奈臨技生理機能検査部門では「脳波の手習い」シリーズとして、脳波検査について、正常脳波や異常脳波の波形、睡眠脳波などについても研修しています。
その中のほんの一部ですが、当日に使用した資料を掲載させていただきます。
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電極の配置法

◆10-20法

鼻根と後頭結節,および左右耳介前点をそれぞれ計測し,それぞれの中点よりvertex(Cz)を求める.鼻根と後頭結節の間,および左右耳介前点の間を10,20,20,20,20,10%に分割し,電極を配置する.

◆10-20法の利点

・頭の大きさに関係なくほぼ一定部位に電極配置ができる.
・各電極間の距離をほぼ等しくできる.
・ほぼ大脳の全領域をカバーできる.
・何度検査してもほぼ同一部位に配置できる.
・電極に対応する大脳の解剖学的部位が確認されている.

◆10-20法の電極記号と部位名称

部位名称

電極記号

解剖学的部位

前頭極(front polar)

Fp1,Fp2

前部前頭葉

前頭部(frontal)

F3,F4

運動野

中心部(central)

C3,C4

中心溝

頭頂部(parietal)

P3,P4

感覚野

後頭部(occipital)

O1,O2

視覚野

前側頭部(anterior-temporal)

F7,F8

下部前頭部

中側頭部(mid-temporal)

T3,T4

中側頭葉

後側頭部(posterior-temporal)

T5,T6

後側頭葉

耳朶(auricular)

A1,A2

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正中前頭部(midline frontal)

Fz

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正中中心部(vertex)

Cz

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正中頭頂部(midline parietal)

Pz

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*数字の奇数は左,偶数は右を表す.

電極の配置(10-20法)


脳波導出の原理

 

導出法

◆単極誘導:MP(基準電極導出法)

電気的に0に近い点(耳朶)を基準にして,頭部の電極と耳朶の記録する方法.
脳電位の絶対値が記録でき波形の歪みが少ないが,基準電極(耳朶)の活性化がある.
過呼吸,光刺激は単極誘導で記録する事が多い.

◆双極誘導:BP

頭部の2点間の電位差を記録する方法.位相逆転による焦点の同定が可能であるが,頭部間の電位差をみるため波形が歪む.また電極間の距離が正確でないと誤差が生じる.

◆平均基準電極法:AV

頭皮上につけた多数の活性電極を1点に結びこの点を基準電極とする.全般的に大きな電位混入時には基準電極の活性化がある.


単極誘導と双極誘導の特徴

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単極誘導

双極誘導

検出しやすい異常所見

全般性異常

限局性異常

焦点の決定法

電位分布

位相逆転

波形の歪み

少ない

あり

基準電極の活性化

あり*

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心電図

混入しやすい

入りにくい


モンタージュ

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 以下の図は同一波形をモンタージュのみを変更して表示しています


図1:健常人のα波
   MP(左図)、BP(右図)で両側O(後頭部)優位にα波を認める

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図2:diffuse α?
   MP、BP、AVにおいてもほぼ全般的に約8hz程度のα波を認める

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図3:瘤波(hump)
   MPでは両側F、C、Pにhumpを認める
   BPではFz(3-4ch間)、Cz(9-10間)にて位相逆転を認めFz、Czが最大振幅であることを示す
   AVでは出現部位がはっきりとしない

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図4:F8にsp-w(基準電極:耳朶の活性化)
   MPではF4、C4、P4に下向きのsp-wとして記録される
   BP、AVではF8優位にsp-wが認められる

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図5:F7、T3、A1にslow wave(基準電極:耳朶の活性化)
   MPではF3、C3、P3、O1に下向きのslow waveとして記録される
   BP、AVではF7、T3、A1にslow waveが認められる

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図6:PSD(周期性同期放電)
   MPでは両側O優位で全般性に見えるがBP、AVではF優位に見える

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図7:spike
   MPではC4に最大振幅を示す
   BPではC4(14-15ch間)にて位相逆転を示す

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図8:耳朶へのアーチファクト混入
   MPでは右半球に低振幅なspikeの様にみえる
   AVではA2に限局したアーチファクトと確認できる
   異常波形(spike等)であれば右図の様な電位分布(周辺電極への電位波及)がみられる

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図9:心電図の混入
   MPでは全体的に心電図の混入を認める
   AVでは耳朶にみの混入が確認できる
   基準電極を両耳朶連結にすると心電図混入は軽減される場合が多い

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参考文献
臨床検査技術学 7 臨床生理学 医学書院 1995

H18.5.12(金)
(天理よろづ相談所病院 臨床病理部 神経機能検査室)

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