日臨技より各都道府県技師会に熊本地震の支援要請があり、5月3日〜5日に「ゴールデンウィーク熊本地震エコノミークラス症候群フォローアップ検診」が行われました。
日臨技としてこのような災害支援活動を行う事は初めての試みであり、私も奈臨技事務局長よりお話をいただき、とても貴重な経験の機会を与えていただきました。
主には下肢静脈エコーを中心に支援活動を行うという内容であり、震災から5日後に車中泊の被災者が肺塞栓による死亡というニュースが流れたこともあり、下肢静脈血栓症に関心が高まっているときでした。奈良県からは私の他にも3名の技師がDVT検診に参加されており、皆様大先輩であり私のような超音波検査を多少かじった程度の若輩者では荷が重いなぁ…と思いつつ熊本まで旅立ちました。
期間中の対策本部は熊本保健科学大学となっており、宿泊は大学の体育館で技師会が準備してくれた寝袋で寝ました。床は固くなかなか寝付けず、また夜中には余震で目が覚めるなど初日から不安な夜を経験しました。ただこの時期には水道や電気などは復旧しておりこれらの心配をすることはなかったのですが、震災直後は断水のためトイレ・シャワーは不可、度重なる余震(しかも震度3クラスが普通)、集団での避難生活……などを考えると被災者のストレスは想像を絶するものであると感じながら、一晩を過ごしました。
朝は8時からミーティングが行われ、初日には熊本技師会会長から今回の作戦名「がまだせ!熊本ブルドーザー作戦」が発表されました。「がまだせ」とは熊本弁で“がんばれ”という方言で、3日間集中してDVT検診を実施し、支援活動を行うという趣旨でした。支援活動は5〜6グループに分かれて熊本市内の避難所を訪問して行いました。各グループのリーダーには新潟中越地震や東北震災時に実際に支援活動経験のある技師が加わり、また避難所では東北震災時に活躍された福島医大の医師・看護師も同行してくださりました。このような方々と支援経験の情報交換ができ学ばせていただいたことはよい経験でありました。
私の活動場所はアクアドームくまもとという国体等も行われるような大きな体育館と市内の避難所に指定されている公民館でした。どちらの施設も館内は会議室やホール、さらには廊下まで至る所に段ボールや毛布が敷かれており、避難生活の過酷さを目の当たりにしました。この中でわずかなスペースを借りて検査場所を確保しました。検診希望者には問診から血圧・SpO2測定を行い、下肢エコーを施行しました。エコーは下腿を中心に血栓の有無を検索し、血栓を認めた場合は採血(D-dimer測定)も行い、エコー所見(血栓の新鮮・陳旧性など)と合わせて医師から医療機関へ紹介していただきました。血栓を認めない場合でも、静脈径が太い場合や問診にて血栓症のリスクのある方には弾性ストッキング指導も行いました。私はストッキング指導の経験はなかったのですが、医師や看護師に指導いただき不慣れでしたが実践でき、貴重な経験でした。
この支援活動への参加者は約100名(現地学生ボランティア含む)で、検診者は3日間で約700名に至ったそうです。被災者の方々は今後の生活や仕事、家族や健康面など多くの不安を抱えられており、今回私達が関わったのはこれらの不安の中のごく一部でわずかな時間でありました。活動前は自身も初めての経験であり本当に支援活動になるのか不安に思っていましたが、不慣れながら検査や予防策の説明などをすることで、安堵の声や感謝の言葉を頂け、少しでも被災者の不安軽減になったのであれば良かったと思いました。
今回の活動を通じて、日臨技として災害時のDVT検診ガイドラインが確立され、今後どの地域で災害が起きても被災地技師会と連携して迅速な支援活動が行える体制を目指さなければならないと感じました。