奈臨技生理機能検査部門では「脳波の手習い」シリーズとして、脳波検査について、正常脳波や異常脳波の波形、睡眠脳波などについても研修しています。 その中のほんの一部ですが、当日に使用した資料を掲載させていただきます。 |
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脳波記録をみると、他の部分に比べ振幅が大きく、その形も異質な波が1個又はいくつか連続して突発的に出現することがある。これが突発波(paroxysm又はparoxysmal activity)である。これに対し突発波以外の部分の脳波活動を背景活動(background activity:BGA)と呼ぶ。
脳波異常はおもに突発性異常波の出現と背景活動の低下に分けることができる。
突発性異常波
棘波(spike)
持続が20〜70msの突発波で、波形が尖鋭である。振幅は決まった基準はないが、背景活動の振幅の2倍以上又は100uV以上が一応の目安となる。鋭波(sharp wave)
棘波同様波形が尖鋭であるが、持続が70〜200msのものをいう。徐波群発(slow wave burst)
背景活動と明らかに区別される高振幅の徐波が律動的に出現したもので周波数により δ(デルタ)-burst、θ(シータ)-burstという。sp-w: spike-and-slow-wave complex(棘-徐波複合)
棘波にすぐ引き続いてすぐ高振幅徐波が現れ,1つのまとまったパターンとなったもの.棘波の始まりから徐波の終わりまでの周期によって,3Hz棘徐波複合というように周波数をつけて記載する.
3Hz棘徐波複合は欠神発作の際出現する.過呼吸により誘発されやすい特徴がある. 周波数が一定しない場合,不規則棘徐波複合(irregular spike-and-slow-wave complex)といい全般性強直間代発作,全般性間代発作などの時に出現する.polyspike-and-wave,multiple spike-and-slow-wave complex(多棘徐波複合)
棘波が2個以上続いて徐波がつくものをいい,また棘波のみが2個以上連続するものを多棘複合(multiple spike complexまたはpolyspike)という.これらは進行性ミオクローヌスてんかんや,ミオクロニー発作の時に出現しやすい.sharp-and-slow-wave complex(鋭-徐波複合)
鋭波にすぐ引き続いてすぐ高振幅徐波が結びついたもので,周波数は1から2.5Hzと遅い.遅棘徐波複合(slow spike-and-wave)ともいわれる.レノックス症候群で出現しやすいが,非定型欠神発作全般性ミオクローヌス発作,全般性脱力発作などでも見られる.*phantom
6Hzの棘徐波で振幅がやや小さいものをいう。*14&6Hz陽性棘波(14 and 6Hz positive spikes)
陽性(下向き)の棘波が主として後頭部に14Hzまたは6Hzで出現する。**phantom
14&6Hz陽性棘波は健常人にもみられる場合があり、異常脳波ではなく境界域の脳波と解釈した方が良い。hypsarrhythmia(ヒプサリズミア)
高振幅のδ(デルタ)およびθ(シータ)波が全般性,持続性に出現し,さらに多焦点性の棘波,鋭波が群発する特異な脳波パターンであり,点頭てんかん(WEST症候群)の時に見られる.intermittent slow waves(間欠性徐波)
θ(シータ)又はδ(デルタ)波がリズミカルに全般性,間欠性に出現する.
大脳深部の器質的病変や,代謝性,中毒性脳症,脳圧亢進状態と関連付けられる.PDA:polymorphic δ(デルタ) activity(持続性多形性徐波)
限局性に高振幅で不規則なδ(デルタ)波が見られる.
大脳皮質病変を示唆し,局在性器質性疾患と関連付けられる.triphasic wave(三相波)
陰性-高振幅陽性-陰性の三相性を示し,1〜2Hzの周期で,前頭部優位で全般性に出現する. 肝性脳症や他の代謝性脳症で出現しやすいが,脳血管障害,脳炎などでも出現する.PSD:periodic synchronous discharges(周期性同期性発射)
1Hz前後の周期で,1〜3相性の鋭波が全般性に見られる.
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の初期に出現しやすい.PLEDs:periodic lateralized epileptiform discharges
1〜2秒の周期で鋭波が一側性に限局して出現する脳波パターン.
急性ないし亜急性器質性病変時に出現し,脳血管障害,急速に進行する脳腫瘍,単純ヘルペス脳炎などでよく出現する.α(アルファ) coma(αアルファ昏睡)
昏睡状態であるのにα(アルファ)波を認める.脳幹障害の際見られる場合がある.低振幅持続性徐波
低振幅なθ(シータ)、δ(デルタ)波波主体の脳波パターン.
意識障害の程度がひどくなるほど脳波の周波数,振幅は低下する.burst suppression
群発性の脳活動と10uV以下の抑制脳波を繰り返す脳波パターン.
重篤な意識障害の際出現する.無酸素脳症,頭部外傷,脳血管障害などの器質的病変により出現すれば,予後は極めて悪い.しかし,麻酔薬の大量投与でもこのパターンを呈するがこの場合には投薬を中止すれば脳波の改善が見られる.EC I:electro cerebral inactivity(電気的脳無活動)
2uV以上の電気的脳活動が見られない状態で,いわゆる脳死を示唆する.意識障害と脳波
脳波は、さまざまな病因によって生じる意識障害の程度を客観的に判断でき、所見によっては障害部位や予後も予測できる。意識障害の評価には脳波が最適である。
一般的に背景活動(αアルファ波)の周波数が低ければ低いほど意識障害の程度は高度になる。
また、てんかんによる意識障害(てんかん重積状態)の診断にも有用である。
参考文献
脳波検査依頼の手引き 医事出版社
臨床脳波学 第4版 医学書院
臨床検査技術学 7 臨床生理学 第2版 医学書院(天理よろづ相談所病院 臨床病理部 小林 昌弘)