奈臨技生理機能検査部門では「きれいにとれる」シリーズとして、生理機能検査の各検査について、検査の原理や臨床的意義、わかりやすい結果を正確に臨床側に報告するための検査のコツ、について研修しています。 その中のほんの一部ですが、当日に使用した資料を掲載させていただきます。 |
|
. | |
それぞれの項目をクリックしてください
|
|
.
|
|
疾患編
|
|
.
|
|
I .生体現象によるアーチファクト
・筋電図
骨格筋の収縮によって起こる活動電位で、安静時には出現しないが、緊張や無意識に顔のどこかに力が入っている時、また部屋が寒い、咳、くしゃみ、あくび、けいれんなどがあると出現する。比較的周波数の高い棘波様の波形が混入するが混入様式や波形も多彩である。
<対策>
・軽く注意を促す。軽く口を開ける。眠ればほとんどが消失する。
・出来るだけハイカットフィルタは使用しない。
・緊張が強い場合には早めに賦活(開閉眼、過呼吸)を行う。
・枕が原因の場合は枕やその位置を変える
・トイレを我慢していることもあるので要注意。
・心電図
R波が棘波様に混入する。被検者が太っていて首が短いか、または心肥大がある場合に混入しやすい。単極誘導で左側は上向きに、右側は下向きに混入する(ペースメーカーによるパルスも同様)。また限局性に混入する場合はその接触抵抗が高いときである。いずれの場合も心電図を同時記録しているので鑑別は容易である。
<対策>
・両耳朶短絡(A1+A2):左右の耳朶に混入した心電図の向きが逆であるため短絡することに
よってうち消されるが、混入の仕方によってはうまくうち消されない時もある。
・AV誘導:耳朶の電位を見ることが出来る
・眼球運動、まばたき
Fp1、Fp2、F3、F4、F7、F8に急速な目の動きは矩形状に、またゆっくりとした目の動きは正弦波様に混入する。上下の目の動きは同位相で、左右の目の動きはF7、F8で逆位相になる。
まばたきの時には眼球運動を伴う。眼球は眼を閉じると上を向き、目を開けると正面に向く。
その時のアーチファクトはFp1.2で眼を閉じるとペンが下に、目を開けるとペンが上に振れる。
眼瞼けいれんのある患者では不随意的にまばたきが出現する。
<対策>
・緊張すると出現しやすいために、一度注意して止まらないときはタオルなどを眼に載せる。
・眼瞼下に電極を装着し、眼球運動を同時記録する。
・発汗
0.5Hz以下のゆっくりとした基線の動揺で汗腺の電位変化によるもの。
室温の高いときに出現するが小児では眠くなると出現する。また物音や話し声に反応する精神性発汗もあり、やはり室温の高い方が多く出現する。
<対策>
・室温を下げて刺激を除外する
・呼吸
基線が呼吸と同期して揺れるもの。呼吸によりリード線の動きが混入する場合と、呼吸で頭が動く被検者で過呼吸時に多く特に後頭部に混入する場合がある。
<対策>
・リード線を体の上に置かずに、枕のところで軽く束ねる。
・楽に呼吸するように指示する。枕の位置を少し変える。
・脈波
血管の上に電極を装着したときにその脈動が混入するもの。心電図の周期に一致するので鑑別は容易である
<対策>
・電極の位置を少しずらす。
・不随意運動
パーキンソン病などの不随意運動がθ波、δ波様に混入する
<対策>
・緊張させることによりかえって不随意運動が多くなるので静かに安静を保つか睡眠を待つ。
・金属義歯(入れ歯)
噛み合わせた時に触れ合う上下に装着された金属義歯が噛み合った事により発生する電位で、その波形や混入部位は多彩である。
<対策>
・噛み合わせを防ぐために軽く口を開けてもらう
II.環境に起因するアーチファクト
II-1.交流障害(ハム)
電灯線、電源からの交流障害で、大別して静電誘導、電磁誘導、漏れ電流の3つが考えられる。周波数(50又は60Hz)、振幅が一定で出現する。交流障害の原因をとり除くことが一番大切で、不可能な場合はハムフィルタを使用する。
・静電誘導
空気を介して電灯線と被検者の間に一種のコンデンサ(浮遊容量)形成され、それを通じて被検者の体や電極リード線などに誘起される交流。
<対策>
・接触抵抗を下げる(電極抵抗を等しくする)
・電灯線から被検者までの距離を離す
・シールドルーム内で測定する。(被検者を金属で遮蔽)
・電磁誘導
電線の中を電流が流れるとその回りに磁力線が生じる。磁力線が電極リード線と交差すると、電磁誘導によりそこに交流が誘起される。
<対策>
・抵抗を下げてもシールドをしても除去出来ない
・電極リード線をできるだけ束ねる
・リード線や入力ボックスの位置を変えてみる
・漏れ電流
壁、天井、床などは完全な絶縁体ではないので、そこを伝わって電流が漏れて流れている。
特に病室での検査では電気毛布や電気アンカには注意する(2Pコンセント)。単にスイッチを切るだけでなくコンセントから抜くことが必要。
<対策>
・ベットアースをとる。(脳波計と同じアースにする:1点アース)
・シールドシートの上で測定する(シールドシートもアースをする)
・可能な限り2Pコンセントを抜く(*医師や看護婦の許可を得てから行うこと)
II-2.交流障害(ハム)以外のもの
・点滴・輸液ポンプ
棘波様のアーチファクトが規則的に混入するので、一見して心電図のように見えるが心電図とは同期しない。輸液ポンプではパルス状のアーチファクトが規則的に混入する。
・レスピレーター
呼吸が大きくなり、呼吸に伴う体動が基線のゆれとして混入する。
(平坦脳波を記録の場合には特に注意する)
・人の動き
カーテンの揺れや、被検者の周りを人が歩いたために混入した静電気によるアーチファクト
・その他の機器
III.脳波計に起因するアーチファクト
・電極の動揺
電極の装着不良やリード線の重さが直接電極にかかっている時などに出現する。耳朶電極の動揺が最も多い。混入する形は様々であるが、その近傍の電極に全く波及が見られない場合にはこのアーチファクトを疑う。
<対策>
・頭髪をしっかりと分けて電極を付け直す。
・ペーストを少し多めに付ける。
・付け直した場合にはどの部位を付け直したのかを記録紙上に記載する。
・電極の分極電圧
電極とペーストの間には多かれ少なかれ電位差が生じる(分極電圧)。この電位差に変動がなければ問題にならないが、新しい電極に変えたときなどはこの電位の変動が基線の動揺として混入する事がある。
<対策>
・新しい電極を一昼夜食塩水やペーストに付けておく(エイジング)
・Ag-AgCl電極を使う(ただし高価)。
・光刺激パルスの混入
光電効果によりFp,Fに光の周波数に応じて混入する。光刺激装置の接地不良でも混入する。
<対策>
・電極を紙やホイルで遮光する、または交換する
・光刺激装置の接地
(天理よろづ相談所病院 臨床病理部 神経機能検査室)