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サモアからの手紙「サーモアだよ全員集合」
県立三室病院→サモアナショナルヘルスラボラトリー 岡美也子

今、私はサモアで臨床検査技師をしています。

「なんでサモアで臨床検査技師なん?」かというと、青年海外協力隊の試験を受けて合格通知書を受け取った時そこに「派遣国“サモア”」と書かれていたからです。派遣国は協力隊要請国の要請内容と本人の経験を照らし合わせて決まります。サモアの要請は細菌検査の経験があることというのが条件でした。そして長野県の駒ヶ根訓練所で79日間の派遣前訓練を受け、昨年の12月にサモアにやって来ました。サモアで1ヶ月の現地訓練の後、配属先にて仕事をはじめました。            

*協力隊についての詳しいことは、JICAのホームページhttp://www.jica.go.jp/Index-j.html もしくは奈良県国際課へお問い合わせください。

「サモアっていったい?」どんな国かというと、南太平洋に浮かぶ蒸し暑いけど歌と踊りにあふれて陽気でいることをモットーにしている人たちの国です。自分が派遣されなければ知ることはなかったでしょう。地図を広げると、太平洋を二つに分ける日付変更線をアラスカからドンドン南にくだっていき赤道をこえて日付変更線が1回2回と曲がったあたり、東側に“サモア”または“西サモア”を見つけることが出来ます。大きな2つの島 ウポル島とサバイイ島と小さい7つの島からなっています。国の面積は、9つの島を合わせて神奈川県と同じくらい小さく、人口は17万人です。1997年に国名が“西サモア”から“サモア”に変わったので、古い資料では“西サモア”で記名されています。

「ほんでサモアには来たけども、暑い。暑すぎる。12月やっちゅうのに。しかもこの暑さが1年中続くっちゅうやんか。ぞっとするなぁ。」というのが来たころの印象です。1ヶ月の現地訓練は主にサモア語の訓練が目的でしたが、実は暑さになれる訓練だったのではなかろうかと思っています。

「サモア人ってどんな感じ?」歌と踊りが大好きで、好奇心旺盛で陽気でフレンドリーな人たちです。キリスト教の国なのでサモア人は毎週日曜日には教会にいき、賛美歌を歌ってます。教会で鍛えた歌声は本当に上手で、特にハモって歌うのが得意です。たとえば、ラボでラジヲが流れていたとすると、サモア人はとりあえず体を曲に合わせて動かし、いっしょになって“大声で”歌います。一度こんなことがありました。ラジヲからみんなが好きな曲が流れてきて、3人のスタッフが前奏を待っていっせいに歌いだしました。それもやっぱりハモっていたのでした。「楽し過ぎる!!」じゃないですか。もともと歌うことが好きで、突然踊りだす癖がある私も(?)「この人たちとうまくやっていくためにも、わたしも歌って踊れる検査技師になるしかない!」と決心し、シバヤパニ(日本の踊り)炭鉱節!をご披露しました。披露して1週間くらいは、私と廊下ですれ違う時に「つきが〜〜」と歌いだすサモア人がいたくらい評判が良かったようです。今になって振り返ると、スタッフは赴任したてで緊張している私の気分を和ますために、歌ったり踊ったりしてくれていたのだと思います。サモア人というのは人の気分の移り変わりに敏感で、みんな陽気でいてほしいといつも思っている人たちだと思います。私が「ムッ」としていると、「ミヤコどうしたんやー」「何を怒ってんのぉ」「Dont worry. Be happyやで」と声をかけてくれます。外国人に対しても、そうやって声がかけられるサモア人の懐の深さを感じます。

「職場は?」ウポル島にある首都アピアにあるTupua Tamasese Meaole Hospital(TTMH) の検査部の微生物査室が仕事場です。Tupua Tamasese Meaoleというのは、サモアがニュージーランド統治から独立した時のマタイ(酋長)の名前だそうです。TTMHはサモアに2つある国立病院のひとつで、市街地から10分くらい離れた山際にあります。建物は、1階―2階建で、階段状に平たく並んでおり、病棟、事務部棟、レントゲン棟、検査部棟、管財部棟、オペ室棟、給食棟などがありそれぞれの棟が渡り廊下でつながっているという感じです。病床数206床、診療科は小児科、心臓科、一般内科、耳鼻咽喉科、眼科、外科、産婦人科、糖尿外来科、リュウマチ科、整形外科 があります。「途上国やし、どんな病院だろうか」と思って来ましたが、思いのほか規模の大きい病院でした。

「検査部は?」部長、技師長の下に血液バンク、血液検査、生化学検査、病理検査、微生物検査検査(一般検査を含む)の各検査室、衛生検査(水質、食物)、検査技師学校、Malietoa Tanumafiri世病院(MT病院:サバイ島の国立病院)の検査室があります。また、この検査室はアピア中の個人病院の検査も行っています。個人病院へ行った患者が依頼用紙を持って検査部の受付にやってきて、採尿、採血などを行ってここの検査部に提出していきます。結果は受付にあるボックスに入れられ、各病院からメッセンジャーが取りに来ます。また、2年程前にオーストラリアの援助でコンピューターが導入され、検査結果が病棟や外来で知ることができるようになっています。しかし問い合わせはもっぱら電話で行われること、コンピューター入力がとても煩雑なことから、「結果のコンピューター入力もうやめようや」と言いたい所ですが(一度言ってみた)、「院長や事務長などが検査室の仕事量をこれでチェックしているんだ」というカウンターパートの言葉に返す言葉もなく、大嫌いなコンピューター入力に毎日取り組んでいます。
検査はほとんど用手法です。自動分析器が導入されたことが何度かあるようですが、メンテナンス不行き届きなどによりいまや粗大ゴミとなって検査部のあちこちに転がっています。病理の自動包埋器も壊れており、人間包埋器が作動中です。すべての機械類は海外からの輸入になり、修理をするにも海外に送ったり海外から専門の人に来てもらったりせねばならず、その費用などが絡んで手付かずのものが多いようです。こんな時にサモアが島国でありながら、すべてを自国で供給できない国であることを知るのでした。

「微生物検査室Microbiologyは?」細菌検査、一般検査(尿、便潜血、寄生虫)を行っています。一般検査がMicrobiologyに含まれていることに最初は戸惑いましたが、同じ検体をあちらこちらに移動させる手間が省け尿検査の結果を尿培養の結果判断に活かせるのでとても合理的な方法だと思います。日本でいうところの一般検査が微生物検査室の一部になっている形は、ニュージーランド・オーストラリアでは普通だそうで、サモアにとってはこの2国がスタンダードなのだと実感します。一般検査はディップスティックで定性を行い、顕微鏡検査へ進みます。細菌検査も塗抹、同定、薬剤感受性検査(ディスク法)と進みます。血液培地の血液はBlood Bankで期限が切れたような血液をもらってきて作ります。簡易同定キットもあり、たいしたものです。私のカウンターパートも経験20年以上のベテランで、赴任当初の感想は「私なんて、いらんやん」というものでした。実際に私がいなくても、やっていけるのです。そんな私の2年間の課題はマニュアル作りと在庫管理システムの構築を2本柱に、入れ替わり立ち代りやってくるスタッフの指導をカウンターパートと共にやっていくことです。在庫管理は必須です。というのも検査試薬から培地のための滅菌プレートなどほとんどすべて、ニュージーランドかオーストラリアから調達しており、しかもサモア国内で使用しているのはこの検査室だけというものばかりなので、もし何かを使い切ってしまったら(よく使い切ってしまう)「はい、検査できません。」となってしまいます。また、何か新しく「これをしたい」と思ったところで、「これ」をするためのものが揃わないことが多く、任期終了後の2年後にも何も変わらないのではないかではないかと思うと悲しくなります。が、「私ごときの若造がおおそれたことなぞで切るかい!」と開き直って楽しく日々過ごしています。
サモアにやって来て一番驚いたのは、S.Typhiが多いことです。初めて血液培養からグラム陰性かん菌がでた時「チフスや」というスタッフに対して「大腸菌や!」と私は思いましたが、結果は経験者の言う通りS.Typhiでした。その後も続々と検出されています。1月から5月までの血液培養の菌の検出状況を 表1に示します。今では、「陰性かん菌を見たらチフスと思え」ということが私の常識になリました。また、ココの検査室はサモアで唯一細菌検査ができる施設なので、S.Typhiが検出された家族の糞便検査も行います。サモアでは、大家族で住むのが一般的なので1件のS.Typhiのケースに対してどっと糞便がやってきます。あぁ、今日もまた、、、、、。
検体数 陽性検体 S.typhi GNB CNS S.aureus others
1月 66 15 11 1 13
2月 85 11 5 1 1 1 3
3月 95 27 10 2 8 3 4
4月 127 32 12 4 9 1 6
5月 139 35 7 18 2 8
512 120 45 26 23 13 13
表1:血液培養からの検出菌(2000.1〜5)

「サモアな生活」を半年経験しました。自分自身が、かなりサモア化しているだろうと思います。新鮮に感じたいろいろなことが当たり前になってきて、仕事に関しても妥協してしまうことが多くなってきたように思います。「サモアやし、、。まぁええか」と。(いやいや医療人としてのモラルは守らねば!!)このままでは、日本での社会復帰が危ぶまれます。
どなたか「カツ」を入れにサモアまで来ていただけませんか?「あぁ。日本ではそうやったぁ」と私に思い出させてください。ほんまにお待ちしております。

こちらに来てホームページを作りました。興味がある方はご訪問ください。
ホームページアドレス 

http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Kaede/6718/index.html


E-mail アドレス    

okamiya@lesamoa.net
住所     c/o JICA SAMOA OFFICE  P.O.Box #1625 Apia, SAMOA

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