「DRG/PPSについて」−包括医療費制度と検査−(2/6)
(2)DRG/PPS(診断群別包括支払い方式)
DRG(診断群別分類)・PPS(診断群別包括支払い方式)DRG/PPS(Diagnosis Related Goups/Prospective Payment System)
1件当たり定額割支払方式をいち早く本格導入したのがアメリカであり、その形態が「診断群別定額支払方式」(DRG/PPS)です。アメリカでは、まず1983年に違邦政府が65歳以上を対象とした入院患者の医療保険制度(メデイケアのパートA)を採用しました。1988年に、ニュ−ヨーク州が65歳以上の患者だけではなく、65歳未満の一般患者(メディケイド患者)をもDRG/PPSの対象者とするようになってからは、このAP−DRG(ALL
Patient−DRG)は、6州において導入されています。この制度導入に伴い、医療費の伸びや平均在院日数、病床利用率、その他診療内容における変化が観察されていますが、適正な制度運用をはかることにより、医療内容の質を担保しつつ、なおかつ医療財政上のメリットもあるとされています。これらを背景に昨年年8月に相次いで出された「21世紀の医療保険制度(厚生省案)」、「21世紀の国民医療(与党医療保険割度改革協議会)」には、急性疾患・急性期医療について、それぞれ「医療内容が定型的な疾患の場合には、入院当初から疾病ごとに定める一定期間までを1件当たり定額払いとする」、「入院患者の疾患別定額払いについて基礎調査を進め、その導入を検討する」等と言及されています。
こうした内外の状況を踏まえて厚生省では、平成9年度から社会保険基礎調査委託費により、社団法人病院管理研究協会に委託して急性期入院医療の定額支払いに関する調査研究を開始しており、この中で1件当たり定額払いの導入の可能性につき検討することとしています。
疾病分類については国際疾病分類(ICD:International Classification of Diseases)をもとに;臨床的・経済的に類似した約200〜500程度のグループヘ疾病を分類したものです。DRGは疾病分類、PPSが包括支払方式のことです。したがってDRGは、定額制の道具として開発されるICDの縮小簡易版ともいえるでしょう。DRGを開発する本来的な目的は、高騰する医療費を“適正化”するというものでした。そのためDRG開発の過程では、原価計算の手法が大幅に流用されたのです。さまざまな疾病について、平均的な人件費や材料費、在院日数を割り出し、そこから掛かるコストや疾病種別(器官系など)の似通ったものを1つのグルーブ(DRG)とみなします。これを包括支払方式(PPS)の墓本単位とする仕組みです。
表2 診断群分類案97の柱となる13主要診断群
主要診断群(MDC:Major Diagnostic Categories)
主要疾患群 | DRG数 |
1.神経系疾患 | 11 |
2.眼科疾患 | 7 |
3.耳鼻咽喉科疾患 | 11 |
4.呼吸器系疾患 | 7 |
5.循藁器系疾患 | 12 |
6.消化器系疾患、肝臓・胆道・膵臓疾患 | 43 |
7.筋骨格系疾患 | 18 |
8.皮膚・皮下組織の疾患 | 15 |
9.乳房の疾患 | 4 |
10.内分泌・栄養・代謝に関する疾患 | 6 |
11.腎臓・尿路系疾患及び男性生殖器系疾患 | 18 |
12.女性生殖器系疾患及び産褥期疾患・異常妊娠分娩 | 25 |
13.血液・造血臓器・免疫臓器の疾患 | 6 |
主要診断群(MDC:Major Diagnostic Categories)の決定については、アメリカのDRGのMDC(現在MDC1からMDC25までがある)を参考とし、日本では疾病の中心となっている臓器の部位で分けましたが、いくつかのジャンルを除くこととし、上記表1のような主要診断群(13分類)を設定しています。そして13主要診断群(MDC)それぞれについて細かく診断群(DRG)を設定し「診断群分類案97」を作成することとしました。