奈臨技生理機能検査部門では「脳波の手習い」シリーズとして、脳波検査について、正常脳波や異常脳波の波形、睡眠脳波などについても研修しています。
その中のほんの一部ですが、当日に使用した資料を掲載させていただきます。
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脳波の手習い
「高齢者の脳波像」
ー主に正常パターンについてー


高齢者とは何歳か?    
一般的に、60歳以上を高齢群としているが個人差がある

脳の老人性変化がだいたい60歳ぐらいから目立ってくるといわれているが、健常であれば70代後半まではあまり変化はないとされている

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一般的な高齢者の脳波像

1.α波の周波数の減少(α波の徐化:Slow α pattern)

波の分布は、後頭部優位性が目立たなくなり広汎化する傾向がある(広汎性α:diffuse α pattern)また、waxing and waningもはっきりしなくなる。
60~74yは振幅増大し、75y以上は低振幅化するといわれている→そうともいえない(個人差)
高齢者では、遅いα波(8.0〜9.0Hz未満)と中域のα波(9.0〜11.5Hz未満)の出現量は成人と優位差がなく、速いα波(10.5〜13.0Hz未満)の出現量が優位に減少すると言われている。
肉眼的には、速いα波が減少したため相対的にα波が徐化して観察される

2.徐波(主にθ波)の増加

前頭〜中心部のθ波が多くなる
特に、ねむけがあると前頭部の徐波が目立つこともある
波の出現は高域のθ波(6.0〜8.0Hz未満)のみが増加する
肉眼的に観察しやすい30μV以上のθ波の出現率が、数年後に死亡した群で有意に高かったという報告もある(死亡する5・6年前からα波の周波数低下とθ波の出現量の有意な増加が認められた)

3.速波の増加

速波の出現は、成人より増加し振幅も増大する(前頭部優位)
速波は低域(13.0〜18.0Hz未満)、高域(18.0〜30Hz未満)ともに増加する
一般的に、速波は成人に達した後も加齢とともに増加するが、70代前半からやや減少する傾向があるといわれている

4.反応性の低下(過呼吸に対する反応やα-blockingの減弱など)

開閉眼によるα-blockingが現弱し、はっきりしなくなる  
睡眠時の脳波パターン(humpやspindleの低振幅化)が不明瞭になる
HVの反応性も低下する

5.突発性異常波の出現が少なくなる

突発性異常波が出現している場合、経時的に観察すれば高齢化とともに異常波の出現頻度が低下する⇒臨床的によくなっていない場合でも
1回だけの検査ではわからない
Spikeの尖鋭さもなくなる(鈍化するor低振幅化する)

側頭葉のspike → てんかん性のspikeとBETSとの区別が不明瞭
          BGの徐波化やspikeの分布を確認する
若年者では非常に高振幅で尖鋭なパターンをしめす瘤波(hump)も、鈍化・低振幅化してはっきりしなくなる

6.比較的めずらしい脳波パターン  

SREDA:subclinical rhythmic electroencephalographic discharge of adults
両側ないし一側の頭頂・側頭部優位に、比較的高振幅の4〜7Hzの徐波ないし鋭波様活動が周波数を変えながら律動性に出現し、数10秒から数分間持続するパターン
潜在性の低酸素状態・慢性虚血状態をあらわしているといわれている

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※高齢者の脳波検査 → 意識障害、活動性の低下、認知症、けいれんなど
てんかん、代謝性脳症、脳炎、血糖異常(極高値or低値)、低栄養やビタミン欠乏
アルツハイマー型老年痴呆SDAT、血管性痴呆(多発梗塞性痴呆)VD、CJD など

※認知症と思われている“てんかん”は少なからずある
脳波検査は必須(特に睡眠脳波は必要)
臨床的な発作がわからないてんかん重積の場合もある(NCSE)

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参考文献 臨床神経生理学 Vol.33 No.6 2005

H18.2.24
(天理よろづ相談所病院 臨床病理部 神経機能検査室)

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