奈臨技生理機能検査部門では「きれいにとれる」シリーズとして、生理機能検査の各検査について、検査の原理や臨床的意義、わかりやすい結果を正確に臨床側に報告するための検査のコツ、について研修しています。
その中のほんの一部ですが、当日に使用した資料を掲載させていただきます。
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疾患編
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誘発筋電図検査

 末梢神経を電気刺激した際に、神経やその支配筋から発生する活動電位を記録したもの。主として末梢神経の機能評価に用いられる。代表的な検査項目にはMCV、SCV、反復刺激検査、瞬目反射などがある。

運動神経伝導速度:MCV(motor nerve conduction velocity)

 近位部と遠位部の運動神経を経皮的に刺激し、支配筋より活動電位(M波又はCMAP)を記録する。そして、それぞれ導出した波形の潜時差で2点間の距離を割り速度(m/s)を求める。

知覚神経伝導速度:SCV(sensory nerve conduction velocity)

 手指や足趾の神経には運動神経が含まれていない。これらの部位を利用すれば、知覚神経活動電位(SNAP)が容易に記録できる。
 経皮的に神経を刺激した時には、運動神経と知覚神経は同時に刺激されていることになる。
 したがってSNAPだけが記録できるような手指先端部を利用すれば知覚神経の伝導速度を求めることができる。(逆行性測定法)
 SNAPはCMAPと異なり神経そのものの電位なので、神経筋接合部や筋収縮時間は含まれない。従って刺激部位はMCVと同じでよいが2点刺激でなくても1点刺激で検査は可能である。

*注意点

神経走行や筋の解剖学的位置を理解しておかなければ正確な検査はできない

刺激が弱ければ正確な伝導速度を求めることができないので、できるだけ最大上刺激にて検査を行う。
神経伝導速度は温度の影響を受ける神経近傍の皮膚温が32℃以下では1℃あたり2.4〜2.8m/sec低下する。
距離と潜時の計測は伝導速度算出には重要でこれらを正確にしないとデーターの誤差は大きくなる。


正常値

伝導速度
上肢:50m/s以上
下肢:40m/s以上


結果の解釈

伝導速度低下、Temporal disparsion(多相性、持続時間延長、振幅低下):脱髄
振幅低下:軸索変性


主な疾患

絞厄性ニューロパチー(脱髄)
 ・・・手根管症候群(CTS)、肘部管症候群(CuTS)、橈骨神経麻痺、腓骨神経麻痺

代謝性ニューロパチー(軸索変性)
 ・・・糖尿病、アルコール中毒、尿毒症、ビタミン欠乏症

自己免疫性ニューロパチー(脱髄)
 ・・・ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、フィッシャー症候群

血管炎性ニューロパチー(軸索変性)
 ・・・チャーグ・シュトラウス症候群、結節性多発動脈炎、SLE、慢性関節性リウマチ

中毒性ニューロパチー(軸索変性)
 ・・・鉛、砒素、薬物中毒

遺伝性ニューロパチー
 ・・・シャルコ・マリー・ツース病(脱髄)

参考文献

SHIN J.OH,筋電図実践マニュアル,医学書院MYW:1996

(天理よろづ相談所病院 臨床病理部 神経機能検査室)

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