奈臨技生理機能検査部門では「脳波の手習い」シリーズとして、脳波検査について、正常脳波や異常脳波の波形、睡眠脳波などについても研修しています。
その中のほんの一部ですが、当日に使用した資料を掲載させていただきます。
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脳波の分類

fig1

δ(デルタ)波:0.5〜4Hz未満  徐波
θ(シータ)波:4〜8Hz未満   (slow wave)
α(アルファ)波:8〜13Hz未満
β(ベータ)波:13Hz以上  速波(fast wave)

α(アルファ)波:
8〜13Hzの周波数で安静、覚醒、閉眼状態で正常成人の頭頂部、後頭部で最も著明に見られる。
振幅はかなり個人差もあるがおよそ20〜50uVとされている。
α波は目を開いたり精神活動を行ったりすると減衰するのが特徴である。

徐波(slow wave):
α(アルファ)波より周波数が低いという意味で、δ(デルタ)波(0.5〜4Hz未満)とθ(シータ)波(4〜8Hz未満)に分けられる。
両者とも覚醒状態にある正常成人の安静閉眼時には、ほとんど出現しない。徐波は生理的には、幼小児の脳波、睡眠時の脳波にみられ、病的状態としては、てんかん、脳腫瘍、脳血管障害、などの器質脳疾患、意識障害、低酸素状態、低血糖状態など種々の脳機能障害の際出現する。

速波(fast wave):
α(アルファ)波よりも周波数が早い波を総括したもの。
速波は徐波とは異なり正常脳波にもα(アルファ)波とともに出現するが振幅が小さいのが普通であり(10〜20uV)、振幅が50uV以上と大きい場合には異常と見なされる。
速波は正常成人の覚醒時に見られるほか入眠時、薬物使用時、にもみられ、病的な場合としては、精神遅滞、頭部外傷、脳手術後などに見られる。

2

棘波(spike)と鋭波(sharp wave)
α(アルファ)波、徐波、速波は波形がおよそ正弦波形であるから主に周波数によって分類される。しかし波形が正弦波形でない波の場合には、周波数だけではその波を記載する事はできず、波形を考慮しなければならない。棘波と鋭波とは、波形が他の部分に比べてきわだって尖鋭あるという特徴で分類されたもので、便宜上持続が20〜70msの波を棘波、70〜200msの波を鋭波といい、背景脳波とは区別される。
棘波は過同期性発火を表す。てんかん患者の場合には、棘波成分は最も特異的な所見で、その出現部位がてんかん原損傷部位に近いことを示す。
鋭波は、棘波同様にその出現部位がてんかん原焦点に近いことを示すが、持続時間が棘波より長いことから、比較的広いてんかん原損傷部位の存在を表すか、他の部位にある原発焦点から伝播した電位を示す。

1.成人の正常脳波(αアルファ波):安静・覚醒・閉眼時
後頭部優位のα波を主体として前頭部に低振幅β波の混入を認める
α波は左右対称性に出現し,漸増・漸減が見られる徐波はほとんど出現せず、棘波、鋭波も出現しない。

2.成人の正常脳波(低振幅脳波)
20μV以上の振幅の見られない脳波で成人にまれにみられる
開閉眼,光刺激,過呼吸等の賦活によりα(アルファ)波が時々見られることもある緊張状態が強い場合にもまれに低振幅脳波となる 

3.小児の正常脳波
一般的に成人と比べ高振幅で周波数が遅く不規則で左右差が目立つ
背景脳波:1歳で5Hz↑,3歳で6Hz↑,5歳で7Hz↑,8歳で8Hz↑が正常の目安

4.μ(ミュー)律動
7〜12Hzのアーチ状の連続した波で,中心・頭頂部に一側性または両側性に出現する
開眼時には減衰しないが,手を握るなどの運動や感覚刺激により抑制される 

5.入眠時過剰同期
4〜7Hzの両側同期生律動波が中心,前頭部優位に全般性,群発状に出現(10才以前の小児に出現しやすい)

6.睡眠脳波stage1前半(さざなみ波)
入眠時:α(アルファ)波の振幅,周波数,連続性が低下し,次いで低振幅の2〜7Hzの徐波が見られる

7.睡眠脳波stage1後半(POSTs)(hump,V波,瘤波)
POSTs:睡眠時後頭部陽性鋭波(後頭部)
hump :頭蓋頂鋭波(頭蓋頂)*生後6ヶ月頃より出現

8.睡眠脳波stage2(spindle)(K-complex)
spindle:12〜16Hzの紡錘波(中心,頭頂部)*生後2ヶ月頃より出現
K-complex:hump+ spindle 

9.睡眠脳波stage3(Hill wave)
Hill wave:2Hz以下で振幅が75uV以上の徐波(全体の25%以上に出現)

10.睡眠脳波stage4(Hill wave)
Hill waveが全体の50%以上に出現

睡眠脳波 REM睡眠
脳波はstage1のような低振幅パターン
(水平)急速眼球運動:REMの出現
筋緊張低下

健常成人の正常脳波1)
3
26歳 女性 安静、覚醒、閉眼時                    
後頭部優位に10Hz、約50μVのα波を認める。α波には漸増・漸減を認める。左右の対応する部位にて明らかな左右差を認めない



健常成人の正常脳波2)
3

26歳 女性  開閉眼時
開眼にてα波は消失し、閉眼にて再び出現する。(αブロッキング)



低振幅脳波

3

24歳 女性 安静、覚醒、閉眼時
記録全般において20μV以下の電位のみ出現する。



小児の正常脳波

3

12歳 女性 安静、覚醒、閉眼時
成人に比べ高振幅、低周波、不規則で左右差、徐波が目立つ傾向にある。



睡眠脳波

3

12歳 女性 睡眠時
後頭部に睡眠時後頭陽性鋭波(POSTs)が出現
前頭部−中心部−頭頂部に瘤波(hump、Vertex sharp wave)が出現
前頭部に紡錘波(spindle)が出現(:sleep stage II)



過呼吸時

3

12歳 女性
過呼吸時、前頭部優位で全般的に高振幅徐波の混入を認める。(build up)
build upは健常小児には見られるが、健常成人には認められない。



トリクロールシロップによる睡眠脳波

3

3歳 女性 sleep stage II
前頭部に高振幅な紡錘波(spindle)が出現



睡眠→覚醒

3

3歳 女性
睡眠から覚醒(または覚醒から睡眠)への移行時に前頭部優位で全般的に高振幅徐波の混入を認める。
(入眠時過剰同期性徐波(hyper synchronous θ))
小児期には見られるが、成人には認められない。



老人の正常脳波

3

81歳 男性
α波の低振幅化、徐波化(8〜9Hz)が見られる。



参考文献
脳波検査依頼の手引き 医事出版社
臨床脳波学 第4版 医学書院
臨床検査技術学 7 臨床生理学 第2版 医学書院

(天理よろづ相談所病院 臨床病理部 神経機能検査室)

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