また、これらA〜Dの細胞を見つけた時は、強拡大にして個々の細胞の特徴などを観察する。強拡大における観察ポイントを以下に記す。
A.(大きな)細胞集塊における観察ポイント
この場合は、まずどのような形をした集塊かを観察する。大別すると、乳頭状集塊、腺腔形成、柵状配列、敷石状配列の4つが挙げられる。
a.乳頭状集塊(図2a)
この場合は細胞集塊に重積性を伴うので集塊辺縁の細胞を観察する。機械的な刺激により剥離した移行上皮細胞は、集塊状で出現していてもN/C比の低い細胞からなる集塊、すなわち細胞質が豊富だが、癌の場合は細胞質が非薄であることが鑑別点となる。次に、集塊からの核が突出、核形不整、核クロマチンの濃染、核縁 図2a 乳頭状集塊の肥厚、核の大小不同の有無を観察する。考えられるものとして機械的な刺激により剥離した移行上皮細胞の集塊や月経時に見られる子宮体部内膜細胞の混入、悪性であれば低grade(G0、G1)の移行上皮癌または腺癌を考える。
b.腺腔形成(図2b)、柵状配列(図2c)
核の位置が細胞質に対して偏在した細胞が、腺腔形成や柵状配列にて出現した場合、腺系の細胞の可能性が高い。高円柱状の細胞が図2bのような腺腔を形成することもよくある。
この場合の細胞所見は、乳頭状集塊で述べた所見とほぼ同様であるが、形態的に異型が無ければ子宮頸部内膜細胞(女性の場合)や前立腺由来の細胞などが考えられる。悪性であれば腺癌が考えられ、核の位置に上下が見られたり、核や細胞の大小不同、淡い細胞質、細顆粒状クロマチン等の細胞所見を認めることが多い。由来としては尿路原発の腺癌、浸潤癌としては前立腺癌、腎癌、大腸癌、転移癌として消化器系の腺癌などが挙げられる。
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