸血検査は血液型、不規則抗体検査、および交差適合試験を実施しています。採血は、2〜3名(看護師1名含む)で1日約150人の採血を行っています。他にも予約業務など多くの業務があり、限られたスタッフで、連携しながら行っています。 |
生涯教育研修会のお知らせ
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テーマ:危機的出血
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「平成20年岩手・宮城内陸地震」で被災された方々が1日でも早く日常生活に戻れますように復興支援のための義援金を募ります。義援金は一口100円で何口でも構いません。 また、書き損じの年賀ハガキでも可能です。至急 事務局まで届くようにお願いいたします。 全会員のご協力お願いいたします。 |
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7月号より新企画を掲載しました。行事予定も学会等わかる範囲で掲載したいと思います。
広報一同
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